山下 |
ああ、持ってました僕も。
よく遊びましたよ、これで。
いやあ、なつかしいなあ‥‥。 |
岡元 |
その箱にはパステル調のをまとめてあります。 |
山下 |
なんとも、淡い色合いですよねえ。 |
岡元建三さん(既婚)は、
編集プロダクションに所属しながら、
オモチャ原型の制作やデザインを
なさっている37才。
かわいいものだらけの
「bean's」というムックでは、
フィギュアやブロックを組み上げて
撮影用の作品をつくるという
じつにうらやましいお仕事をされている、
一児のおとうさんです。
さて、そんな岡元さん、
ご自分で組みあげたダイヤブロック作品を
テーブルにずらりと並べてくださいます。 |
|
 |
山下 |
こんなにたくさん‥‥。
わざわざご用意いただいてすみません。 |
岡元 |
いえいえいえ。 |
山下 |
作品もたくさんですが、
ブロックそのものの数も、これ相当ですよね。 |
岡元 |
ええ、いっぱいありすぎて、
もうごちゃごちゃです。 |
山下 |
そんなことないですよ、
きちんと色分けしてあるじゃないですか。 |
 |
岡元 |
いやあ、まだ整理してない
ブロックがあちこちにあるんで‥‥。 |
山下 |
ま、まだ、ある。 |
岡元 |
ありますねえ。 |
山下 |
‥‥そもそも岡元さんは、なぜこんなにも
ダイヤブロックに夢中になられたのでしょう。 |
岡元 |
それはもう、子どもの頃からです。
ブロックでいろんなものをつくるのが
とにかく好きだったんですね、昔から。 |
山下 |
ずっとダイヤブロックですか。 |
岡元 |
もうひとつのほうにも
すこし手を出したりしましたけど、
やっぱりダイヤブロック派ですね。 |
山下 |
もうひとつのほう‥‥レゴブロックですね。 |
岡元 |
そう。そっちもたまに買ってはみるんですが、
こっちのほうが肌に合うようで。 |
山下 |
‥‥どのあたりが違うのでしょう? |
岡元 |
まず色合いですよね。 |
山下 |
なるほど、ダイヤブロックは日本的というか、
やわらかな感じがします。 |
岡元 |
実際、レゴよりやわらかいプラスチックで
できているんです。だから着脱しやすい。 |
山下 |
(手に取ってやってみる)ほんとだー。
レゴは、もっとしっかりとはまりますよね。 |
岡元 |
ええ、パーツも小さくてがっちりはまるから
精密なシルエットを出せるんです、レゴは。 |
山下 |
精巧でかっこいい作品がつくれるわけですね。 |
岡元 |
そうですね。 |
山下 |
ダイヤブロックはどうなんでしょう。 |
岡元 |
ダイヤブロックは‥‥。 |
山下 |
はい。 |
岡元 |
かわいいものしかつくれない。 |
山下 |
あ! そ、そうなんですか!? |
岡元 |
ええ、僕の場合そうなんですよ。
たとえば宇宙っぽいのをつくるのが好きで、
こういうのをつくるんですが‥‥(手渡す)。 |
 |
山下 |
こ、これは、R2-D2! |
岡元 |
こうなるんです、ダイヤブロックだと。 |
山下 |
なるほどお(笑)。 |
岡元 |
レゴでつくればもっとリアルなのも
できるんですが、僕はこっちが好きで。
まあ、個人の好みによるんでしょうけど。 |
山下 |
いいですねえ、
かわいいものしかつくれないって。 |
岡元 |
乗り物なんかもですね、
がんばってかっこいいのをつくろうとしても
こんなふうになるんです。 |
 |
山下 |
お。でもどうして、なかなか(笑)。 |
岡元 |
ピーマン・カーと名付けました。 |
山下 |
ほんとだピーマン型の車だ。 |
岡元 |
で、これがバナナ・カー。 |
 |
山下 |
いいですねー。そちらは? |
岡元 |
チェリー・カーです。 |
 |
山下 |
たしかにかわいいです。
なつかしい雰囲気もあるし。
‥‥このダイヤブロックというのは
いつごろ誕生したのですか? |
岡元 |
ええと‥‥(資料をみる)1962年ですね。 |
山下 |
せ、1962年! それは僕が生まれた年です! |
岡元 |
あ、そうですか。 |
山下 |
ダイヤブロックと僕、同い年なんだ‥‥。
|
岡元 |
この写真(資料を差し出す)みてください。 |
 |
山下 |
‥‥ん? 右の赤いのは? |
岡元 |
鉛筆を2本させるキャップです。 |
山下 |
鉛筆のキャップ。 |
岡元 |
これがダイヤブロックのルーツなんです。
当時の子どもたちがこの鉛筆キャップを
ブロックのようにつなげて遊んだのが、
ダイヤブロックの原点なんですね。 |
山下 |
へえええ、そうなんですかあ。 |
岡元 |
その鉛筆キャップに改良を重ねて
ダイヤブロックが誕生したわけですが、
最初に発売されたセットは、
白以外の部品がぜんぶ透明だったそうです。 |
山下 |
透明? あ、こういうクリアなやつ。 |
 |
岡元 |
そう、それがダイヤモンドのように輝くから
「ダイヤブロック」と。 |
山下 |
へええ~、そんな由来があったんですねえ。
‥‥ああ、この透明なブロック、
当時ちょっとしか持ってなくて、
すごく大切にしていたことを思い出しました。
赤くて小さい透明のパーツを、
消防車のサイレンにしたりして‥‥。 |
岡元 |
消防車ですか、ちょっと待ってくださいね。
(がらがらと部品を探し、かちゃかちゃ組む)
‥‥こんな感じでしょうか(手渡す)。 |
 |
山下 |
ひゃあ、ちゃんとはしごがついて! |
岡元 |
すくない部品でつくるの好きなんですよ。
(がらがら、かちゃかちゃ)
はい、救急車もどうぞ(手渡す)。 |
 |
山下 |
なんてちっこい救急車(笑)。 |
岡元 |
もっとすくない部品でできるのが‥‥
(がらがら、かちゃかちゃ)
この、パトカーです(手渡す)。 |
 |
山下 |
すごい、たった6パーツ。
‥‥でも、申し上げにくいのですが岡元さん
これ赤いランプが1個足りないのでは‥‥。 |
岡元 |
いや山下さん、それは昔のパトカーですから。 |
山下 |
あ、ああ! そうか、1個で正しいんだ!
「西部警察」よりも昔のパトカーですね! |
岡元 |
はい(笑)。 |
山下 |
いいですねー、こういうちっこいの‥‥。
でも大きいのもつくられるんですよね。 |
岡元 |
大きいの、そうですね‥‥(立ちあがり奥へ)。
たとえば(奥から持ってきて)こういうのが
大きいやつでしょうか。 |
 |
山下 |
うわー、すごーい。
「岡元さんの動く城」だ。 |
岡元 |
(笑)城というか、
一応マンションなんですけどね。 |
山下 |
マンション! |
岡元 |
これ、引き出しになってて、
小物を入れられるんです。 |
 |
山下 |
おー、実用性も。 |
岡元 |
それと、大きくはないですが、
こういう中くらいの、どうでしょう。 |
 |
山下 |
わ! あはははははは。 |
岡元 |
もともとがドット絵ですから、
似合うんですね、こういうのも。 |
山下 |
たあのしいですねえ、これは。 |
岡元 |
山下さんも、なにかつくりませんか。 |
山下 |
あ、いいですか。 |
岡元 |
もちろんですよ。 |
山下 |
では、同じテーマでひとり一作品ずつ
つくるというのはどうでしょう。 |
岡元 |
いいですね。
で? テーマはどうしましょう。
なにをつくります? |
山下 |
なにがいいですかね。 |
岡元 |
なんでもつくりますよ。 |
山下 |
うーん‥‥。どうせならかわいらしいのが
いいですよねえ。
ええと‥‥。いや、迷いますねえ‥‥。 |
岡元 |
あ、じゃ、あれにしませんか。 |
山下 |
なんでしょう? |
岡元 |
ほら、山下さんが出された本の
表紙に描いてある、あのかわいらしい
ワンちゃん。 |
山下 |
(笑)うさぎなんです、あの子。 |
岡元 |
あ、失礼しました、うさぎでしたか! |
山下 |
はい、耳のたれたうさぎ(笑)。
‥‥わかりました、あれでいきましょう。
テーマは耳のたれたうさぎということで! |
それから僕と岡元さんは、
各自の作品をつくりはじめるのでありました。
がらがらがらと部品を探しては、
かちゃかちゃかちゃと
組んでみたり、はずしてみたり‥‥。
集中。
かわす言葉もほとんどなく、
集中。
集中。
集中。
気がつけば、
かるく1時間を経過しておりました。 |
|
山下 |
‥‥で、できた! できました!
これでよしとします!! |
 |
岡元 |
おお! すばらしい!
それはまさしく、あの表紙そのものですね。 |
山下 |
途中、どうなることかと思いました。 |
岡元 |
最後までやりきることが大切なんです。
えらいです、投げ出さずにやりましたね。 |
山下 |
ありがとうございます。
最初は立体的につくろうと思ったのですが、
もうなにがなんだかわからなくなって‥‥。
平面図に切り替えました。 |
岡元 |
いやもう、それで大正解です。
徐々に立体にしていけば。 |
山下 |
岡元さんのほうは、いかがです? |
岡元 |
僕は頭が完成しました。 |
山下 |
ぜ、ぜひみせてください。 |
岡元 |
このようなものに。 |
 |
山下 |
‥‥‥‥目が人間。 |
岡元 |
ちょっと工夫をと思いまして。 |
山下 |
‥‥さすがです。発想にゆとりがあります。
きれいな立体になっているし‥‥。
いやあ岡元さん、本日は長い時間、
ありがとうございました!
|