2007-06-01 | 予告 |
2007-06-06 | 第1回 10年前の俺らは |
2007-06-07 | 第2回 子分になる才能がない |
2007-06-08 | 第3回 なにがストレスって「人間関係」だね |
2007-06-11 | 第4回 プラスとマイナスはセット |
2007-06-12 | 第5回 矢沢は、誰にも教わってない。 |
2007-06-13 | 第6回 クソ真面目な矢沢 |
2007-06-14 | 第7回 矢沢の就職論。 |
2007-06-15 | 第8回 そういう生き方に憧れてたんだ |
2007-06-18 | 第9回 がんばりすぎちゃったかな |
最終回 上がりたかったんだ。 |
糸井 |
じゃあ、最後にひとつ。 この「就職論」という特集の中で、 就職についてすごく詳しい人としゃべってたら、 けっきょく面接のときに、いちばん知りたいことは、 「あなたがいちばん大事にしてきたものは何?」 っていうこと。それだけなんだって言うんです。 それがちゃんと聞ければ、 その人と仕事したいかどうか、 だいたい、わかるって言ってた。 永ちゃん、そういうもの思いつく? ずっと大事にしてきたもの。 |
矢沢 |
大事にしてきたもの‥‥若いときから‥‥。 それはやっぱり、これまで 言ってきたようなことなんじゃないのかな。 表現のしかたは、若いときと、いまとで、 違うかもしれないけど、 自分が思ってることは変わってないと思うんだ。 どういうことかというと、 上に行きたいと思ったわけだよ。 「金持ちになりたい」とか、 「えらくなりたい」とか、 言い方はいろいろあるけど、 上に行きたいと思ったわけだよ。 |
糸井 | 上がりたかったんだね。 |
矢沢 |
上がりたかったんだよ。 「上がりたい!」と思ってたもん。 といってもね、 泥棒して上がってもしょうがねえな、と。 |
糸井 | ああ。 |
矢沢 |
みっともないことして上がっても 上がったことには、ならないし、気持ちもよくない。 自分の力で、上がりたかったんだろうね。 上がりたいってことは、変わってないね。 |
糸井 |
それは、きっと、立場が違っても 同じように思えることだろうね。 音楽家だろうと、会社員だろうと。 科学者だってそうなんだろうね。 顕微鏡覗いてる人でも、 その世界で上がりたいんだろうね。 |
矢沢 |
そうよ。 「上がりたい」ってことば、いいね。 |
糸井 |
うん。金だとか、役職じゃなくて、あるよね。 「上がりたい」はね。 |
矢沢 |
金持ちになりたいとか、いい暮らしがしたいとか、 いろいろ言うけど、あれは、ほんとは、 「上がりたい」って言ってるんだよね。 「上がりたいんだ」って言ってるんだよ。 |
糸井 |
そうかもしれないね。 バンドで武道館でやりたいっていうのも、 全部そうだもんね。 |
矢沢 |
そうなのよ。 武道館じゃなくて、渋谷公会堂でもいいじゃん? でも、武道館は日本のロックの殿堂、 みたいなこと言うから、 「じゃあ、武道館まで上がりたい」 って思うわけでさ。 |
糸井 | なるほど。 |
矢沢 |
もうひとついえることは、あれなんじゃないかな。 これは糸井が言ったことだけど、 たのしいと思うか、やらされてると思うか っていうので、全然違ってくるからね。 だって、「仕事がたのしくて」って言うやつ いっぱいいるわけじゃない? |
糸井 |
ステージの永ちゃんも、 苦しいとか言うけど、 たのしいでしょ、やっぱり。 |
矢沢 |
たのしいよ。 糸井だって、イトイ新聞立ち上げて、 どれだけたいへんだったか、わかんないけど、 やりがいがあったから、たのしかったから、 今日まで続いたんじゃないですか。 ぼくだって、ぶーぶー言いながら、 声出ねぇよーって言いながら、 ワンツーワンツーって言いながらさ、 町から町行って、きめたその夜のビールなんかが 絶対うまいからやってるわけでさ。 |
糸井 |
やっぱりステージの永ちゃんって、 うれしそうだしね。 |
矢沢 |
うん。 だから、歌やステージをつくってる矢沢、 新聞や情報をつくってる糸井、 のみならず、タイムカード押してお勤めして、 企業の中の一つの力としてかんばってる人、 その人なりのスタンスって、 ぼくは、たくさんあると思うよ。 行き着くところ、どんな職種だって、 やらされてる、働かされてると思って だらだら気分悪くやってるのと、 これ、俺のテリトリーなんだと思って プライド持ってやるのとでは、全然違うからね。 |
糸井 | 永ちゃんって、いまでも拍手うれしいでしょ? |
矢沢 | そりゃうれしいよ。 |
糸井 |
あんだけ、毎日ライブやって、 端から見れば拍手が来るに決まってる思うけど、 それでも、拍手はうれしいんだよね。 |
矢沢 |
うれしいねえ。 だって、俺、「今日うけた?」って かならず訊くじゃない? |
糸井 | 心配そうに訊くね。 |
矢沢 | 「うけた?」「のってた?」ってね。 |
糸井 |
まだ言うか、と思うよね。 おもしろいね。 |
矢沢 |
毎日拍手が来るかわかんなくて、 毎日拍手がうれしいからいいんじゃない? |
糸井 | やめられないね。 |
矢沢 |
やめられないね。やめられないよ。 57歳になって、まだこういうところに立ててる。 最高じゃない。 いいだの、悪いだの、ってまだやってる。 ドキドキしてんだもん。 音楽家として、36年やってこれて、 ほんとに幸せだなと思いますね。 |
糸井 |
うん。どうもありがとう。 おもしろかった。 異色の就職論が聞けて、よかった(笑)。 |
矢沢 | ほんと? 大丈夫? |
糸井 |
大丈夫(笑)! (矢沢さんと糸井の対談は今回で終わりです。 お読みいただき、どうもありがとうございました) |
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