カワイイもの好きな人々。
(ただし、おじさんの部)

井の頭公園へと続く明るくにぎやかな通りに
突如あらわれる黒い異空間‥‥。
今回僕が訪れたのはそんな場所でした。
知る人ぞ知る、JAP工房。

アトリエへと通していただいた僕の前に、
代表の川上登さん(42)は、笑顔でご登場。
「ほんとうに、僕で、いいんですね?」
そう念を押すと、川上さんは作業台の上に
高さ約4センチの物体をコトリと置くのでした。


第7回
ガイコツはカワイイ

山下 これは‥‥。
川上 根付。
山下 ねつけ? ああ、はいはい、根付。
江戸時代の携帯ストラップみたいな‥‥。
川上 そう、巾着とか印籠にぶらさげてたんだね。
山下 なるほどガイコツ‥‥やはり川上さんは、
この世界なのですね。

彫金や革加工の技巧を駆使して
斬新な装飾品をつくりだすJAP工房。
その主宰者、川上登さんのご活躍は、
以前より知人から伝え聞いておりました。
作品のテイストは、
幻想的で、近未来的で、蠱惑的で‥‥。
例えば、聖飢魔IIの衣装。
あれはずっとJAP工房の仕事でした。
圧倒的な技術と、きわだつアイデア。
僕は驚かされ続けていたのです。

川上 小さい頃から、こういうのが好きでね。
駄菓子屋とか縁日でも、
オバケのもんとか骨のもんとか‥‥
山下 暗闇で光るのとか。
川上 そうそうそうそう、
ああゆうもんが、なんか好きで。
山下 男子はみんなそうですよね。
で、おとなになって好みが別れる。
川上さんは、そのまま現在に至る(笑)。
川上 ええ(笑)。イイって思うものは、
こう、ちょっと怪しいぞっていうとこと
必ずリンクしてるんです、いまも。
山下 なるほど‥‥。
しかしこれ、よく見ると愛らしいですね。
川上 でしょ。
山下 歯、抜けてるし(笑)。
あきらかに笑ってますよ。
「でへ、でへへへへへへ」

川上 こっちもいいですよ。

山下 ほんっとだ。でも、なんで指を口に?
この樽はお酒? 味見してるのかな。
「べろがねえから味がわからねえ」

川上 ガイコツじゃないけど、これも根付。

山下 な、何ですか? この生き物。
川上 コウモリ。豚みたいだよね。
山下 ははは、真ん中の赤ちゃんの顔がまた‥‥。
「ばぶばぶ」

山下 こういうのって、象牙なんでしょうか。
川上 いや、これは江戸のものじゃなくて、
比較的最近、たぶん中国で作られたものだから、
マンモスの牙だね。
山下 マ、マンモス?
川上 そう、ワシントン条約で象牙はダメでしょ。
だからマンモスの牙を加工するの。
凍土から掘り出したやつを。
山下 へえ〜。
これ、おいくらするんですか?
川上 1個3万とか4万とか、たしかそんなもん。
江戸時代の象牙のやつも何個か持ってるけど、
そういうのは数十万の世界だよね。
山下 へえ〜〜。
川上 ええと、ほかにもなにか
ガイコツ物なかったかなあ‥‥。
ちょっと待ってて、探してくるから。
山下 あ、川上さん、
写真撮ってて大丈夫でしょうか。
川上 どうぞご自由に。じゃ待っててね。
山下 はい。
(‥‥‥‥これがJAP工房の内部か。
貴重な体験だ、ちゃんと撮っておこう)

山下 (上に並んだあの箱の中には、
いろんなパーツが入ってるんだな。
見たことない工具もいっぱいあるぞ)

※約5分経過。
山下 (‥‥川上さん、まだかな。
すこし、心細くなってきたな。
ん? あっちにもなんか部屋があるぞ。
‥‥‥‥ちょっと行ってみるか)

山下 (おおお、作品が、こんなにたくさん。
す、すごい雰囲気だ‥‥‥‥‥‥‥‥‥)

山下 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
川上 ここにいたんだ。
山下 わああ!! す、すみません!
勝手にウロウロして。
川上 ほら、これ、これもガイコツ。

山下 ああ、はい。‥‥このケースにガイコツ。
‥‥開けていいですか。
川上 どうぞ。
ギ‥‥

ギ、ギ‥‥

ギ、ギ、ギ。

山下 ああ‥‥。

川上 ピンブローチ。
山下 も、ものすごい顔。

川上 スペインに行ったとき、
セビリアの骨董屋さんで見つけたの。
たぶん100年とか200年前のものだね。
これは象牙。目はガラスでできてる。

そのとき、けたたましい電話の呼び出し音が。
鳴っているのは山下の携帯電話。
電源を切り忘れていました。
当然、すぐさまOFFです。

川上 ん? なあにそれ。
山下 え? あ、これですか。

川上 ああ、動眼。自分で貼ったんだ。
山下 はい、目玉好きなもんで。
川上 僕も目玉好きだよ。
ほら、こういうのとか。

山下 はあ〜、指輪ですね。これもガイコツ。
川上 そう、うちでつくってるの。
あとはこの、目玉コウモリとかね。

山下 はは、ちっちゃくて(幅2.8センチ)
かわいらしいですねえ。
川上 むこうにオリジナルがいるから、
帰りに見てってごらん。かわいいよ。
山下 お忙しい中、ありがとうございました。



工房を出ると、そこは
「ギルド・ユニット」というショールーム。
作品に触れて購入もできるスペースです。
ここがまた、ネジひとつにも気を抜かず
徹底的につくりこまれた異空間。



あーっ! いました! 飛んでます!



ほんと、世の中には
いろんなカワイイがあるものです。

JAP工房の魅力にもっと触れたい方は、
ぜひショールームを訪ねてみてください。
JAP工房のHPはコチラ。
http://www.jap-inc.com/

遠方の方も、ご心配なく。
密度の高い強力な作品集が出版されています。
「THE JAP GUILD WORKS」
(Amazonでの購入はこちらからどうぞ

 

Special Thanks
根付、ピンブローチ、アクセサリー
黒バックの写真撮影
Photographer 加藤アラタ

2004-01-21-WED

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