カワイイもの好きな人々。
(ただし、おじさんの部)

4月初旬のおだやかな土曜日、午後2時。
新井薬師にほど近い、中野区の住宅街。

岡元建三さん(37)は
訪れた僕をリビングに招き入れると、
パーツが入ったボックスのふたを
なれた手つきで開けるのでありました。


第35回
ダイヤブロックはカワイイ。

山下 ああ、持ってました僕も。
よく遊びましたよ、これで。
いやあ、なつかしいなあ‥‥。
岡元 その箱にはパステル調のをまとめてあります。
山下 なんとも、淡い色合いですよねえ。

岡元建三さん(既婚)は、
編集プロダクションに所属しながら、
オモチャ原型の制作やデザインを
なさっている37才。
かわいいものだらけの
「bean's」というムックでは、
フィギュアやブロックを組み上げて
撮影用の作品をつくるという
じつにうらやましいお仕事をされている、
一児のおとうさんです。
さて、そんな岡元さん、
ご自分で組みあげたダイヤブロック作品を
テーブルにずらりと並べてくださいます。


山下 こんなにたくさん‥‥。
わざわざご用意いただいてすみません。
岡元 いえいえいえ。
山下 作品もたくさんですが、
ブロックそのものの数も、これ相当ですよね。
岡元 ええ、いっぱいありすぎて、
もうごちゃごちゃです。
山下 そんなことないですよ、
きちんと色分けしてあるじゃないですか。
岡元 いやあ、まだ整理してない
ブロックがあちこちにあるんで‥‥。
山下 ま、まだ、ある。
岡元 ありますねえ。
山下 ‥‥そもそも岡元さんは、なぜこんなにも
ダイヤブロックに夢中になられたのでしょう。
岡元 それはもう、子どもの頃からです。
ブロックでいろんなものをつくるのが
とにかく好きだったんですね、昔から。
山下 ずっとダイヤブロックですか。
岡元 もうひとつのほうにも
すこし手を出したりしましたけど、
やっぱりダイヤブロック派ですね。
山下 もうひとつのほう‥‥レゴブロックですね。
岡元 そう。そっちもたまに買ってはみるんですが、
こっちのほうが肌に合うようで。
山下 ‥‥どのあたりが違うのでしょう?
岡元 まず色合いですよね。
山下 なるほど、ダイヤブロックは日本的というか、
やわらかな感じがします。
岡元 実際、レゴよりやわらかいプラスチックで
できているんです。だから着脱しやすい。
山下 (手に取ってやってみる)ほんとだー。
レゴは、もっとしっかりとはまりますよね。
岡元 ええ、パーツも小さくてがっちりはまるから
精密なシルエットを出せるんです、レゴは。
山下 精巧でかっこいい作品がつくれるわけですね。
岡元 そうですね。
山下 ダイヤブロックはどうなんでしょう。
岡元 ダイヤブロックは‥‥。
山下 はい。
岡元 かわいいものしかつくれない。
山下 あ! そ、そうなんですか!?
岡元 ええ、僕の場合そうなんですよ。
たとえば宇宙っぽいのをつくるのが好きで、
こういうのをつくるんですが‥‥(手渡す)。
山下 こ、これは、R2-D2!
岡元 こうなるんです、ダイヤブロックだと。
山下 なるほどお(笑)。
岡元 レゴでつくればもっとリアルなのも
できるんですが、僕はこっちが好きで。
まあ、個人の好みによるんでしょうけど。
山下 いいですねえ、
かわいいものしかつくれないって。
岡元 乗り物なんかもですね、
がんばってかっこいいのをつくろうとしても
こんなふうになるんです。
山下 お。でもどうして、なかなか(笑)。
岡元 ピーマン・カーと名付けました。
山下 ほんとだピーマン型の車だ。
岡元 で、これがバナナ・カー。
山下 いいですねー。そちらは?
岡元 チェリー・カーです。
山下 たしかにかわいいです。
なつかしい雰囲気もあるし。
‥‥このダイヤブロックというのは
いつごろ誕生したのですか?
岡元 ええと‥‥(資料をみる)1962年ですね。
山下 せ、1962年! それは僕が生まれた年です!
岡元 あ、そうですか。
山下 ダイヤブロックと僕、同い年なんだ‥‥。
岡元 この写真(資料を差し出す)みてください。
山下 ‥‥ん? 右の赤いのは?
岡元 鉛筆を2本させるキャップです。
山下 鉛筆のキャップ。
岡元 これがダイヤブロックのルーツなんです。
当時の子どもたちがこの鉛筆キャップを
ブロックのようにつなげて遊んだのが、
ダイヤブロックの原点なんですね。
山下 へえええ、そうなんですかあ。
岡元 その鉛筆キャップに改良を重ねて
ダイヤブロックが誕生したわけですが、
最初に発売されたセットは、
白以外の部品がぜんぶ透明だったそうです。
山下 透明? あ、こういうクリアなやつ。
岡元 そう、それがダイヤモンドのように輝くから
「ダイヤブロック」と。
山下 へええ〜、そんな由来があったんですねえ。
‥‥ああ、この透明なブロック、
当時ちょっとしか持ってなくて、
すごく大切にしていたことを思い出しました。
赤くて小さい透明のパーツを、
消防車のサイレンにしたりして‥‥。
岡元 消防車ですか、ちょっと待ってくださいね。
(がらがらと部品を探し、かちゃかちゃ組む)
‥‥こんな感じでしょうか(手渡す)。
山下 ひゃあ、ちゃんとはしごがついて!
岡元 すくない部品でつくるの好きなんですよ。
(がらがら、かちゃかちゃ)
はい、救急車もどうぞ(手渡す)。
山下 なんてちっこい救急車(笑)。
岡元 もっとすくない部品でできるのが‥‥
(がらがら、かちゃかちゃ)
この、パトカーです(手渡す)。
山下 すごい、たった6パーツ。
‥‥でも、申し上げにくいのですが岡元さん
これ赤いランプが1個足りないのでは‥‥。
岡元 いや山下さん、それは昔のパトカーですから。
山下 あ、ああ! そうか、1個で正しいんだ!
「西部警察」よりも昔のパトカーですね!
岡元 はい(笑)。
山下 いいですねー、こういうちっこいの‥‥。
でも大きいのもつくられるんですよね。
岡元 大きいの、そうですね‥‥(立ちあがり奥へ)。
たとえば(奥から持ってきて)こういうのが
大きいやつでしょうか。
山下 うわー、すごーい。
「岡元さんの動く城」だ。
岡元 (笑)城というか、
一応マンションなんですけどね。
山下 マンション!
岡元 これ、引き出しになってて、
小物を入れられるんです。
山下 おー、実用性も。
岡元 それと、大きくはないですが、
こういう中くらいの、どうでしょう。
山下 わ! あはははははは。
岡元 もともとがドット絵ですから、
似合うんですね、こういうのも。
山下 たあのしいですねえ、これは。
岡元 山下さんも、なにかつくりませんか。
山下 あ、いいですか。
岡元 もちろんですよ。
山下 では、同じテーマでひとり一作品ずつ
つくるというのはどうでしょう。
岡元 いいですね。
で? テーマはどうしましょう。
なにをつくります?
山下 なにがいいですかね。
岡元 なんでもつくりますよ。
山下 うーん‥‥。どうせならかわいらしいのが
いいですよねえ。
ええと‥‥。いや、迷いますねえ‥‥。
岡元 あ、じゃ、あれにしませんか。
山下 なんでしょう?
岡元 ほら、山下さんが出された本の
表紙に描いてある、あのかわいらしい
ワンちゃん。
山下 (笑)うさぎなんです、あの子。
岡元 あ、失礼しました、うさぎでしたか!
山下 はい、耳のたれたうさぎ(笑)。
‥‥わかりました、あれでいきましょう。
テーマは耳のたれたうさぎということで!

それから僕と岡元さんは、
各自の作品をつくりはじめるのでありました。
がらがらがらと部品を探しては、
かちゃかちゃかちゃと
組んでみたり、はずしてみたり‥‥。
集中。
かわす言葉もほとんどなく、
集中。
集中。
集中。
気がつけば、
かるく1時間を経過しておりました。


山下 ‥‥で、できた! できました!
これでよしとします!!
岡元 おお! すばらしい!
それはまさしく、あの表紙そのものですね。
山下 途中、どうなることかと思いました。
岡元 最後までやりきることが大切なんです。
えらいです、投げ出さずにやりましたね。
山下 ありがとうございます。
最初は立体的につくろうと思ったのですが、
もうなにがなんだかわからなくなって‥‥。
平面図に切り替えました。
岡元 いやもう、それで大正解です。
徐々に立体にしていけば。
山下 岡元さんのほうは、いかがです?
岡元 僕は頭が完成しました。
山下 ぜ、ぜひみせてください。
岡元 このようなものに。
山下 ‥‥‥‥目が人間。
岡元 ちょっと工夫をと思いまして。
山下 ‥‥さすがです。発想にゆとりがあります。
きれいな立体になっているし‥‥。
いやあ岡元さん、本日は長い時間、
ありがとうございました!



なつかしくてたのしい、かわいさでありました。

岡元さん、
もうすこし立体物が組めるようになったら
また行きます。遊んでくださいね!

岡元さんが所属する、
カワイイものならおまかせの
編集プロダクション、
「スタジオ ウー!」HPはコチラ。

http://www.studio-uoo.com/

ダイヤブロックの歴史や商品カタログを
じっくりたのしめる公式サイトは
コチラからどうぞ!

http://www.diablock.co.jp/

 

協力/株式会社河田
diablock(C)KAWADA CO., LTD.

2005-04-06-WED

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