小林秀雄のあはれといふこと

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。


其の六拾四・・・・武道


「タァー!トゥー!」

トイレから凄まじい気合いが響いてくる。
北小岩くんが駆けつけると、
険しい表情で小林先生がドアを開けた。

北小岩 「先生、いかがなされましたか!」
小林 「いやな、先月から武道を始めたんや」
北小岩 「今の掛け声ですと、剣道ですか?」
小林 「それも考えた。
 だがな、日本には剣道よりも
 己自身の刀を用いた武道があった」
北小岩 「と申しますと」
小林 「それは『尿道』や!」
北小岩 「なんと!」
『尿道』は、剣道をさらに進化させた武道である。
口に小さな朝顔(壁掛け用ミニ便器)をぶら下げ、
全裸で行なわれる。
相手より先に、おしっこをかけた方が勝ちだ。
万が一朝顔にかけられると、
沙汰の限りとされ、
逆立ちして放尿しなければならない。
『尿道』の有段者は、『尿豪』と呼ばれる。
シンプルなだけに、奥が深い。
剣道の達人でも、
敵から襲われた場合に竹刀をもっていなければ
技を繰り出せないが、
『尿道』を体得しておけばすぐに応戦できるのだ。
小林 「試合場は、剣道場と同じ広さや。
 ただしその性質上、尿道場は屋外だがな。
 まず深々と礼をし、
 女性が股を洗った聖水と呼ばれる水を飲みほす。
 それがすんだら三歩前進して腰をおろし、
 互いのちんちんを軽く交えるんや。
 剣道ではそんきょと呼ばれるが、
 尿道では『けんきょ』と呼ばれる。
 ちんちんがうなだれて、謙虚な状態だからや」
北小岩 「武道の猛々しさだけでなく、
 華道や茶道に通じる慎み深さも
 持っているのですね」
小林 「そうやな。
 その後両者は5メートルほど離れ、
 審判の放水開始!の合図で試合が始まる。
 駆け引きが重要や。
 尿士にはいろいろなタイプがいる。
 長い距離を狙い打ちするスナイパー。
 すばやい動きでよけまくり、
 相手の尿力が弱まったところに襲いかかる反射型。
 また、ちんちんを太ももに挟み、
 女と見まがう美しい足を武器に
 相手を勃起させて翻弄するセクシータイプ。
 放尿する相手の背後に回り、
 背中を押して尿を止める頭脳派・・・」
北小岩 「確かに前を膨らませてしまうと、
 尿の出は極端に悪くなります。
 小便をしている時に後ろから強く押されると、
 しばらく止まってしまいます。
 これはかなり高度な技ですね。
 う〜む、戦略としては、
 試合前にできるだけ
 おしっこをためておいたほうが
 有利に感じますが」
小林 「だがな、以前こんなこともあった。
 試合直前に小雨が降り、
 開始が1時間遅れた。
 膀胱がぱんぱんになるまで
 張り詰めてさせていた選手が、
 思わずもらしてしまった。
 その後天気が回復し、
 ほとんど放水できずに完敗したんや」
北小岩 「なるほど。
 曇天の時には、膀胱との対話が必要ですね。
 誤って審判にかかってしまう事はありませんか?」
小林 「あるな。
 野球の場合、審判にボールが当たって
 イレギュラーしても、
 石ころに当たったものとみなされる。
 『尿道』の場合、尿がかかった審判は
 便器にみなされるんや」
北小岩 「そうですか。
 審判にとっても過酷な武道です。
 ところで、『尿道』はどのように、
 修行をするのですか」
小林 「基本は小便を我慢しながら、
 括約筋を締めたり緩ませたりすることやな。
 俺は3分を1セットにして、
 1日20セットはこなしている。
 ハードにトレーニングしているので、
 近頃は括約筋が筋肉痛になっとるわ。
 どうだ、北小岩。
 お前も一緒に尿の道を極めんか?」
北小岩 「いっ、いえ。わたくしは・・・」
小林 「何を遠慮しとる。
 ちょうどいい、来週昇級試験なんや。
 練習相手になってくれ。ほないくで」
北小岩 「先生、やめてください!
 あ〜〜〜!!!!」

小林先生は、まだ尿道10級の白帯だ。
強さが一目でわかるように、帯はちんちんに巻く。
3年後には初段を取り、
「尿道一直線」というドラマを作って
主役になろうと目論んでいる。
だが、そんなものを作ったところで、
便器の足しにもならないであろう。

2002-01-24-THU

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