山下 |
ブライスって、
こうして手に取るのは初めてなんですよ。 |
長沼 |
あ、そうなんですか。
‥‥ええと、どうしましょう、
このテーブルに並べていいんでしょうか。 |
山下 |
え? 並べる? まだあるんですか。 |
長沼 |
一応ぜんぶ持ってきました。 |
山下 |
ぜひ、並べてください。 |
長沼良成さん(既婚)は、
広告やカタログのグラフィックを
制作する会社にお勤めのデザイナーさん。
長沼さん、11体のブライスを並べてくれました。
テーブルの上は、お人形さんでいっぱいです。 |
|

|
山下 |
ああ、すごい眺めですねえ。
ええと‥‥名前は、つけてるんですか? |
長沼 |
つけてますよ。シュガー、ココア、シフォン、
ミルフィー、ラッテ、メープル、レモン‥‥ |
店員 |
ご注文はお決まりでしょうか。 |
山下&
長沼 |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。 |
店員 |
ご注文のほうは‥‥。 |
山下&
長沼 |
ジンジャエール。 |
店員 |
少々お待ちください(去る)。 |
山下 |
‥‥注文が同じでしたね。 |
長沼 |
おいしいですよね、ジンジャエール。 |
山下 |
はい。‥あの、少し恥ずかしいですね。 |
長沼 |
ええ、みんなチラチラこちらを見ています。 |
山下 |
‥‥気にせずやりましょう。
ええと、じゃあまず、ここがカワイイという
ポイントを聞かせていただけますか。 |
長沼 |
ポイントは‥‥
顔と体のバランス、でしょうか。 |
山下 |
顔、でっかいですよね。 |
長沼 |
立ちませんから、頭が重くて。 |
山下 |
はははは。 |
長沼 |
あとは、そう、
自分で手を加えられるところですね。
たとえばこの髪、僕がパーマかけたんです。 |

|
山下 |
え? それはパーマ液で。 |
長沼 |
いやいや、お湯で。
三つ編みしてあげて、お湯をかけると
こういうクセがつくんです。 |
山下 |
あ、なるほど。 |
長沼 |
それと服はぜんぶ僕の手縫いです。 |
山下 |
‥‥あの、長沼さん、
いまさりげなくすごいことを言いましたよね。 |
長沼 |
え? |
山下 |
これぜんぶ長沼さんが?
しかも手縫い? |
長沼 |
はあ、自己流ですけど、こんな道具で。 |

|
山下 |
それって、すっごいことじゃないですか! |
長沼 |
いや、あの、やめてください、そんな。
僕よりすごい人はいっぱいいるので。 |
山下 |
そうなんですか。 |
長沼 |
ネットでたくさん販売している人とか、
アパレル系のすごい技術の人とか。
僕なんか、とてもとてもそこまでは‥‥。 |
山下 |
でも、やっぱりすごいです。
だって、本業だってお忙しいでしょう。
手縫いっていったら時間かかりますよね。 |
長沼 |
えらいかかります。 |
山下 |
縫うのは、お休みの日ですか。 |
長沼 |
ええ、それと会社から帰ってから。
ですからまあ、毎日ですね。 |
山下 |
毎日! |
長沼 |
少しずつやってます。
帽子なんかは時間がかかるんで。 |
山下 |
これですね。 |

|
山下 |
ちゃんと裏地も‥‥人間のと変わらない。 |
長沼 |
人間用の型紙を50%縮小コピーして
そのままつくるんです。 |
山下 |
はー、そうなんですか。 |
長沼 |
あとは、これもたいへんでした。 |

|
山下 |
和服、ああ、すごいなあ、
この帯のところとか‥‥ |
店員 |
お待たせしました。 |
山下&
長沼 |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。 |
店員 |
ごゆっくりどうぞ(去る)。 |
山下 |
‥‥気にせず続けましょう。
ええと、あの長沼さん、この中で
いちばんカワイイのとか、あります? |
長沼 |
いちばんですか? うーん‥‥。
逆に、山下さんから見てどうでしょうか。 |
山下 |
僕ですか。 |
長沼 |
客観的な意見をお聞きしたいです。
どれがいちばんカワイイですか? |
山下 |
ああ、ええと‥‥や、むつかしいですねえ、
このカジュアルなのにも魅かれますが‥‥。 |

|
長沼 |
はいはい。 |
山下 |
でも、やっぱり、これだなあ。 |

|
長沼 |
このコ。 |
山下 |
ええ。着ぐるみっていうのが、また。
この、あごのところが、こう、
布でかくれてる感じが、もう‥‥。 |

|
長沼 |
ツボですか。 |
山下 |
ど真ん中のストライク。
頭をなでたくなります。 |
長沼 |
どうぞどうぞ。 |
山下 |
では。 |

|
長沼 |
じつは僕も、そのコがいちばんなんです。 |
山下 |
趣味が似てるんだ(笑)。
これ、チェブラーシカっぽいですよね。
|
長沼 |
あ、ご存知ですか! そう、意識してます! |
山下 |
やっぱり! 「ミトン」みました? |
長沼 |
みましたみました! |
と、ここからしばし、
僕たちは互いに好きなもののお話を
アレコレするのでありました。
これが実に、共通のものが多くてびっくり。
嗜好性ばかりか生年月日まで近いことも判明。
「なんだか僕たち同じことが多いですねえ」と
初対面から盛り上がったのであります。 |
|
山下 |
あ! 長沼さん、大変です。 |
長沼 |
どうしました? |
山下 |
デジカメの電池が切れかかっています。
アレを撮らないと。 |
長沼 |
あ、目玉の色が変わるとこですね。 |
山下 |
そう、ブライスの最大の特徴ですからね。
じゃ、このコで。 |

|
山下 |
長沼さん、頭のうしろのヒモ、
ひっぱってください、早く! |
長沼 |
はいはい、いきますよ。(カッチン) |

|
山下 |
オッケーです、ヒモ、放して! |
長沼 |
はい。(カッチン) |

|
山下 |
やった、電池、間に合いました! |
長沼 |
よかったです!
|
店員 |
こちらおさげしてよろしいでしょうか。 |
山下&
長沼 |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
|