糸井 | ひとつひとつ、若いころの永ちゃんが 身をもっていろんなことを学んで、 じっくり考えながら進む道を決断していったとすると、 矢沢永吉が、じつは芯から不良じゃなかった、 というのも、ヒントだよね。 |
矢沢 | そうだねー。ヒントだね。 不良だったら、俺‥‥。 |
糸井 | 逃げたよね、どこかで、きっと。 |
矢沢 | ジャマイカ行って遊んでるね。 |
糸井 | ははははははは。 レゲエの永ちゃん(笑)。 |
矢沢 | レゲエの永ちゃんになってるね。 不良じゃなかったから、 ジャマイカ行って1年間遊べる金があったときにも、 つぎのことが考えられたんだね。 |
糸井 | 不良じゃなかったからね。 だって、不良っぽい音楽やって 不良っぽいお客さん相手にしてるときも、 「酒飲んだら演奏できない」とか、 考えてたのが永ちゃんじゃない? |
矢沢 | そうなのよ。 |
糸井 | 練習してないと、あのベース弾けっこないしね。 だから、水面下に、隠れた真面目な動きというのが ものすごい分量、あるわけだよね。 |
矢沢 | そうだね。 あれさ、キャロルは リーゼントで、革ジャンパーでロックンロール。 ソロになっても、矢沢永吉は、 白のスーツに、日比谷でロックンロール。 あれもし矢沢が芯までも不良だったら、 成立しなかったんじゃないかな。 芯まで不良だったら、おもしろくねーもん。 |
糸井 | 不良がずっと不良をやるわけだからね。 どこかでそれは腐っていっちゃう。 そういうのを、永ちゃんはすごく考えてるんだね。 |
矢沢 | だからね、たとえば、 『アリよさらば』っていうテレビドラマをやったときに、 俺が演じたのは、「安部良太」っていう、 しがない昆虫好きの臨時講師の役なんだよ。 その話が来たときにね、 「しがない昆虫好きの臨時講師を、 矢沢永吉がやるからおもしろい」と思ったの。 |
糸井 | あー、なるほどね。 |
矢沢 | ほかにも出演の依頼っていうのはあったのよ。 たとえば、ヤクザの親分の役。 「矢沢さんの生き方、 真っ直ぐで、ビシッとしてるから、 タトゥー入れてやりませんか?」ってね。 でもね、それは、おもしろいことなんにもないもん。 やっぱ、安部良太を矢沢がやるから おもしろいと思ったんだもん。 そういう考え方だよね。 |
糸井 | 本当にそうだね。 そういう考え方が、誰に教わるでもなく、 永ちゃんの中にあったんだね。 |
矢沢 | そうかもしれない。 俺が芯まで不良で、芯まで悪かったら、 成立するわけないわな。 |
糸井 | 本当の永ちゃんは、 クソがつくくらい真面目というか。 |
矢沢 | それは糸井が俺とつき合って 何年も経つからわかったんだろうけどさ。 でもね、やっぱり、そこなんだよ。 いまはそういう選択をするのも 当たり前になってるのかもしれないけど、 あのころは、当たり前じゃなかった。 わかったようで、わからないようで‥‥。 |
糸井 | 行ったり来たりがあってね。 |
矢沢 | それがよかったんだな。 |
糸井 | 人の話で動こうとする人のほうが つらいと思うんですよ。 永ちゃんは、失敗も多かったけど、 そこのところで、 つらさはなかったと思うんだよね。 人のせいでこうなっちゃった、 というふうにはならないじゃないですか。 |
矢沢 | そうね。 (続きます!) |