山下 |
これが、フルーツに貼られていると‥‥。 |
吉本 |
そう、それはたしかシトラス系かな。
好きな1枚です、かわいくて。 |
山下 |
はあー(アルバムを見つつ)、驚きました。
フルーツシールって
こんなにいっぱい種類があるんですねえ。 |
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吉本 |
ええ、世界各地に。
多いのはスペイン、メキシコ、エクアドル、
あとはフロリダのオレンジとかですね。 |
吉本宏さん(既婚)は、
某アイスクリームメーカーで
企画開発のお仕事をなさっている40歳。
幼稚園に通うお嬢さんのパパでもあります。
ちなみに、この日の取材場所となったお店は
吉本さんのご指定でした。
「キルフェボン銀座」。
人気のタルト屋さんは女性客で大にぎわい。
男性はたぶん、僕たちふたりだけ。
オレンジ色の柔らかな照明が、
スーツ姿の吉本さんと山下をやさしく包みます。
お話、うかがってまいりましょう。 |
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山下 |
このアルバムが、また‥‥。 |
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吉本 |
切手を整理するスタンプブックですね。
友だちからもらったのですが、
神保町で見つけた古い物だそうです。 |
山下 |
そうですか‥‥。ではあらためまして、
中身を拝見させていただきます。 |
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吉本 |
最初のページなので、
とくに好きなのを集めています。 |
山下 |
ポップだなあ‥‥、きれいです。 |
吉本 |
グラフィカルでしょ?
そこが僕にとっては最大の魅力なんです。 |
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山下 |
あ、これは知ってます、ドール。 |
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吉本 |
給食の時このシールがついているバナナ、
奪い合いになりませんでした? |
山下 |
なりましたなりました、
なんだかとくべつ美味しそうにみえて(笑)。
しかし、吉本さん‥‥。
よくここまで集まりましたね。 |
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吉本 |
そうですね、すこしずつ。 |
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山下 |
どうやって手に入れるのですか? |
吉本 |
基本的には、買います、フルーツを。 |
山下 |
日本でも売ってますか? |
吉本 |
ありますよ、普通のスーパーでもよく探すと。
‥‥でも海外で買ったのが多いかな。 |
山下 |
海外にはよく行かれるんですか? |
吉本 |
いやそんなにはいきませんよ。
あ、そうそう、集めるコツがあるんです。 |
山下 |
コツですか。 |
吉本 |
それは人に言うことです、
「僕フルーツシール集めてます」って。
すると会社の人が海外出張なんかいくと
がんばって探してきてくれるんですよ。 |
山下 |
なるほどー。
‥‥いやはや、それにしても、
きれいに整理してますねえ。 |
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吉本 |
でもこれ、別に種類別に並べているとか
そういうわけではないんです。 |
山下 |
そうなんですか。 |
吉本 |
男性のコレクターって理路整然と分類したり
いろいろ分析したりするのが好きでしょう?
僕はあんまりそういう興味はないんです。
単純に、並んでる状態がうれしい‥‥。
その意味では女性的なんですかね。 |
山下 |
コンプリートを目指したりはしないんですね。 |
吉本 |
しないですねえ、
オークションなどで買うこともないですし。
出会ったものを集めていく感じです。 |
山下 |
それでも、こんなになっちゃったと。
‥‥20ページほどのこのアルバム、
最後のページはこれ、
もう、ぎゅうぎゅう詰めですね(笑)。 |
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吉本 |
ええ(笑)、結局そこにも入りきらなくて
ぜんぶで800枚くらいになってます。 |
山下 |
は、800枚! |
店の人 |
お待たせしました。栗のタルトと
季節のフルーツのタルトでございます。 |
山下 |
‥‥あ、季節のフルーツが僕です。 |
店の人 |
失礼します(タルトとコーヒーを置く)、
ごゆっくりどうぞ(去る)。 |
山下 |
‥‥おいしそうですね。 |
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吉本 |
いただきましょう。 |
山下 |
いただきましょう。
いただきながら、お話を聞かせてください。
‥‥集め始めたいきさつは、どのような? |
吉本 |
さかのぼること高校時代なんですけど、
まずこのボニータバナナという、
この1枚が僕のコレクション第1号なんです。 |
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山下 |
これとの出会いがきっかけですか。 |
吉本 |
はい、こんな小さな中にも
ちゃんとデザインがされていることに
素直に感動したんですね。 |
山下 |
それから集めだした。 |
吉本 |
ええ、バナナのシールなどを見つけては
ぽつぽつと手帳に貼ったり、
そういうことをちょっとずつやってました。 |
山下 |
そうですか、おひとりで。 |
吉本 |
そう、ひとりで。
でも、やがて決定的な出会いがあるんです。 |
山下 |
コレクション仲間に出会うのですか? |
吉本 |
ええ、80年代の終わり頃に知り合った
グラフィックデザイナーなんですけど、
フルーツシールを見せたら
すごく気に入ってくれたんですね。
それからお互い意識して集め出して‥‥。
あれは93年だったかな、
ふたりでヨーロッパまでいったんですよ。 |
山下 |
熱いですねえ(笑)。 |
吉本 |
当時28、青春ですよね(笑)。
早朝から市場や蚤の市をまわって、
夜になるとホテルの部屋で
シールを交換し合うんです、少年のように。 |
山下 |
少年のように(笑)。
‥‥そのかたとは今も仲良しで? |
吉本 |
ええ、相馬くんとはもう長い付き合いです。 |
山下 |
‥‥ん? ‥‥相馬さん?
グラフィックデザイナーのお友だちって、
もしかして相馬章宏さんのことですか? |
ちょっとした偶然でした。
吉本さんの親友の相馬さんは、
「カワイイもの好きな人々」の単行本を
デザインしてくれたかただったのです。
思いがけないつながりに
僕たちは少年のように盛り上がるのですが、
テーマをフルーツシールへと戻しましょう。 |
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山下 |
さて、吉本さん、
いちばんお好きなのはどのシールですか? |
吉本 |
‥‥それ、ぜったい聞かれると思って
昨日からずっと悩んでたんですよ(笑)。
ええと‥‥どうしよう‥‥これかなあ。 |
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山下 |
こちら。 |
吉本 |
バナナのシールなんですが、
カタチ、色合い、配色、レイアウト、
すべてにおいてフルーツシールの
基本をおさえている1枚です。 |
山下 |
なるほど、バナナの‥‥。
バナナに貼られた時の姿がよさそうですねえ。 |
吉本 |
‥‥あの、もう1枚いいですか? |
山下 |
え? ああ、はい(笑)、どれですか? |
吉本 |
これなんですが。 |
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山下 |
こちら。 |
吉本 |
相馬くんとヨーロッパで探したときの
思い出の1枚なので‥‥。 |
山下 |
ああ、それははずせませんよね(笑)。 |
吉本 |
山下さんは、どれがお好きですか? |
山下 |
僕は‥‥これかな。 |
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吉本 |
やはりかわいいやつが。 |
山下 |
ええ、これがリンゴなどに貼られているのを
手にしたら、かなりうれしいと思います。
‥‥それと僕ももう1枚。これも好きです。 |
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吉本 |
ほお、これですか |
山下 |
はがしにくいシールを
一生懸命はがした跡が残っている。
はがす吉本さんの様子が伝わってきて‥‥。
そこが好きです(笑)。 |
吉本 |
きれいにはがれないのもあるんですよ(笑)。 |
山下 |
あと、こういうのが気になるのですが‥‥。 |
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吉本 |
このタイプは、オレンジのシールですね。
これをオレンジに貼るとちょうど‥‥。 |
山下 |
あ、葉っぱ! これ葉っぱになるんだ! |
店の人 |
こちら、おさげいたしいます。 |
山下 |
ごちそうさまでした。
‥‥‥‥あ、あのお。 |
店の人 |
(素敵な笑顔で)なんでしょう? |
山下 |
お、お願いがあるのですが‥‥。 |
お店のかたのご好意で、僕らは
本物のオレンジを貸していただけることに。
吉本さんがシールをアルバムからはがします。 |
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吉本 |
‥‥(ゆっくりはがす)‥‥あ。 |
山下 |
どうしました? |
吉本 |
‥‥やぶれてきました。 |
山下 |
だ、大事なコレクションが‥‥。
もういいです、はがさないでください! |
吉本 |
いいんですいいんです(はがしている)。
‥‥よいしょ。はがれました。 |
山下 |
よれよれにしてしまいました‥‥。 |
吉本 |
せっかく山下さんが勇気を出して
本物のオレンジを借りたのですから。 |
山下 |
吉本さん‥‥。 |
吉本 |
べつにやぶけたってシールはシールですしね。 |
山下 |
吉本さん‥‥。 |
吉本 |
さあ、貼りましょう(貼る)。 |
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吉本 |
‥‥こいつ、まさかこうしてまた、
フルーツに貼られることになるなんて、
思っていなかっただろうなあ‥‥。
山下さん、ありがとうございました。 |
山下 |
吉本さん‥‥。
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