糸井 |
けっきょく、中日で、
選手としては2年でしたっけ?
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川相 |
3年です。
コーチ時代も含めると、7年。
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糸井 |
8年目を迎えるところだったんですね。
じゃあ、もう、中日の人として。
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川相 |
完全にそうなってましたね。
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糸井 |
そうかぁ‥‥。
これも素人意見ですけど、
あるチームの強みも弱みも知ってる人が
それをぜんぶ持って
ほかのチームに入るっていうのは、
けっこう、大きなことですよね。
その、わかりやすくいえば、
その情報はかなり役に立つでしょう?
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川相 |
そうですね。
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糸井 |
でしょうねぇ(笑)。
こういうくせがある、みたいなこととか、
いろんな情報を持ってるわけですから。
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川相 |
まぁ、ぜんぶを伝えることはできないので、
そのときどきで選手にアドバイスしたり、
っていうようなことでしたけど。
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糸井 |
でも、そのひと言があるだけで、
きっと、だいぶ違いますよね。
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川相 |
違いますね。
具体的に役に立たなくても、
そのひと言で気がらくになるだけで、
だいぶ違うと思います。
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糸井 |
そうですよね。
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川相 |
相手がどういう選手なのか
まったくわからなかったら
ふつうはむちゃくちゃ警戒します。
だけど、じつはこうなんだよ、って
ちょっと言うだけで
「あ、そうなんすかー」ってなって
少し気がらくになるっていう。
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糸井 |
それは、配球のクセみたいな、
具体的なことじゃなくっても。
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川相 |
もう、なんでもいいんです。
「こういうところをついていこう」
みたいなことでも、
まったく知らないよりはいい。
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糸井 |
逆に、向こうはわかってるんじゃないかと
思うだけで、相手はイヤですからね。
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川相 |
そうですよね。
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糸井 |
だって、あの川相が、
相手チームにいるんだもんなぁ。
そりゃ、イヤだよなぁ(笑)。
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赤坂 |
そうですね(笑)。
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川相 |
(笑)
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糸井 |
だって、思えばさあ、
川相さん、あのときに、
巨人の選手としていたんだもんね。
松井秀喜がいまでも思い出したくない、
って言ってる「10.8」。
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川相 |
ああ、はい。もちろんいました。
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糸井 |
あのときの選手が
相手チームに移ったわけだから、
そりゃ、大きなことですよ。
まぁ、あのときは落合さんも巨人でしたけど。
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川相 |
そうですね。
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糸井 |
川相選手はですねえ、あの試合の最後に、
じつはホームランを打ってるんです。
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赤坂 |
ああ、そうです(笑)。
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川相 |
バックスクリーンですね。
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糸井 |
なのに、二塁打だったんですよね。
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川相 |
そう、幻のホームラン(笑)。
二塁打じゃなくて三塁打でした。
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糸井 |
三塁打でしたか。
でも、あきらかに打球は
スタンドに入って跳ね返ってた。
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川相 |
ま、しょうがないですけどね。
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永田 |
(こらえきれず参加)
しかも、川相さん、
あれってあの年の第1号なんですよね。
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川相 |
そうなんです!
あの年、ぼくはホームランを
1本も打ってなかったんですよ。
で、9回表ですから、最終試合の最終打席で
バックスクリーンに打ったんです。
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永田 |
劇的なはずが、幻に。
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川相 |
ねぇー(笑)。
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糸井 |
あのとき、自分としては
ホームランだろうって思ったんですか。
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川相 |
や、ぼく、実際、
打球が入ったところは見てないんですよ。
打って、走って、
ちょうどファーストベースを回ったところで
パッと見たら跳ね返ってきた。
審判が「セーフセーフ」ってやってるから
それでぼくは必死に走って
サードにヘッドスライディングしたんです。
相手も投げてきたから(笑)。
そしたらなんかベンチが騒いでて、
長嶋さんが出てきて、
抗議してくれたんですけどね。
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糸井 |
でも、いまにして思えば、あの場面、
そんなに食い下がらなかったと思う。
それはもう、試合の流れを変えずに行こう、
みたいなムードがあったから。
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赤坂 |
ありました、ありました。
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糸井 |
なんていうか、球場全体に、
もう決着はついたっていう感じがあったよね。
それって、あの時代の野球だなぁ。
いまだったら、絶対そんなことないですよ。
もっと必死に抗議してる。
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川相 |
そうですね、ほんとに。
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糸井 |
やっぱり、野球は変化してるんだろうね。
いまなら絶対、そんな余裕はない。
あの状況でホームランなのか
ツーベースなのかって、
ものすごくおっきいことでしょう。
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川相 |
えらいことですよ。
あの1点、むちゃくちゃ大きいです。
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糸井 |
なのに、あのときのみんなの気持ちは、
「流れを変えずに行けば、
その1点がなくても勝てる」
っていう感じでしたよね。
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川相 |
そう、途中からは、
「負けない流れ」だったんです。
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糸井 |
それ、もっと詳しくことばにできます?
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川相 |
そうですね、
なぜ、そう感じたかというと──。
(続きます) |
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