小林秀雄のあはれといふこと

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。


其の七拾九・・・レシピ

「こんにちは。お邪魔します」
近頃、小林秀雄先生の家を
深刻な顔つきをした若者たちが頻繁に訪れる。
今日もこれで四人目だ。。

小林 「・・・。君も、その、ナニかいな」
若者A 「はいそうなんです。
 申し訳ありませんが、見てください」
若者は頬を赤らめ、ズボンとパンツを同時に下ろした。


「先生、おちんちんの部分に急須がついております!
 おまけにその急須から、
 熱いお茶を出しました!!
 いったいこれは
 どういうことなんでしょう!!!」

驚きのあまり、
弟子の北小岩くんが素っ頓狂な声をあげた。
小林 「いやな、ここ20年近く
 神様が忘れっぽくなってしまったようなんや」
北小岩 「と申しますと?」
小林 「この世の中でちんちんの作り方・・・。
 つまり、ちんちんのレシピをご存知なのは、
 神様1人だけや。
 ところが神様がその重要なレシピを
 ど忘れすることが多くなってな。
 それでこのように
 珍妙なちんちんを持った若者が
 増えてしまってるんや」
北小岩 「コカ・コーラのレシピを知っているのは
 世界で数人だけで、
 それは金庫の中に
 厳重に保管されているという話を
 聞いたことがあります。
 確かにおちんちんを作れるのは
 神様だけでしょう。
 その神様1人の頭の中だけにしかない
 レシピを忘れてしまわれるとあらば、
 これからの男の存亡にかかわってきます」
小林 「その通りや。
 この若者は普通のちんちんではなく、
 股間に急須がついてしまった。
 ヘソで茶を沸かすという言い回しがあるが、
 彼は望んでもいないのに
 サオで茶を沸かす男になってしまったんやな」
若者A 「笑いは取れますが、
 女性とうまく関係することができないのです。
 無理に関係しても、
 フィニッシュで女性の大切な所に
 お茶を注いでしまうことになるでしょう」
小林 「神様も罪なお方やな。
 彼だけやないで。
 午前中に来た若者は、
 急所に遮断機がついておった。
 もし彼女ができても、
 コトに及ぼうとしたとたん
 遮断機が下りてしまい
 それ以上先には進めないんや」
「ドンドン、ドンドン」

玄関の戸をたたく音がした。
先生と北小岩くんが駆けつけると、
目に涙を浮かべた若者が立っていた。
小林 「どうせまた、ちんぽのことやろ。
 しゃあない、見せてみい」
北小岩くんが目を見張った。
若者の股間には、なんとドアノブがついていたのだ。
若者B 「ノブを回すと、
 この部分を開けることができます。
 女性と交わることはできませんが、
 中に金庫のようなものがついているので
 結構重宝しています」
小林 「まあ、普通のちんちんを
 行使するばかりが人生やない。
 実用的でええやないか」
若者B 「僕には彼女がいますが、
 プラトニックラブです。
 ここを開けていいのは
 この世で彼女だけと決めました。
 彼女がこの扉を開けてくれる日のために、
 中に彼女との思い出の品を
 しまっておいたのです」
小林 「好きでもない女とヤリまくっているバカどもより、
 何万倍もロマンチックやないか」
若者B 「でも、二人だけの大切な思い出が
 盗まれてしまったのです。
 そうこうするうち、
 彼女にもフラれてしまいました」
北小岩 「鍵をかけ忘れたのですか?」
若者B 「いえ。
 神様が手を抜いて
 安物の錠をつけてしまったせいで、
 寝ている間に
 ピッキング強盗にやられてしまったのです」
北小岩 「ああ、神様・・・。
 せめてシリンダー錠をつけてくだされば、
 この方が二重の苦しみを味わわずに
 済んだのに・・・。
 ところで先生は
 こんなに深い悲しみに包まれた若者たちに、
 何をしてさしあげるのですか?」


小林先生は仏様のような笑みを浮かべ、
二人の若者の肩を慈しみをこめてたたくと、
ふすまの陰で自分のちんちんを開陳した。

「ぷぷっ!」
「でへへへへ!」

小林先生のモノのあまりの粗品ぶりに耐え切れず、
若者たちは吹き出した。
彼らの表情は見る見る明るくなり、
別人のように生気にあふれている。

「先生、どうもありがとうございました!」
「うむ」

神様がレシピ通りにつくったノーマルなおちんちんでも、
とんでもなく粗悪なものがあることを知った若者たちは、
自信をつけて帰っていった。
先生の自らのプライドをかなぐり捨てた
ちんちん被害者救済方法は高く評価されるべきだろう。

だが、先生のあわれなちんちんを
悲劇のちんちんの持ち主に見せて安心させたところで、
根本的な解決にはならないだろう。
神様が記憶をしっかり取り戻し、
これからはレシピに基づいた
立派なおちんちんを作り続けてくださることを
願ってやまない。

2003-01-24-FRI

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