小林秀雄のあはれといふこと

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。


其の八拾参・・・刑事

「どや、北小岩。
 たまには社会科見学にでもいってみよか」

小林先生は弟子の北小岩くんを連れて、
町はずれにある警察署に出かけた。
小学生よりも大人にこそ社会科見学が必要である、
というのが先生の持論である。
左曲がり署という看板を掲げた門を入っていくと、
刑事らしき人たちが小林先生に向かって
にこやかにあいさつしてくる。

小林 「あれはイチモツデカやな」
北小岩 「イチモツデカさん?」
小林 「彼は股間のモノが異様にデカいため、
 みんなから『イチモツ刑事(デカ)』と
 呼ばれとるんや」
北小岩 「凛々しいニックネームですね。
 先生は随分刑事さんに
 知り合いが多いようですが、
 何か警察にツテでもあるのですか?」
小林 「ああ、実はな」
小林先生は有事の際に
懇意にしている刑事がいた方がよいと考え、
自分で買ったエロ本を道で拾ったといっては
警察に届けている。
先生はエロ本の目利きであるため、
最特上のブツが毎週届くことになる。
もちろん落とし主は現れないので、
届け出の翌日から6ヶ月14日後には
無事に先生のもとに戻ってくるのだ。
その間、刑事たちはハイレベルのエロをマン喫できるので、
左曲がり署刑事ととても仲がよいのである。
小林 「俺の友だちの刑事は凄腕ばかりやで。
 あそこで大人のおもちゃの通販カタログを
 凝視しているのがペッサリー刑事や。
 命を狙われているVIPがおるやろ。
 スナイパーが構えたら、
 VIPにすばやく
 特殊プラスチック製のドームを被せて
 守るんや。
 地面との隙間には
 防弾ゼリーを塗って固定させるので、
 どんなマシンガンで狙われても大丈夫。
 それで彼は何人もの命を救ってきた」
北小岩 「大技の使い手ですね。
 ところでわたくし、幼少の頃より
 『太陽にほえろ』のジーパン刑事に
 憧れてまいりました。
 あのようにクールでいかした刑事は
 いらっしゃらないのですか」
小林 「それならヤツやな。
 ヤツは見かけも愛称も
 ジーパン刑事に酷似している。
 夏でもデニムのコートでキメている。
 逮捕の現場で犯人が向かってくるやろ。
 銃をくるくる回しながら
 コートをがばっと開くんや。
 すると下半身はすっぽんぽん。
 つまりノーパンや。
 犯人はあきれて棒立ちとなる。
 そこを捕まえるんやな。
 ヤツは親しみを込めて
 ノーパン刑事と呼ばれとるんや」
北小岩 「・・・」
向こうで知り合いのふぐり刑事が手招きをした。
取調室の前である。
先生と北小岩くんが近づくと中から声がもれてきた。
親子丼刑事 「なあ、この写真を見てみな。
 母娘の写真だが
 なかなかいいくびれしてるだろ。
 俺はこの母娘ともども
 味わったことがあるんだぜ。
 まあ、いうなれば親子丼だな。
 カツ丼よりもずっといい味だ。
 正直に話したら、
 この母娘を紹介しなくもないぜ」
よく刑事ドラマで被疑者にカツ丼をごちそうして
自白に持っていくが、
この署ではカツ丼ではなく
親子丼で自白させようというのだ。
小林 「なるほどな。ええ社会勉強になるな」
北小岩 「はい」
小林 「それじゃあ、そろそろ帰ろうか」
署を出てしばらく歩き信号待ちしていると、
先生の横をどどめ色のクルマが通り過ぎた。
助手席で誰かが手を振っている。
小林 「ほう、覆面パトカーやな。
 あれはバイブレーター刑事やないか。
 どうやら前の女を尾行しとるようや」
その時だった。
女は猛ダッシュをかけると角を左に曲がった。
バイブレーター刑事はすかさずサイレンを出し、
ルーフの上に装着した。
サイレンは1メートル以上あるおちんちんの形をしている。
サイレン音が鳴り出すと、歩行者の動きが止まった。
悩ましい女のよがり声で
「イ〜ク〜イ〜ク〜」と大音響を轟かせ、
ちんちん型サイレンは
バイブレーターのようにいやらしくくねりだした。
50メートル走ったところで、
女は顔を上気させ逃走を断念した。

小林 「さすがバイブレーターはんや。
 犯人は恥ずかしさに耐え切れず
 逃走心を失ったんや。
 あんなもんに一生追いかけられるぐらいなら、
 捕まったほうがまだましやからな」



左曲がり署刑事たちは
青少年に悪影響を与えるということで、
一部のお母さん方から追放運動が起きているという。
だが、彼らの検挙率は全国でも群を抜いているのだ。
彼らは手淫を趣味としているため、
自慰メンとも呼ばれている。
実際の刑事たちは
『太陽にほえろ』や『Gメン’75』のように、
カッコよくはいかないものなのである。

2003-03-06-THU

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