小林 |
「イロエロ気持ちのええことが待っていて、
終わった後に
自分でふきふきするのかもしれんな」 |
浅はかな二人の股間は早くも角度をつけている。
年甲斐もなくアトラクションまでダッシュ。
ゲートの脇に小さな小屋があり、
中に看護婦姿の若い女がいた。
女にパンツを下ろされたので
特殊なサービスを期待していたら、
巨大な浣腸を打ち込まれた。
ここはディズニーランドのような夢の世界ではなく、
トイレや排泄などを超体験する
悪夢のテーマパーク『トイレットランド』だったのだ。
浣腸された師弟は透明の和式便器型観覧車に乗せられた。
頂点に来ると観覧車は停止、
便意を誘発する音波が流れてきた。
シートベルトがいやな具合にお腹を締め付ける。
猛烈な便意に急襲されたが逃げ場はない。
粗相するまで上空で捨て置かれたままなのだ。 |
小林 |
「すまん、北小岩。
俺はもうあかん。
弟子の前で糞を漏らすなど
師匠として論外やが堪忍や!」 |
北小岩 |
「何をおっしゃられますか。
しらばっくれておりましたが、
わたくしはすでに漏らしております!」 |
二人の糞の匂いをセンサーが感知し、観覧車が動き出した。
多くの見物人が見守る中、
まぬけな格好で尻をふき地上に降りた。 |
小林 |
「いい年こいて人前で脱糞してしまったが、
なぜか爽快感に包まれとる。
不思議なこちゃ。
だが、この先へ進むのは
ちょいと恐ろしいわな。
んっ? あれは何や?」 |
使用済みのトイレットペーパーを片付けていた
白衣の男性係員に問うてみた。 |
係員 |
「『失禁コースター』ですね。
カップルが水を
2リットル以上飲まされた後、
利尿剤が投与されます。
おしっこを限界まで我慢させられた状態で
ジェットコースターに乗り込みます。
たいてい女性が頬を上気させながら
先に失禁しますね。
それが艶っぽくて何ともいえません。
そのアトラクションが終わると、
女は『ビデシューター』という
別のマシンに移動します。
失禁した女性の秘所にむかって、
彼氏が陸地から強力水鉄砲ビデで放水し
汚れを落とすのです」 |
女性 |
「早く私のカラダをキレイにして!」 |
恋人の前でおもらしし取り乱した女が懇願する声が轟いた。
ビデを発射する彼氏には、
2メートルの便所虫が便所汁をかけて妨害してくる。
男は巨大な便所虫と格闘しながら、
愛する人の秘所のために命がけで放水し続けるのだ。 |
係員 |
「こみ上げてくるものに二人で耐え、
カラダを震わせながら失禁することで
運命共同体的な深い絆ができ、
そのまま結婚に至るカップルもままあります。
それに、例えば深刻な悩みを持った人が
乗車した場合でも、
みんなで失禁したり漏糞したりすると
瞬時に憂さが吹き飛んでしまうのです」 |
この他にもトイレット遊園地には、
肛門にほどよい刺激が加えられ
思わずプップッと屁をこきながら回転してしまう
『放屁木馬(別名屁リーゴーラウンド)』や、
家族がチームとなり冒険しながら
ウンコを垂らして家族愛を深める
『アド便チャーファミリー』、
さまざまな野生動物が船に向かって
本気で糞を投げてくる
『ジャングソ・クルーズ』など
多彩なアトラクションが目白押しだ。 |
小林 |
「とはいえ、俺たちには
あまり意味のないものばかりやな。
今日のところは引き上げようか」 |
小林先生が入口から出ようとすると、係員が制止した。
強盗がナイフを突きつけるように
顔に使いたてほやほやの便所たわしを押しつけられ
身動きできない。 |
係員 |
「だめですよ。
ここを通らなければ外には出られません」 |
小林
北小岩 |
「あっ!!!!!!!!」 |
それを見た先生と北小岩くんの背筋が凍りついた。
まさにアトラクションの最終兵器。
巨大な肥溜めの表面を
水ぐもで渡ってゆかねばならないのだ。
挑戦者をフォローするものは何もなく、
己の実力のみで対岸まで辿り着かねばならない。
もちろん失敗すれば
怪しく気泡を浮かべる肥溜めにドボンチョだ。 |
小林 |
「しゃあない。北小岩、覚悟はええか」 |
北小岩 |
「・・・はい」 |
二人は水ぐもで偉大なる一歩を踏み出した。
だが、忍者でもないのにそんな芸当ができるはずもなく、
三歩目でむなしく汚辱の沼へと沈んで行った。
汚物が顔を襲撃する寸前、
係員がバキュームカーのホースで吸い取る。
糞嵩が減り、顔没による窒息を免れた。 |
係員 |
「武士の情けです。
さあ、こちらに来てください」 |
二人とも泣きべそをかきながら係員に誘導された。
そこには洋式便器型の巨大なプールがあった。
はしごを上り放心状態で二人は飛び込んだ。
その時、10メートルある大魔神ロボットが
コックを下ろし、物凄い勢いで水が噴出した。
先生と北小岩くんは錐もみ状態で流されていった。
下水は園外につながっており、
そこから投げ出された。
あまりの水流に、二人のカラダはキレイに洗われていた。 |
小林 |
「ふう、無事生きて出られたようやな。
今日1日で100年分の体験をしたな。
屈辱まみれではあったが、
今となってみれば
人間として一皮むけたような気がする」 |
北小岩 |
「まったくです」 |
清里の牧場で深呼吸でもしているような
清々しい表情の先生と弟子だったが、
匂いまでが容易に消えるわけではない。
さも達観したようなことをのたまっているものの、
冷静になって考えてみれば
そんな発言にはなんの説得力もない。
そもそも『トイレットランド』のアトラクションなどという
くだらないものでは、
人間の成長など望むべくもないのである。 |