とある金曜日のお昼過ぎ。 梅雨の走りの曇り空の下。 代々木公園の真ん中の、広大な芝生ゾーン。 雨上がりということもあるのでしょう、 広場に人影はまばらです。 「あー、きもちいいですねえ」 藤本智士さん(32)は 穏やかな関西のイントネーションでそう言うと、 リュックからするりと赤い物体を取り出し、 僕に手渡すのでありました。
大阪にお住まいの藤本智士さん(妻子有り)は、 編集などのお仕事などをなさっている32歳。 この日、お仕事の打ち合わせで 東京へいらしていた藤本さんは、 旅のお荷物を抱えて 代々木公園までやってきてくださいました。 そんな藤本さんに座っていただくべく、 僕は持参したレジャーシートを広げます。
僕らはしばしのんびり、 たいへんおいしいほうじ茶と、 まあまあのお弁当をいただくのでありました。 公園のどこかで誰かが サックスの練習をする音が聞こえます。 鳥の鳴き声も聞こえます。 世間話やお仕事の話をするうちに、 僕らの時間はどんどん過ぎていきました。
それからまた、僕らは世間話に。 犬の散歩が5組ほど通りすぎました。 ヘリコプターが頭上を2度通過しました。 時間は流れます。
広い公園にしゃがみこむ、男ふたり。 しばらく無言で「幸せ」を探しました。 やがて、藤本さんが お仕事に向かわなければならない時刻に。 僕らはレジャーシートをたたみ、 露に湿ったクローバーの広場をてくてくと JR原宿駅へ向かって歩くのでありました。 「四つ葉のクローバーは 簡単にみつからないこそいいのだ」 そんな会話をぽつぽつ交わしながら。
2006-05-31-WED