矢沢 | よ、イトイ新聞! すごいね、100万ヒットなんだってね。 |
糸井 | (笑) |
矢沢 | もう、何年目なんだっけ? |
糸井 | もう9周年だから、10年目だね。 |
矢沢 | よくもまあ、あの時代に、はじめたよね。 |
糸井 | 「よくもまあ」だよね。 いまにして思うとね。 |
矢沢 | いちはやくそこに進んで行ったっていうの? そりゃ、立派なもんだよ。 |
糸井 | そう? 永ちゃんに言われるとなんかおかしいね(笑)。 |
矢沢 | ある種のさ、 新しい幕を開けたわけじゃない? しかも、あの時期に。 |
糸井 | ちょうど永ちゃんが 「アメリカに行くんだよ」って話をしてるときに、 俺も「インターネットはじめるんだよね」 っていう話をしたんだよね。 |
矢沢 | そうそうそうそう。 それから9年で、100万ヒット? |
糸井 | うん。いまは130万くらいかな。 ピークのときが200万くらい。 |
矢沢 | はっきり言うけどね、 130万とか200万アクセスって言ったらね、 たいへんなことよ。すばらしいことだよ。 |
糸井 | こつこつ、こつこつ、やってるのよ(笑)。 |
矢沢 | しかも、この激動の時代にね。 ヤバいと言われてたアップルが iPodで一気にひっくり返しちゃうような時代にさ。 テクノロジーがあっという間に いろんなものを変えていっちゃうようなときに。 |
糸井 | 永ちゃん向きの時代だよね、 どっちかというと。 |
矢沢 | そうかなぁ。 |
糸井 | 本人そういうつもりは、ないわけ? |
矢沢 | いや、この波に 俺はどう乗ればいいだろうというのは 正直、考えたよ。 |
糸井 | ちゃんと考えてるよね。 |
矢沢 | 絶対考えるよ。 それはぼくだけじゃなくて、 ほかのミュージシャンだってそうだろうけど。 |
糸井 | たとえば10年前、 矢沢永吉はどんなふうに考えてたの? いろんなものの価値観が がらっと変わりそうだなっていうときに。 |
矢沢 | ひとつだけわかったことはね、 この激動の時代の中でね、 ダウンロードできないものを 作らないといけないと思ったの。 |
糸井 | ははぁー。 |
矢沢 | ダウンロードできないものしか 残れないってわかったの。 だってものすごい勢いでさ、 すべてがダウンロードできる時代じゃない。 |
糸井 | つまり、デジタルコピーのことですよね。 |
矢沢 | そういうことです。 ダウンロード、デジタルコピー。 時代がそういうふうに動いていくときに、 どっちかだろうと思ったのよ。 ダウンロードできないものか、 逆に、とことんダウンロードできるものか、 どっちかだと思った。 真ん中じゃもうダメだと思ったね。 |
糸井 | なるほどね。 |
矢沢 | で、俺にとって、ダウンロードできないものって、 なんなんだろうと考えたときに、 「ライブだ!」って思ったんだよ。 |
糸井 | そうだね。 |
矢沢 | ライブステージ。 これはダウンロードできないなと思ったわけ。 そりゃ、ライブのDVDをレンタルして、 自分の家でサラウンドで聴いて、 「ワーオ、武道館・イズ・グレイト!」ってやりゃ、 いいかもしれないよ? でもさ、それもいいけどさ、 武道館にチケット買って、 あの1万人の空間に入って、 歌を聴くっていうのは絶対違うじゃない。 |
糸井 | うん。 そういうのって、永ちゃん、 いつ考えてるの? ひとりで考えてるの? |
矢沢 | こう見えても俺、けっこう真面目だから。 |
糸井 | いや、知ってるよ(笑)。 |
矢沢 | ベロベロになりながら。 |
糸井 | 酒飲みながらでも考えてるんだ。 |
矢沢 | オレの明日はあるんだろうか、みたいなね。 |
糸井 | いいなぁ。 |
矢沢 | ほんとに。 まあ、そのくらい10年前のあのときというのは、 ぼくにとっても、 ぼくを取り巻いてる世の中にとっても ものすごい変わり目だったよね。 |
糸井 | うん、うん。 |
矢沢 | ‥‥今日のテーマは何? |
糸井 | テーマはね、「働く」「就職」ってことなの。 |
矢沢 | あ、就職か。 |
糸井 | ふだんは永ちゃん、 こんな妙な取材は受けないと思うけど。 |
矢沢 | いやー、糸井重里さんの頼みだったら、 なんでもやりますよ。 |
糸井 | まいったな(笑)。 (続きます!) |