ザ・グレート・フリー 自由業、着地点は不明です。



第11回 手ぶらになるほうが先だ。

── 読者の方からいただいた質問です。
  フリーターとフリーの境界は
どこでしょうか?
(小)
フリーターとフリー?
ああ、なるほど‥‥、
ええっと、フリーは個人事業主で
フリーターは雇われてる、
ということかな。
浜野 僕は今年、
確定申告したんですけど、
そのときに思いました。
「仕事してるんじゃないか、俺はもしかして」
板尾 ああ、そうやね、
確定申告があるってことは。
── フリーターからフリーになる間に、
苦労したり、
やめてしまおうかと思った時期は
ありましたか?
天久 この仕事をはじめる「前」のほうがありました。
だいいち、フリーになって
やめちゃおうも何もないっすよ(笑)!
── そ、そうですね。
天久 まあ、やめちゃおうかなということは、つまり
ほかをはじめようかなってことですね。
「やめちゃおうかな」の前に
俺なんか、ほんとうに
まだはじまってない
気がするしな。
板尾 (笑)そうですね。
この先どうなるかもわからへんし、
ゴールもない。
フワーッとしてますよ。
天久 でも、フリーって
なんだかんだ言っても下請けだし、
ちやほやされていても
求められることを提供しているわけです。
やっぱり基本的に「くださーい」と、
手を出してる感じがします。
── ‥‥「ほぼ日」は差し上げてなくて。
天久 いや、もういろんな
サムシングをもらってるんで(笑)。
ステキなサムシングを。

── 「あんなことをやってみたいな」と思っても
その先にはものすごい苦労が
待っているような気がして
なかなか一歩を踏み切れない、ということも
あると思うんですが。
天久 「何か手に職つけてから」とか
「準備してから」と
思ってるからじゃないかな。
板尾 ああ。そうかもしれない。
天久 もしも会社に勤めていて、
そう思っているのなら、
僕は、やめるほうが先だと思うんです。
うん。
手ぶらになるほうが先でしょう。
板尾 そういう意味では、
僕らのほうが不安じゃないのかもしれません。
会社におるってことは、
ある程度保証されてるわけで、
それが逆に不安になるんじゃないかな。
いま自分のおるところに将来が見えずに、
やめたときのために資格取ったりしてる感じって、
すごく不安ですよ、おそらく。
浜野 消去法でいったらいいのかな、と思います。
「これは違うんじゃないか」つったらやめる。
板尾 うん。やめてから考えることです。
その場で考えることじゃない。
ほとんどの人がそうですよ。
そんなね、
小椋佳さんみたいな人って
稀ですよ。
あんな大成功をしながらサラリーマンっちゅうのも。

天久 やめてニコニコしてれば、
何か仕事が来るんじゃないかな。
うん。
「やめちゃった、どうしよう」
となってる奴より、
「やめちゃったんだ〜でね、でね」
って言ってる奴のほうが
何かあったら声かけようという気になるもんね。
それとは別に、会社で仕事をしているからこそ
新しいことをやりたくてもできない、
なんていうことあるでしょうね。
サラリーマンで、日曜はサーフィンに行ってて、
いつも行く海岸の近くに
サーファーが集まるような
喫茶店をやれたらいいのにな、と、
「よっしゃ、みんなで金出し合ってやる?」
ってなことを思いついたとしても、
誰がそこに常駐するんだ、
自分は日曜しか来れない、
それは仕事としてはどうしていくんだ、
みたいなことが
実際はどんどん出てくるでしょう。
楽しそうなことやアイデアは
いっぱい浮かぶんですけど、
それをいざ実行に移すとなると、違ってくる。
会社をやめて海岸に毎日行くことが正解なのか、
逆に、いま会社員だからそのことが楽しいのか、
自問自答の末に
何だかわかんなくなっちゃうんじゃないかなあ。

天久 「好きだけど、これ仕事にしたら‥‥」
そうそう。
みんな、「やりたいこと」と
「やってみたいこと」の
境界線が曖昧なんじゃない?
「会社やめて北海道の牧場に行きたい」って、
それは「やってみたいこと」ですよね。
天久 そうですね。
やりたいことと
やってみたいことは
意味が違うんですよ。
やってみたいことを
やりたいことにカウントして、
「うーん」って考えてると、
わかんなくなっちゃうんじゃないでしょうか。
天久 さっき、板尾さんがおっしゃった
コンビニのバイトも
どちらかといえば「やってみたいこと」ですよね。
板尾 ああ、そうやね。
やりたいことは
コンビニでバイトをすることじゃない、
別のところにあるから
板尾さんは「やってみたい」んですもんね。

天久 でも、その前に、
やりたいことが見つからない人だって
いるのかもしれない。
── そうですね。
天久 ないなら、そんなの無理矢理作ることないです。
「やりたいことがない!」で悩むのって
すごく不毛な気がしますよ。
ないならいいなあ、と思います。
デアゴスティーニのような雑誌を毎週買って、
趣味まで人に選んでもらう生き方も、
カッコいいなと思います。
ぜんぜんいいですよ。
板尾 僕はやりたいことなかったから
現在の仕事に就けた、
というようなところがあります。
やりたいことあったら、就職しないで
そのことをやってるでしょう。
浜野 やりたいことは何だろうって考えちゃうと、
いい思いを
したいことだけ
なんです。

板尾 突き詰めていくとそやね。
おいしいもの食べて
いい思いをしたい。
だから、いまがあるんです。

(明日につづきます!)

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2007-05-16-WED

 (C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN