7月末のよく晴れた昼下がり。 山梨県北杜市の、とある施設に僕はいます。 「あ、ほらそこにオスがいますよ」 清井義雄さん(54)は、 緑のなかにひるがえる紫の生物を やさしそうな笑顔で指さすのでありました。
この日僕は、私用で山梨県を訪れていました。 車を運転していて、ふと見つけた看板。 「北杜市オオムラサキセンター」。 オオムラサキといえば、子ども時代の憧れ。 昭和32年、日本の国蝶に指定された昆虫。 図鑑や切手に印刷されたその美しい姿を僕は 飽きることなく眺めていたものです。 迷わずセンターに立ち寄ってみると、 案内図に「生態観察施設」という文字が。 「ほんものに会えるかも‥‥」 この時点で僕は取材を決意していました。 国蝶を愛でる中高年男性が、 必ずやいらっしゃるに違いありませんから。 果たして、受け付け付近を見渡せば すばらしい笑顔でたたずむおじさまが1名。 それが、清井(せいい)義雄さんなのでした。 快く取材を受けてくださった清井さんは、 「生態観察施設」へと案内してくださいました。 それはこのような入り口です。 温室のような雰囲気の中を ゆっくり歩きながら、 お話をうかがってまいりましょう。
施設の奥へと、僕をいざなう清井さん。 清井さんはどうやら、 どのエノキにどれくらい幼虫がいるのかを おおむね把握しておられるようです。 しかし相手は生き物、移動もします。 かわいい顔とおっしゃるムーちゃんは、 なかなかみつかりません。
2006-08-23-WED