山下 |
‥‥‥‥ええと、
周囲の視線が若干気になりますが‥‥。 |
北見 |
みなさんチラッとこちらを見てから、
サッと視線をはずす感じです。 |
山下 |
‥‥ともかく、パンダですね。 |
北見 |
はい、パンダです。 |
山下 |
ヌイグルミの。 |
北見 |
ええ、ヌイグルミの。 |
北見和義さん(独身)は、
サービス業系の会社にお勤めの35歳。
初夏を思わせる暑さのこの日、
北見さんはお住まいの江戸川区からわざわざ
西荻窪まで、たくさんのヌイグルミを抱えて
やってきてくださいました。
そうです、持ってきてくださったパンダは
この一匹だけではなかったのです。
暑い日に、大量のヌイグルミ‥‥。
汗をおかきになるのも無理からぬこと。
ひとつずつ、お話をうかがってまいりましょう。 |
|
山下 |
こちら、見た感じですと、
テディベアのようですが‥‥。 |
|
北見 |
そう、要はテディベアのパンダなんです。
|
山下
|
この手足がすごいですよね、リアルで。
|
|
北見
|
そこは樹脂でできてるんです。
|
山下
|
あ、樹脂ですか。
かちかちなので木製かと思いました。
この口の部分も?
|
|
北見
|
そうですね同じ樹脂です。
赤い鼻がチャームポイントですね。
|
山下
|
‥‥チャームポイント、はげているのは
これ、やっぱり、かわいらしくて
たくさんいじったからでしょうか。
|
北見
|
いや、最初からすこしはげてたんです、
‥‥ですが、そうですね、
だいぶいじったかもしれません(笑)。
|
山下
|
(笑)そうですか。
‥‥なるほどお、これは
テディベアなのですね‥‥。
|
北見
|
はい。もともとテディベアを集めてまして、
なかでもパンダのものは逃さず手に入れると、
そんな感じなんですよ。
|
山下 |
ということは、パンダ以外のテディベアも
たくさん持ってらっしゃる。 |
北見 |
ええと‥‥‥‥200ほど。 |
山下 |
に、200‥‥すごいですね。
‥‥‥‥あの、北見さん。 |
北見 |
はい? |
山下 |
失礼ですが、北見さんご自身も、その‥‥
お見かけ、クマさん系ですよね? |
北見 |
(笑)よく言われます。 |
山下 |
す、すみません、失礼なことを言って。 |
北見 |
いやいや、そういう体型ですから。 |
山下 |
クマさん系といっても「ひぐま」ではなく
やはりパンダっぽいです。ふくよかで。 |
北見 |
(笑)そうでしょうか。 |
山下 |
申し訳ありません、話がそれました。
ヌイグルミの話題に戻りましょう。
‥‥ええと、テディベアというと
ドイツのシュタイフ社が有名ですが、
これは違いますよね。 |
北見 |
はい、日本製です。 |
山下 |
日本製。 |
北見 |
集めているのは、
日本の作家さんのものだけなんです。
これは大塚勝俊さんというかたの作品ですね。
この子も(袋から出す)そうです。 |
|
山下 |
わ、小首かしげて! |
北見 |
ね、いいでしょ? |
山下 |
東急ハンズのエプロンして! |
北見 |
愛くるしいでしょ?
これも(袋から出す)大塚さんの作品です。 |
|
山下 |
‥‥いい表情ですねえ。 |
北見 |
ちいさめのパンダもあるんですよ、
ほら(山下の手にのせる)。 |
|
山下 |
わ、わ、わ。 |
北見 |
こういうのも(山下の手にのせる)。 |
|
山下 |
おお‥‥。 |
北見 |
こちらも(山下の手にのせる)。 |
|
山下 |
パンダーマン!
‥‥次々に出てきますね。 |
北見 |
まだあります(山下の手にのせる)。 |
|
山下 |
‥‥‥‥あー、こうして
てのひらに乗せる作業が僕は大好きです。 |
北見 |
いいですよね、ちいさいのは。
どこにでも連れていけますから。 |
山下 |
連れていきますか。 |
北見 |
ええ。 |
山下 |
どこへでも。 |
北見 |
はい。 |
山下 |
会社へも。 |
北見 |
カバンに入れて。
お昼休みに出して、ちょっと遊びます。 |
山下 |
すばらしい!
‥‥ええと、ここまで見せていただいたのは、
すべてその大塚さんというかたの作品ですね。 |
北見 |
はい。
もうひとり好きな作家さんがいらして
ミヤタケイコさんというかたで、
こういうのをつくられてます(山下に渡す)。 |
|
山下 |
‥‥‥‥インパクトありますねえ。 |
北見 |
上級者向けかもしれませんが。 |
山下 |
たしかに。一筋縄ではいかないパンダです。 |
北見 |
よーく、よーく見ていくと、
かわいいんです、これが。 |
山下 |
なるほどお‥‥。
それにしましても(テーブル上を眺め)、
なんと言いますか、北見さんのパンダは、
「パンダ具合」がいいですね。 |
北見 |
パンダ具合、ですか。 |
山下 |
はい、パンダ具合。
世の中にパンダ好きな人はたくさんいますし、
パンダのグッズもたくさんあります。
でも、ファンシーなものが多いですよね。 |
北見 |
そうかもしれませんね。 |
山下 |
北見さんのコレクションは
ファンシーすぎることがなくて、
でもやっぱりどれも愛くるしくて‥‥。
絶妙なのだと思うのです、パンダ具合が。 |
北見 |
ああ、ありがとうございます。 |
山下 |
つたない感想で恐縮です。
‥‥北見さんご自身は、この子たちの
どこにいちばんのかわいさを感じます? |
北見 |
それは‥‥‥‥笑ってるところ? |
山下 |
ほほう、笑ってるところですか。 |
北見 |
ほら、見てくださいこの口。 |
|
山下 |
あ、ほんとだ、笑ってる。
口角があがってるんですね。 |
北見 |
そうそう、口角があがってるんです。
ほら、この子も。 |
|
山下 |
あ、こっちの子もあがってます。 |
|
北見 |
‥‥‥‥助けられますよ、実際。 |
山下 |
助けられる? |
北見 |
疲れて帰ってきて部屋に入るとですね、
この子たちが200体、
こっちみて笑ってるんですよ。
そりゃあ元気になります。 |
山下 |
すばらしいです!
で、一緒に遊べば、
疲れはさらにふきとびますよね。 |
北見 |
はい! |
山下 |
どんなことして遊ぶんです? |
北見 |
「パンダの森」という遊びを。 |
山下 |
「パンダの森」、どんな遊びでしょう。 |
北見 |
ブライスというお人形がありますよね。 |
山下 |
ブライス、ありますね。 |
北見 |
まずブライスが遊びに来るんです、
宅配便で。おめかしして。 |
山下 |
ちょっと待ってください。
つまり、北見さんのお友だち‥‥
お友だちは女性ですか? |
北見 |
ええ、女子です。 |
山下 |
その女子のお友だちから
宅配便でブライスが送られてくる、と。 |
北見 |
はい。
それで、設定として僕の部屋は
パンダの家ということになっているんです。
そこに遊びに来たブライスが、パンダ一家と
いちにちたのしく生活をしていくわけです。
その様子を、僕が写真に撮る‥‥。
「パンダの森」とはそういう遊びです。 |
山下 |
すばらしい!!
フォトセッションですね、物語のある。 |
北見 |
じつはブライスも持ってきました!
(袋から出す) |
|
山下 |
うわあ、こちらもパンダですか! |
北見 |
こういう着ぐるみが売ってるんです。 |
山下 |
しかも北見さん、赤ちゃん抱っこしてます! |
北見 |
ちょっと待ってくださいね‥‥
これをとると(着ぐるみを脱がす)、
なかにも、ほら‥‥ |
|
山下 |
パンダがあ! |
北見 |
この洋服は友だちがつくってくれました。 |
山下 |
女子の。 |
北見 |
はい、女子の。 |
山下 |
北見さん、このテーブルの上にも、これ、
パンダが森のように並んでますよ。
せっかくですからブライスと一緒に
写真を撮りませんか。 |
北見 |
そうしましょう!
では、もう一度着ぐるみを着せますね。
よいしょ‥‥ん? あれ? ああもう! |
山下 |
あ、あせらなくて大丈夫ですよ。 |
北見 |
‥‥着せました!(並べる) |
山下 |
はい、では撮りまーす。 |
|
ふたり |
やったー(小さく拍手)。 |
山下 |
‥‥最後に北見さん、
このなかでいちばんお気に入りの子を
教えていただけますでしょうか。 |
北見 |
いちばんですか‥‥。
うーん、やっぱりこれですかねえ。 |
|
山下 |
あ、最初に見せていただいた。 |
北見 |
ええ、こいつはもう僕の分身ですから。
名前があるんですよ。 |
山下 |
な、なんていう名前ですか? |
北見 |
パパンダといいます。
この名前は僕のニックネームでもあるんです。 |
山下 |
北見さんも、パパンダなんですね!
ではパパンダふたりで写真を撮りましょう。 |
北見 |
はい(パパンダを手に取り)、
こんな感じでしょうか。 |
山下 |
いや、あのやはりさっきみたいな、
横抱きがいいと思うのですが、
赤ちゃん抱っこで。 |
北見 |
こうですか? |
山下 |
そうそうそう、それで!
じゃ、撮りまーす。 |
|
北見 |
よしよしよしよし(ゆする)。 |
山下 |
ああ、ほんとうに、分身なんですねえ‥‥。
|