大型連休直前の木曜日、朝10時。 原宿駅から徒歩8分、白いマンションにある とあるオフィスの会議室に僕はいました。 テラウチマサトさん(51)は、 満面に笑みをたたえながら、 白い紙製で箱状の物体を、 そっと手のひらにのせるのでありました。
テラウチさんは写真家であり、 写真誌の編集長でもある、ご多忙な51歳。 家に帰れば3人のお子様の父でもある方です。 「ファットフォト」という写真誌に ピンホールカメラの組み立てキットが 付録でついてくるらしい。 しかも、そのカメラはとても優秀なものらしい。 そんなウワサを山下が耳にしたのは数週間前。 ウワサを確かめようと入手してみましたら‥‥ なんともかわいいカメラができあがりました! 「これを企画した人に会いたい!!」 というわけでの、おしかけ取材でございます。 ちなみに山下、撮影はまだ行っておりません。
こうして僕とテラウチさんは、 それぞれゼブラを手に持って、 まだ午前中の竹下通りに向かいました。 連休前の竹下通りは、汗ばむほどの良いお天気。 まさにピンホールカメラ日和なのでありました。 さっそく道にしゃがんで撮影をはじめる、 黒いお洋服がお似合いのテラウチさん。 春色のシャツを着た山下も、 みちばたのあれこれにシャッターを開きます。 「カシャッ」という音はもちろんしません。 それがなんだか心もとなく感じるのですが、 「ゼブラは優秀」と信じて撮り続けました。 それと、 ゼブラにはファインダーがありません。 ですから構図はあくまで勘で決めるのです。 これがまたたのしくて。 「だいたいこんな感じかなー」と 被写体にカメラを向けます。 シャッター音がしなくて、 覗き込んで撮る必要がない‥‥。 攻撃的なところがまったくないカメラでした。 撮られる側も周りでみている人たちさえも、 撮影中という緊張を感じない。 ですからほら、犬も逃げません。 せっかくの原宿・竹下通りです。 やはり、アレを食べなければと思いました。 クレープ。 しかし、いい歳をした男性ふたりが それぞれ1個ずつクレープを食べるなんて、 そんな恥ずかしいことはできません。 なので、1個だけ買いました。 テラウチさんと半分こです。 イチゴのクレープを交替で食べながらの ほのぼの撮影会は1時間も続いたでしょうか。 6本のフィルムがなくなって終了です。 スピード現像所にフィルムを出し、 僕らはカフェでのんびりお食事。 たのしくお話をしているうちに プリント完了の時刻になりました。 ピックアップした写真の束を抱えると、 おじさんふたりは期待に胸をふくらませ、 オフィスへと足早に戻るのでありました。
2005-05-04-WED