糸井 |
昔自分が決めたことについて、 疑うことってないですか? |
矢沢 | 俺ね、ものすごい正しいと思って走ってきたの。 ものすごい正しいと思って 自分のやり方は間違ってないと思って走って、 何度も確認した。何度も確認したの。 何度確認しても、間違ってなかった。 |
糸井 | うん。 |
矢沢 |
ただ‥‥ここまでがんばることもなかったかな、 という気持ちもちょっと、ある。 |
糸井 | へぇぇ。 |
矢沢 | ちょっとがんばりすぎちゃったかな、みたいな、 ちょっと飛ばしすぎたかな、と。 そんなふうに思うことも、最近ある。 |
糸井 | 永ちゃんが言うと、ものすごくおかしいね。 |
矢沢 | なんで? |
糸井 |
だって、それは、 矢沢を見て他人が言うことだよね。 |
矢沢 | あ、そう? |
糸井 |
息止めて走ってる矢沢を見て、 ほかの人が言うことだよ。 |
矢沢 |
そうかもしれない(笑)。 とにかく、俺はすっごく走ってきたんだよね。 ちょっと飛ばし過ぎたかなと思うくらい。 そろそろ、ちょっとゆるめるところが あってもいいんじゃないかと思う。 この間、うちの息子の大学の入学式行ったときに、 すごくそれ、思った。 |
糸井 | 感じ入るものがあった? |
矢沢 |
うん。 せがれがもう大学生になっちゃったんだ って思ったときにさ、 思わずうちの奥さんの手をトントンと叩いたの。 で、「おまえ、よくやったな」って。 俺、ほとんどライブやってたじゃない。 幼稚園だの、何々スクールだのっていうのは、 全部、おまえががんばれって状態だったの。 俺は金だけペイするからって感じだったわけよ。 で、その息子が晴れてスーツ着て、 きちっとしてるのを見て、 あのガキがもう大学かよと思ったときに、 「ありがとう」って気になっちゃったんだよ。 そういうシーンを見たときに思った。 俺もそろそろちょっとゆるめて、 トーンダウンして‥‥ かと言って、これは決して ステージで手を抜くという意味ではないのね。 ステージはこれからも全力でやる。 でも、もうちょっとたのしみながら。 やっていくのもいいじゃんっていうところ。 ステージのパワーは変えないけど、 もうちょっと、たのしみながら。 だって、前はたのしむよりも、 「義務感!」みたいなのがあったのよ。 |
糸井 |
あのステージの必死さっていうのは、 義務感も混じってたんですか。 |
矢沢 | あったねー。 |
糸井 |
うわ、すごいセリフだよそれ。 本人は、ずっと俺はたのしんでるって 言い切ってたけど、その中には、義務感もあった。 |
矢沢 | 義務感もあった。 |
糸井 |
だからこそ、お客さんは、 「あいつ、毎日あれやってるのかよ」って 感心しに行ったわけだよね。 見てる人には、今日だけのステージだけど、 やってる本人には、明日もあるんだもんね。 |
矢沢 | 毎日やってんだもん。 |
糸井 | 恐ろしいことだよね。 |
矢沢 | 35年も36年も、やってんだもん。 でもね、しあわせなことに、 やっぱり音楽はたのしいなと思えるし、 ライブいいな、って思えるからね。 (続きます!) |