第8回 そういう生き方に憧れてたんだ

糸井 今日の永ちゃんの話で、一貫して言えるのは、
「自分の頭で考える」ということですよね。
矢沢 そういうことです。
糸井 それで結果的に失敗しても、身になるわけだし。
矢沢 「自分の頭で考えろ」なんてね、
ものすごく簡単なことのようだけど、
やってるようで、意外とやってないんじゃないの?
糸井 自分だけで決めればいいんだよね。
自分で決めてない仲間がまわりにいるからって
安心したりせずに。
矢沢 と思う。
自分の頭で考えればいい。
じゃ、矢沢さんの考えたこと、
聞かせてくださいって言われたら、すぐ言える。
「オレは金持ちになりかたかったの」
糸井 ずっと、はっきり言ってたもんね。
矢沢 オレは、もう、金持ちになりたかった。
なんで? ポルシェ乗りたいもん。
世界に別荘建てたいもん。ビル建てたかったもん。
夕方の4時の、ドライマティーニ飲みたかったもん。
糸井 ふふふふ。
矢沢 いや、ほんとに美味いんだ、これ、試して。
ホテルのバー、夕方4時半くらい。
まだ明るいんだよね。
ホテルのバーだと開いてるのいくらでもあるから、
ドライマティーニ、ビーフィーターでつくってって言って、
クッていくわけよ‥‥‥‥飛ぶよ?
糸井 (笑)
矢沢 クッと飲んで、ドーンと行って、
それ飲んでね、オレがんばろうと思っちゃうんだ。
仕事またがんばろうって思うんだよ。
糸井 儀式だね。
矢沢 儀式、儀式。
赤坂に自分のビル建てたときも行ったな。
最初にオープンハウスやって、
いろんな人呼んで、中、全部見てもらって、
料理も準備して、飲んでもらって、食べてもらって、
本来ならいっしょに飲むべきだったけど、
俺はさっさと、自分でタクシー乗ってホテルに行って、
バーで飲んでたのよ。ひとりで。
やっぱり、ちょっと、くるもんがあったのよ。
オーストラリアの問題、かたつけて、
ほかにもいろんな問題、かたつけて、
赤坂にスタジオちゃんとできたな。
借金はまだ残ってるけど‥‥
「借金いいねー、借金も人生よ」って、
ほんと思ったもん、オレ。
またここから借金返そう、みたいな感じ。
糸井 ドライマティーニを飲みながら。
矢沢 2杯いったら、ぶっ飛ぶから。
糸井 (笑)
矢沢 だからね、ぼくは昔から、えらくなりたかった。
役職とか肩書きじゃなくて、
自分の思ってる意味で、えらくなりたかった。
モノ、欲しかった。
飲みたい酒、飲みたい。
食べたいもの、食べたい。
行きたい場所、行く。
しかもファーストクラスで。
それで、つかりたい温泉につかる。わかる?
糸井 指図はされたくない。
矢沢 指図はされたくない。
全部、自分の金でやってる。
税金? おさめてる。
‥‥けっきょくぼくはね、
ずっとそういう生き方に憧れてたんだ。
糸井 うん。
矢沢 いまの俺が言うと、自慢に聞こえるかもしれない。
「成功したから自慢しちゃって、イヤなやつだな」
って思うかもしれないけど、誤解しないでほしい。
俺は、食えなかったころから、
金がない、二十歳くらいのころから、
ずーっと、同じこと言ってた。
矢沢のこと知ってるやつは、みんな言うよ。
「おまえ二十歳からぜんぜん変わんないね」って。
言ってること一貫して変わってないもん。
あのころから言ってたんだもん。
金持ちになりたいって。
糸井 全部、そのときそのときに、自分で考えたんだね。
矢沢 自分で決めたんだよ。
さっきも言ったように、いろんな価値観があっていい。
いろんな生き方や、いろんなスタンスがあっていい。
いろいろたいへんなことはあるだろうけど、
自分で決めたんなら、自分の力で乗り越えて。
まぁ、泣き言くらい言ってもいいよ。
愚痴のふたつみっつ、言いたいときは、
嫁さんがいたら嫁さんに聞いてもらえばいいじゃん。
でまた、ふたりで、力合わせて乗り越えていくと。
ただ、後悔して、後悔して、自分を恨んで、恨んで、
つまんない人生にはするなよって言ってるわけ。
糸井 うん。

(続きます!)




写真:富永よしえ [Mild inc.]

2007-06-15-FRI