カワイイもの好きな人々。
(ただし、おじさんの部)

大型連休最後の土曜日、午後3時過ぎ。
青山ブックセンター本店内のイベントスペース。
山下哲(42)は、震える指でマウスをつかむと
照明が抑えられた場内前面のスクリーンに、
その愛する画像を送りだすのでありました。


番外編
トークライブのご報告。

山下 ‥‥み、みなさま、はじめまして。
山下哲ともうします(おじぎ)。
客席 (拍手)
山下 こちらが本日ゲストにお招きしました
杉浦さやかさんです。
杉浦 こんにちは(おじぎ)。
客席 (拍手)
山下 ‥‥‥‥‥‥あ、あがってます。

というわけで、トークライブという
たいへんな催しを行ってまいりました。
今回は番外編として、そのときの様子を
一部抜粋でご報告させていただきます。

開催にあたり少しでも緊張を緩和するために、
とにかく僕は前準備をがんばりました。
小心者は準備をかためる。
以下のような具合でございます。

●素敵なゲストを招く
 人気イラストレータの杉浦さやかさんが
 となりに座っていただけることに。
 心強い! すごく心強い!
●司会者を手配
 アスペクト編集者・野田理絵さんに信託。
 山下同様、小心族の野田さんは、
 自分のセリフをぜんぶ「書いて」きました。
 頼もしい! それなりに頼もしい!
●大きな画像を用意
 カワイイ画像をたくさん作成。
 高性能プロジェクタもセットしました。
●サプライズゲストを手配
 さらにゲストをもう一名お呼びしました。

準備は万端。
やるべきことをやりつくし、時間がきて、
杉浦さんと一緒に会場に入ると‥‥。

満員!(左から、山下、杉浦さん、野田さん)
緊張はマックス、でも準備は万端。
深呼吸‥‥。ていねいに、ひとつずつ、
僕はお話をしていくのでした。
お客様のあたたかな反応に励まされます。
杉浦さんが素敵なコメントをくださいます。
野田さんは、控え室で何度も練習していた
セリフをよどみなく読みあげます。
やがて、メインのコーナーになりました。
スクリーンには、このような画像が。
(以下、ピンクの枠はスクリーン画像)

そう、今回のトークライブのテーマは、
「カワイイもの好き、ほのぼの対決
 (おじさんの部VS.女の子の部)」
というものなのでした。
いくつかの「部門」にわけ、僕と杉浦さんが
それぞれの部門でお互いのカワイイものを
紹介していくという趣向。

長い前置き、失礼しました。
それでは、

の杉浦さんの発表が終わり、
山下の番になったところから、
当日の様子をおたのしみください。


山下 ‥‥では、僕のぬいぐるみを。
こちらです。
杉浦 あ、それ(笑)。
山下 はい、これ(笑)。
じつは先日、杉浦さんがガレージセールを
やられていたのですが、そこで見つけて
ゆずっていただいたパンダなんです。
名前をつけました。マー坊です。
杉浦 マー坊?
山下 ええ、パンダといえば中国、
中国といえばマーボー豆腐。だからマー坊。
杉浦 そうですか(笑)。‥‥さとしさんは
マー坊のどこを気に入られました?
山下 ‥‥あの、うちの小5のせがれがですね、
いつもぬいぐるみを抱いて寝ているのですよ。
一応それも持ってきました。これです。
杉浦 わあ(笑)。
山下 ねえねえちゃんという名前です。
せがれがいじくりまわしているので
もうボロボロになってます。
杉浦 かわいいですね、そういうの。
山下 はい。それで‥‥なんといいますか、
僕もそういうのがほしいと思ってまして‥‥。
杉浦 ん???
山下 ‥‥画像でおみせします。
こう、夜中に仕事を終えてですね、
パジャマを着て、寝室に入りますと、
僕の布団が敷いてあるわけですが、
それがこんな具合になってるんです。
客席 (どよめくような笑い)
山下 ‥‥よくできた妻でして、
毎晩こうしておいてくれるんですよ。
‥‥あの、会場の奥様方、これをぜひ
ご主人の布団にやってみてください。
悪いことはひとつもありませんから。
きっと怒られないと思います。
「なあんだよも〜(笑)」とか言いながら
かなりよろこぶと思うんです。
杉浦 悪いことじゃないですよね(笑)。
山下 はい。先日は一緒にドライブに行きました。
山下 大自然とマー坊。
杉浦 大切にしてもらってて、うれしいです。
山下 取材で熊本に行ったのですが
そのときも連れていったんですよ。
こちらは旅館のお布団です。
杉浦 (笑)これ、ひとりでやったんですか?
山下 はい、取材の疲れもふっとびます。
‥‥ほんと、悪いことはひとつもないので、
ぜひ、ぬいぐるみと寝てみてください。
おとなの、とくに男性におすすめです。
杉浦 さとしさんの、おすすめですね(笑)。
山下 はい。僕のぬいぐるみは以上です。
次の部門は‥‥こちらですね。
山下 では、杉浦さんのから見せていただけますか。
杉浦 はい。(バッグから出す)これと、これと、
それからこれと‥‥。
山下 あ、これは物が入れられるこけしですね。
杉浦 ええ、台所に置いてブラシを入れたり
花瓶にしたり。かわいいんですよ、
こけしの頭にお花が咲いてる様子が(笑)。
‥‥あとこれと(バッグから出す)、これと、
それからこれと‥‥。
山下 ずいぶんたくさん‥‥あ、こちらは。
杉浦 伝統こけしです。
他にもおみやげこけしと創作こけし
という種類があるんですが、
私はこの伝統こけしが好きで。
両親の新婚旅行のおみやげもあるんですよ。
山下 ああ、それはたからものですねえ‥‥。
(しげしげ眺め)かわいいなあ。
いやあ、いいです、伝統こけし。
最初はかわいさがわからなかったのですが
ほぼ日の取材がきっかけで目覚めたんです。
こけしは、じつは、カワイイんですよね。
杉浦 はい。
ええと、私のこけしは以上です。
山下 あ、ありがとうございました。
‥‥‥‥‥‥それでは、僕のこけしを。
‥‥え、越後湯沢に行く機会がありまして、
生まれてはじめて大きなこけしを買いました。
いい雰囲気の創作こけしを見つけたのです。
そのこけしは、福田利之さんというかたに
プレゼントいたしました。
写真絵の取材でお世話になった、
フォト絵でおなじみの福田さんです。
東京への引っ越しのお祝いを、
僕が選んでみんなでプレゼントしたのです。
僕が紹介したいのは、そのこけしです。
で、ですね、みなさん、
きょうはなんと、福田利之さんが、
そのこけしを持って、この会場に
来てくださっている‥‥はずなのですが
遅刻しております!

そうだったのです。
サプライズゲストは福田さんだったのですが、
すこし前に福田さんから連絡があったのです。
「事務所の鍵が見つかりません!」と。
みなさんをサプライズさせるつもりが
僕らがサプライズさせられてしまいました。
しかも福田さんのこけしは、後半の進行で
重要なポイントとなる構成になっています。
こ、このままでは‥‥。
野田さんの流す、あぶら汗が見て取れます。
山下は明らかにそわそわしはじめています。
杉浦さんはわりと平然となさっています。
とにかく、それでも催しは進めなければ。
お客様に事情を正直に告げました。
あとはただ、親友の到着を信じるのみです!


山下 ‥‥ですので、僕からのこけし紹介は
福田さんがもしも間に合ったらということに
させていただきまして、とりあえずは、
次の部門に進ませていただきたいと思います。
杉浦 間に合うといいですね。
山下 は、はい、大丈夫です。きっと来ます‥‥。
では、最後の部門はこちらです。
山下 あえてテーマを決めず選んできたものを。
まずは、杉浦さんからですね。
杉浦 はい。
山下 こちら、画像の準備があったので
僕は拝見しているのですが‥‥すごいです。
画像、見てみましょうね。
客席 わぁぁぁ‥‥。
山下 ねえ、もう、かわいいですよね。
杉浦 実家で飼っていた犬で、
名前はももちゃんです。
山下 マルチーズ。
杉浦 ええ。この子が表情豊かな子で‥‥。
15歳で去年亡くなってしまったんですが、
私はもものブス顔写真を大事に持ってて、
つらいことがあったりすると見てるんですよ。
山下 そうですか‥‥。
杉浦 いつも母が毛をカットしてたんですが、
カットをさぼるとすぐ四角くなるんです。
こんなふうに。
山下 四角いですねえ(笑)。直方体です。
杉浦 一度だけトリマーさんにカットしてもらった
ことがあるんですが、こうなりました。
客席 (大きな笑い)
山下 細っ!(笑)
杉浦 あと、麗子像もあります。
山下 ああ、麗子像、岸田劉生の。
杉浦 これです。
客席 (大きな笑い)
杉浦 次のが最後ですね、
うちの父がももをかわいがってる様子。
山下 すごい一枚ですよね、次のは。
僕的にはもう、大好物な写真です。
みなさん、ご期待ください。
杉浦 これなんですけど。
客席 (大爆笑)
山下 (笑)すっごいなー。
杉浦 父は毎晩噛んでました。
山下 毎晩! ‥‥いやあ、あれですね、
ペットがいる家庭のおとうさんは、
みんなムツゴロウさんになるんですね。
杉浦 (笑)ねえ。
ももちゃんの写真は、以上です。
山下 ありがとうございました。
‥‥じつは、僕も動物にしました。
最前からここに、布をかけた箱があるので
すでにみなさんお気づきかと思いますが、
僕はやはりこれなのですね(スクリーン)。
杉浦 うさぎ。
山下 はい、ロップイヤーのパンクです。
さあ、パンクが渋谷の街に飛び出しますよー。
山下 よいしょっと(布をとる)。
客席 わぁぁぁ‥‥。
杉浦 きょとんとしてますね。
山下 何が何やらわからないのでしょう(笑)。

と、その時でした。
やわらかな空気に包まれた会場に、
ドアを開ける大きな音が響き渡ります。
ぜんいんの目が、いっせいにそちらへ。
廊下の照明を背に受け、男が立っています。
荒れた呼吸で大きく上下する、いかり肩。
そして、その手に握りしめられているのは、
こけしです、大きなこけしです。


山下 みなさん、ご紹介します!
イラストレータの福田利之さんです!
客席 わーーー!(われんばかりの拍手と爆笑)
福田 ‥‥す、すみません、鍵が、鍵があ‥‥。
山下 ありがとうございます福田さん、大丈夫です。
それより、ぜひ、ご挨拶をお願いします。
福田 ‥‥‥‥え?(一瞬で緊張)
山下 なにかひとこと。
福田 ‥‥‥‥え‥‥。う、うさぶろう。
山下 あ、卯三郎はそのこけしの名前ですね。
どうですか? 卯三郎は。
福田 ‥‥‥はい、ええと‥‥え?
山下 あ、ありがとうございます。
どうぞゆっくりたのしんでいってください。

よかったです。
信じていれば友だちはきっと来るのです!

これで、催しは無事進められることに。
「対決コーナー」が終わってから、
「動眼コーナー」でまた盛り上がると、
僕と杉浦さんそれぞれの視点での
「ほのぼのお花見レポート」などもご紹介。
各ポイントで卯三郎が話題にあがりました。
ほんとに、間に合ってよかったです。

こうして質疑応答を経て、
催しは無事エンディングになりました。

最後に、慌ただしい会場で撮影できなかった
卯三郎の画像をどうぞ。
福田さんの仕事場での卯三郎。
ちなみに卯三郎の命名は、
ほぼ日のシェフ武井さんです。


「としゆきさんは、走れメロスのようだ」



終始あたたかな空気に満ちたイベントでした。
お客様の目が、みなやさしい。
ご来場いただいた読者のみなさま、
ほんとうにありがとうございました。
またあのような時間をご一緒できるよう、
山下は一回一回の連載をがんばります。

ゲストにきてくださった杉浦さやかさんにも
この場を借りてお礼を。
心強かったです! ありがとうございました。
カワイイものの師匠・杉浦さやかさんは
愛らしいご本を多数出版なさっています。
こちら↓は最新刊の文庫本。ぜひ、チェックを!

催し終了後、拙著を持ってこられた方々に
うさぎハンコと署名をさせていただきました。

2005-05-13-FRI

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