山下 |
ひ、平野さん! 指に、指にとまりました。
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平野 |
(笑)そうですか。
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山下 |
こ、これは‥‥くすぐったいです。
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「都心でハチミツをつくっている人がいる」
知人からそんな話を聞いて、
僕はいてもたってもいられなくなりました。
「それはさぞかしミツバチのことを
かわいく思っている人に違いない」
早速ご紹介いただいた平野さんは、
「百花恵」という、国産ハチミツ専門店を
世田谷区の住宅地で営む方でありました。
さて、ハチの羽音に包まれる僕。
1匹ならブンブンでしょうが、
あまりにたくさんなので、もうワンワンです。
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山下 |
平野さん、これ、さっきからずっと僕の指で
もぞもぞしているのですが‥‥。
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平野 |
(笑)山下さんを気に入ったようですね。
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山下 |
あの、刺しませんよね。
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平野 |
大丈夫です、
そうしてるだけなら刺したりしません。
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山下 |
なんか、ちょろちょろなめてます、指を。
僕から蜜は出ないのに。‥‥あ。
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平野 |
どうしました?
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山下 |
何匹か集ってきましたよ、ほら。
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平野 |
よく見ると、かわいいもんでしょ。
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山下 |
はい。ほんと、こんなに愛らしいとは‥‥。
ぜんぜん刺さないし。
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平野 |
わたしでも刺されるのは年に一度くらいです。
滅多なことでは刺さないんですよ。
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山下 |
そうなんですか‥‥。
ああ、このモコモコした背中がまた‥‥。
なでてやりたくなります。
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平野 |
それは刺されます。
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山下 |
‥‥うーん、もどかしいですねえ。
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平野 |
はははは‥‥。
じゃあ、ちょっと巣箱を開けてみますか。
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山下 |
あ、はい。
お願いします!
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平野 |
‥‥よいしょ。
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山下 |
わあ‥‥。
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平野 |
山下さんは女王バチ見たことありますか?
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山下 |
いえいえ、ありません。
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平野 |
そうですか。いま探しますね‥‥。
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山下 |
わ、わあ、うわあ、いやあ‥‥。
びっしり。スゴイなあ‥‥。
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平野 |
この巣箱に1万2千匹いますからね。
ええと‥‥あ、山下さん、いましたよ。
ほら、このお腹が大きいやつ。
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山下 |
わ、ほんとだ大きい!
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平野 |
これが、女王です。
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山下 |
大きい!
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平野 |
やあ、見ていただけてよかったです。
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山下 |
はい、ありがとうございます。
いいものが見れました。
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こうして、ミツバチ体験は無事終了。
そのまま僕はお店のほうにお邪魔して、
ゆっくりお話をうかがうのでありました。
日本各地のハチミツを試食しながら。
りんご、アカシヤ、菩提樹、みかん、
そよご、もちの木、そば‥‥などなど。
それぞれに個性的な味わい。
口の中に、お花畑が広がりました。
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山下 |
‥‥で、いよいよこれが、
平野さんの家でとれたハチミツですね。
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平野 |
そうです。食べてみてください。
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山下 |
では。(食べる)
‥‥‥‥ああ、これが、世田谷の味。
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平野 |
なかなか、いけますでしょ。
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山下 |
はい、おどろきました。
都心でこんなおいしいのができるんですね。
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平野 |
東京には、意外と花があるんですよ。
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山下 |
これ、ゆずっていただけるのですか?
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平野 |
いや、実はこれは販売してないのです。
巣箱ふたつだけですので、
そんなにたくさん量がとれなくて。
家族の分と、お店にいらしたお客様に
なめていただく分で終わってしまうんですよ。
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山下 |
そうですか、ちょっと残念です。
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平野 |
わたしの場合、養蜂家ではなくて
趣味で飼っているようなものですので。
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山下 |
‥‥ということは、ハチはペット?
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平野 |
そうそう、イヌネコと同じですね。
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山下 |
そうかあ、ペットですか‥‥。
当然ですが、かわいいですよね。
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平野 |
ええ、なにしろ、けなげなんです。
朝早くから日没までせっせと働いて。
少しくらいの雨なら、出かけていくんですよ。
きょうは休んでいいよって言いたいくらい。
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山下 |
いじらしいですねえ。
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平野 |
はい。でも、そうやって働いても、
一匹のミツバチが一生で集める蜜は
小さなスプーンに一杯くらいなんです。
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山下 |
え? じゃあ、さっきいただいたくらい?
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平野 |
はい、そうです。
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山下 |
‥‥おろそかにはできませんね。
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平野 |
ええ。
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山下 |
‥‥‥‥ん? これは?
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平野 |
いろんな方がですね、ハチのグッズを
持ってきてくださるのですよ。
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山下 |
ハチのステンドグラスも。
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平野 |
それは姪っ子がつくってくれました。
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山下 |
すごい、手作りですか。
あ、こっちはアイロンビーズですね。
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平野 |
はい、それもまた別の姪っ子が。
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山下 |
なんか、いいですねえ‥‥。
おや? これは?
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平野 |
ああ、それは‥‥。
ちょっと‥‥外へ来ていただけますか。
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山下 |
あ、はい。(ふたりで外へ)
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平野 |
この看板なんですが‥‥。
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山下 |
はい、このかわいい看板。
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平野 |
わたしがキャラクターデザインをしまして
自分で木に彫ってつくったのですが‥‥。
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山下 |
そんなこともやられるのですか?
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平野 |
ええ。それで、このキャラクターが、
さっきの人形なのです。
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山下 |
え、え?
あの、もう一度人形を見せてください。
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平野 |
どうぞどうぞ。(ふたりで戻る)
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山下 |
‥‥‥‥‥‥‥‥なるほど。
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平野 |
女房がつくりました。
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山下 |
奥様が。
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平野 |
触覚と羽が、まだついてないのです。
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山下 |
あ、未完成なんですね。
‥‥名前は、ないんですか?
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平野 |
名前ですか、ああ、ちょっとつけてないです。
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山下 |
つけてあげるといいですよね。
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平野 |
ええ、そうですね。
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山下 |
‥‥‥メグミちゃん、でどうでしょう。
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平野 |
え?
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山下 |
「百花恵」の“恵”をとって。
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平野 |
‥‥メグミちゃん。
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山下 |
どうでしょう?
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平野 |
いやあ‥‥うーん‥‥。
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山下 |
‥‥じゃ、僕が個人的にメグミちゃんと
呼ばせてもらうのはいいでしょうか。
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平野 |
(笑)それはもう、どうぞ。
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山下 |
(笑)きょうはありがとうございました。
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