ザ・グレート・フリー 自由業、着地点は不明です。



第10回 がんばりの限界が来る。

── つづいて質問いたします。
  「ひとりだな、さみしいな」と
思うことはありますか。
(うみねこ)
天久 僕はありますよ、
ひとりでやってますからね。
だけど、なんかね、
「もうひとがんばり」が
できなかったりするんですよ。
誰かが見ててくれたら、
「もうちょっとがんばるフリ」で
結果的にがんばれたり
するんですけど。
板尾 そうか。漫画家は、
描いてる現場では
別に誰にも見られない仕事ですもんね。
天久 ギャグを考えて、
早く見せたいけど
まわりに誰もいないし。
ギャグ言ったとこで、
「ワッハッハッハッハ」って笑うやつがいれば、
ペンの力ももうちょっと強くなる?
天久 うん。若いときは自分でもウケたりして、
「ギャハハ」って言ったりしてたんですけど
いまはね、もうおとなしいもんです。
「人は笑うだろうなー」ぐらいで。
板尾 確かに、原稿を書いたりしてるときは、
わからないですね。
「これホンマにウケてんのかな」と思います。
一切ライブ感がないから、
ちょっと気持ち悪いですよ。
天久 ないですよ、ライブ感。一切ない。
「現場」、憧れますよ。
だからもう、今日は楽しくて楽しくて。
一同 (笑)
天久 フリーの人が集まって
プロダクションとかスタジオとか
作ったりするでしょう。
それも、こういうことが
もとにあるような気がします。
若いうちは、ひとりでやったほうが
磨かれる場合もあるかもしれないけど、
それだけじゃ足りなくなるから、
集まるのもいいんじゃないかな。
みなさんは、磨き合う仲間は
いらっしゃるんですか。
板尾 まあ、いますね。
浜野 僕なんかは、メンバーがそうですね。
板尾 みんなでワーワー言うてるなかで
仕事ができていったりとか、
そういうのはいいと思うね。
「あ、そうなったか」
なんて、全員で言いながらね。
それは、おもしろいですよ。
天久 「ほぼ日」もそういう雰囲気じゃないですか。
人が集まってみんなでワイワイしてて。
── そうですね、
トキワ荘みたいな感じです。
天久 トキワ荘、憧れるなあ。
── 仕事で嫌なことって、ありますか?
天久 「嫌なこと」って、ほとんどが
人間関係じゃないでしょうか。
だから、ひとりだと、ないです。
落ち込むことはありますけどね(笑)!
浜野 僕は一度、ものすごい大一番で
大失敗しちゃったことがあるんです。
つまり、ぜんぜんよくないライブを
大きな舞台でやっちゃった。
そのあと、ライブがずっとなくて、
仕事もあんまりない状態がつづいて、
そのときはちょっと
旅行に出かけました。
板尾 かわいいなあ、それ。
天久 ひとり旅?
浜野 いえ。
板尾 かわいいなあ(しみじみ)。
俺は、落ち込むことは
いまはあまりない。
うまくいかないときとか、
「なんか違ったな」なんてときもありますけど、
それは、考えてもしょうがないから
考えないようにしています。
何をやっても取り返せないし。
板尾 その次にこうならないように、
ということだけ
パパッと考えて、もう忘れます。
── じゃあ、その日1日
なんだかぼんやりしちゃったな、ということも
ありませんか。
天久 ないです。
僕は、人のせいにします。
「あの編集者が!」とか。
天久 そう。
「俺が悪いみてえじゃないか」って(笑)。
「俺に恥かかせるな」
板尾 (笑)いやいや、
それはでもね、
たいがい悪いんです、向こうが。
いや、そうです、絶対。
── では、現在の仕事をつづけられる理由は?
僕たちは、ちゃんと車幅感覚があって、
自分を完全に乗りこなしているかというと、
そうじゃない。
自分でも捉えきれないところがあります。
だからつづけてるんだと思います。
自分の、半分遊びのようなところを
発掘しつづけてるんじゃないでしょうか。
浜野 僕は、なんだかね、やっぱり
ちやほやされたい。
さっきから何回も出てくるね、
「ちやほや」が。
浜野 すごくしっくり来るんですよ。
板尾 そうやね。
ほかの仕事でもきっとそうやと思うけど、
僕らのやってることは、
お客さんあってのことですからね。
もうそりゃあ、絶対そうですよ。
リアクションあってナンボです。
だからやれる。

(明日につづきます!)

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2007-05-15-TUE

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