小林秀雄のあはれといふこと

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。


其の九拾・・・防犯


「んっ、戸が開いてるで。お前、ちゃんと閉めたんか?」
「ええ、確かに。
 あっ、錠がこじ開けられています!
 これはピッキングされたに違いありません!!」

小林先生と弟子の北小岩くんが
レンタルビデオ屋に洋物のエロビデオを借りに
出かけた隙に、空き巣に入られたのだ。  

小林 「ない!
 命と等しく大切にしとった
 トレーシー・ローズはんの
 裏ビデオ全10巻を盗まれた!!」
北小岩 「先生ご愛用の裏本も
 すべて持ち去られています!
 警察に通報いたしましょうか?」
小林 「まあ待て。
 金銭などには手をつけられとらん。
 もっとも家には69円しかなかったがな。
 盗まれたものは
 どちらかといえば非合法なものばかりや。
 ここはぐっとこらえるしかなさそうやな」
北小岩 「それにしても悔しいですね」
小林 「これからは
 しっかりガードを固めなあかんな。
 強力な防犯態勢をしいて、
 泥棒どもにひと泡吹かせたろ」
先生と北小岩くんは、
町はずれにある防犯用品店
「チンガード」の暖簾をくぐった。
ここには泥棒に知られていない最新防犯グッズが
陳列されているのだ。
小林 「家の錠がピッキングされて
 宝物を盗まれてしもうたんや。
 泥棒の野郎が腰抜かすような
 強力なグッズはないかいな」
チンガード店主 「それは災難でしたね。
 ウチは世界広しといえども
 ここにしかない用品を
 いくつも取り揃えております。
 こちらはいかがでしょうか」
小林 「防犯カメラやな」
チン
ガード
店主
「違います。
 カメラの形をしておりますが
 映写機なのです。
 犯人が近づくと
 壁にブルーフィルムが上映される
 仕掛けとなっております。
 犯人が鑑賞し終わった頃には
 すっかり犯罪意欲を失ってしまいます」
北小岩 「やや心もとない気がいたしますね。
 他にはいかがですか」
チン
ガード
店主
「防犯用オルガスムスブザーはいかがですか。
 窓ガラスに
 処女膜状の薄いフィルムを貼ります。
 それが破られると
 100ホーンの超大音量で
 女性のあえぎ声が流れます。
 声は2種類。
 外人バージョンが
 『オーイェイ! アイムカミング!!』
 の繰り返し、
 日本人バージョンが
 『イク!イク!!
  ああ、いっぱい出して!!!』
 になっております。
 近頃は近隣の無関心化が進んでおり、
 普通の警報ブザーでは
 注目してくれませんが、
 これならばっちりです!」
小林 「なるほどな。
 だが今回は
 ピッキングにしてやられたわけやから、
 強烈な錠がほしいわな」
店主はうなずくと、
店の奥から色っぽい女性の顔がついた
不思議なものを出してきた。
チン
ガード
店主
「これは見かけはセクシーですが、
 『チン実の口』という
 大変恐ろしい錠なのです。
 ローマの休日に登場した
 真実の口をヒントに作られました。
 この口におちんちんを登録します。
 登録された男が挿入し
 ピストン運動を行なうと開錠します。
 ですが、もしそれ以外の人が
 おちんちんを入れると、
 鋭い歯でイチモツが
 食いちぎられてしまうのです。
 どんなに腕のいい泥棒も、
 これを破ることは不可能です」
先生と北小岩くんは思わず息を飲んだ。
小林 「うむ。これぞ世界最強の錠やな。
 ひとつもらおうか」
チンガード店主 「マンどあり〜〜〜〜」
翌日店主は先生宅を訪れ、
チン実の口を表玄関に取り付け帰っていった。
先生は満面に笑みを浮かべている。
小林 「これで泥棒どももお手上げやろ。
 無理にちんちんを入れて
 こじ開けようとしたが最後、
 己自身を失うことになるんやからな。
 そや、一度試しておかなあかんな」
先生はちんちんを登録しチン実の口を作動させた。
ズボンとパンツを同時に下ろすと
イチモツをこじ入れ行きつ戻りつ。
思いの他気持ちがいい。カリッ。
しばらくすると錠の開く音がした。
小林 「えっ、ええやないか!」
 
小林先生が恍惚の表情を浮かべたその時だった。
通行人から
「ワイセツな泥棒がいる」との通報で
急行した警官に両腕をつかまれた。
警官 「そこで何をしているんだ」
小林 「自宅の錠を開けとるんですわ」
警官 「ウソつけ。
 なぜ錠を開けるのに
 性器を露出する必要があるんだ。
 その粗末なものが鍵とでも言うつもりか。
 署まで来てもらおうか」

小林先生はパンツを下げたままの体勢で
連行されてしまった。
天を向いた秘所にはボロ布がかけられている。
失笑する野次馬に混ざって
一部始終を見物していた泥棒の目が光った。
泥棒は先生宅の鍵が開いていることを見逃さなかった。
難なく侵入すると
先生が新たに大枚をはたいて買った
長瀬愛と及川奈央の裏DVDをバッグに入れ、
さりげなく裏口から退出した。

嫌疑をはらして帰宅した先生が、
失ったものの大きさに気づき
激しく取り乱したことは言うまでもない。
今回の被害は警察の不手際によるものだが、
盗まれたものが前回同様
非合法であるため訴え出ることはできなかった。
泥棒の意表をつく防犯対策を施すことは重要である。
だが、その場合にも
市井の人々に誤解を与えないものを選択することも、
また大切なことかもしれませんね。

2003-05-16-FRI

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