北小岩 |
「先生、お帰りなさい。
この学生はわたくしのいとこです。
彼は今、深い悲しみに包まれております。
先生もどうかご一緒に、
彼の話に耳を傾けてください!」 |
小林 |
「君が手にしているのは糸電話やな。
受話器が破れているようや。
それが悲しみのとば口なんやろ。
泣くのはそれくらいにして、
話してみんかい」 |
学生 |
「ボクは幼稚園時代に
2軒隣りに住んでいる
御又満子(おまたまんこ)ちゃんに
初恋しました。
彼女はとてもモテましたが、
隣家の落賃湖次郎(おちんこじろう)
というヤツと争い
勝利をおさめたのです。
その後彼女は女子小に、
ボクは男子小に進み
交流は途絶えてしまいました。
ところが数週間前、
女子大生となった
満子ちゃんと道で再会し、
ほのかな交際が始まりました」 |
小林 |
「えらくロマンチックやないか」 |
北小岩 |
「二人とも二十歳ですが、
性体験がありませんでした。
極端に奥手なので
交際は糸電話から始めたそうです」 |
学生 |
「毎日、会話でデートを楽しみました。
満子ちゃんは
糸電話の糸を赤く塗ってくれました。
ボクは
やっぱりこの人が
運命の人なのだと感激し、
卒業したら結婚しようと心に誓いました」 |
小林 |
「それにしても
口も吸いあわず乳繰りあいもせず、
糸電話だけでよく我慢できたな。
ほんまにピュアなんやな」 |
北小岩 |
「そうとも言い切れないようです。
いとこは時々紙コップに
おちんちんをあてがい、
彼女の声をそこで受けて
振動を楽しんでいたようですから」 |
|
|
小林 |
「えらく遠まわしな間接フェラやな」 |
学生は頬を赤らめうつむいた。
|
小林 |
「まあええ。
それがどないして、
赤い糸がこんがらがっちまったんかい?」 |
学生 |
「ある日突然、
糸電話の受信状態が
おかしくなってしまったのです。
満子ちゃんの声が
だんだんと聞き取れなくなりました」 |
小林 |
「受話器が壊れたんか?」 |
学生 |
「いえ、違います。
ボクたちを結ぶ赤い糸は、
一部が落賃湖家の敷地を
通過していました。
そのため糸の真ん中で
落賃湖が引き込み線を
引いてしまったのです。
ボクたちの会話は盗聴されました。
そしてある日電話は不通になったのです」 |
小林 |
「ヤツが君たちの赤い糸を切ったんやな」 |
学生 |
「糸は以前より
弛めになっていたものの、
切れてはいないようでした。
ボクは自分が満子ちゃんに
何か傷つくことを言ってしまい、
へそを曲げて応答しなくなったのだと思い
受話器に向かって必死にあやまりました。
そして、何度も何度も愛している!
と叫びました。
しかし、返事はありませんでした。
ボクは勇気を奮って
糸を辿っていきました。
すると糸の先端が
犬のフンにつながれていたのです」 |
小林 |
「なんと!
君は糞に向かって愛していると
甘い言葉を投げかけていたんかい。
それは屈辱よりも数段上の辱めや。
もはや『屈辱』ではなく、
『糞辱』(くそじょく)や!!!」 |
|
|
学生 |
「ボクの糸を切って
フンとドッキングさせたのは落賃湖です。
ヤツは満子ちゃん側の糸と
ヤツの糸を結び、
満子ちゃんと
会話するようになってしまったのです。
二人はねんごろになり、
関係を結んだようでした。
ボクはショックで寝込みました。
しかし、昨晩ボクの部屋の窓に
糸電話の受話器が置かれていたのです。
満子ちゃんが
ボクのもとへ戻ってくれたのだと思い、
勇んで耳を当てました。
転瞬、ボクは凍りつきました。
それは二人の当て付けでした。
糸電話から流れてきたのは、
落賃湖と交わり恍惚となった
満子ちゃんのよがり声だったのです」 |
小林 |
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 |