小林秀雄のあはれといふこと

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。


其の九拾九・・・応援

「フレー、フレー、わたくし〜〜〜!」
庭に学ラン姿で自分にエールを送る男が立っている。
何事かと思い小林先生が近づくと、
その男は弟子の北小岩くんだった。
小林 「なんや、北小岩か。
 いったいどないしたんや?」
北小岩 「実はわたくし、
 学生時代に応援団に憧れておりました。
 入団寸前までいったのですが、
 他の部からヘッドハンティングされ
 そちらに入部してしまったのです」
小林 「それは何部や?」
北小岩 「みの虫部です。
 みの虫部というのは、
 色紙を使ってミノガを育てたり、
 枯葉や小枝を貼り付けた
 大きな蓑を木にぶら下げ、
 その中で数週間過ごして
 みの虫と同じ気持ちになってみたりする
 という部なのでした」
小林 「何だかえらい地味やな。
 つまり応援団に入り損ねたので、
 青春に悔いを残してしまったというわけやな。
 まあ、今ちょうど学園祭のシーズンやし、
 団部の活躍でも観に行ってみるかいな」
先生と北小岩くんは、
電車に揺られて隣町の大学へ向かった。
ここはバンカラな学生が多く、
応援団も日本有数といわれている。
北小岩 「すみません。
 応援団の勇姿を拝見しようと
 考えておりますが、
 今どちらの運動部を
 応援されているのでしょうか?」
学生 「うちの学校の応援団は、
 運動部は応援しませんよ。
 文化系の部活動が主なんです。
 たぶん女子料理部や
 華道部、茶道部あたりを
 応援しているんじゃないかな」
何だか釈然としないが、
とにかく料理部をのぞいてみることにした。
そこでは名門女子大との
恒例の料理交流戦が行なわれていた。
今回の課題は『鯖のばってら』であった。
決戦の火蓋がきられると、
母校女子料理部の後方に陣取った応援団が
パンツを脱いだ。
北小岩 「先生、応援団の方々が
 薄い昆布をかぶせたおちんちんを、
 シャリの上に載せています!」
小林 「それにしても、
 随分ちんちんが変色しているな」
先生が怪訝な顔をしていると、
隣にいた事情に詳しい学生が解説してくれた。
事情に
詳しい学生
「実は応援団は、
 昨日から血のにじむような努力をして
 今日に臨んだのです。
 ちんちんに砂糖をまぶして2時間、
 次に塩をたっぷりまぶして
 14時間そのままにしておきました。
 それからちんちんを酢に1時間ほどひたし、
 昆布・ちんちん・寿司飯の順で形をつくり、
 氷を使って締めてきたのです」
北小岩 「なんと!
 文化部を応援するために、
 そこまでカラダを張るとは!!」
小林 「よく見てみい。
 陰毛を綺麗に剃りあげて、
 その部分にガリまで添えてあるで」
団員の陰部が変色するのも当然である。
だが、その命がけともいえる応援に女子部も感激し、
俄然勢いに乗った。
逆に相手校部員は圧倒され、
大勝利をおさめることができた。
小林 「たいしたもんやな。
 これは侮れん。
 他部への応援も観てみるとするか」
先生と北小岩くんは華道部を目指した。
そこでは菊を生けあう対抗戦が行なわれていた。
生けた菊のつぼみが先に開いた方が勝ちなのだ。
しんとした室内に、
先ほどの文化系応援団がなだれ込んできた。
団長の
「そ〜れ、我が大学女子華道部の菊満開〜〜〜!!」
という掛け声にあわせ、
団長と団員は再びパンツを下ろすと、
両足で相撲のしこを踏む体勢をとった。
それからお尻の穴にあらん限りの力を込め、
肛門の菊を全開にした。
団長と団員は華道部の学生に片思いをしている。
彼女たちを勝たせるために、
決死の覚悟で肛門を開き続けたのだ。
緊迫の時が流れる。
いつの間にか三時間が経過していた。
北小岩 「あっ、こちらの菊のつぼみが開き始めました」
大輪の菊が花を開かせると
審査員が勝利を宣告し、
華道部員は涙を流して喜んだ。
その刹那、団長や団員の菊から何かが飛び出した。

北小岩 「あっ、みんな力を振り絞りすぎて
 脱糞してしまいました!」
小林 「う〜む。
 正直言って俺は
 文化系の応援団と聞いてナメておった。
 それは完全に間違いや。
 見事な応援っぷりやった。
 ちんちんの機能を失ったり、
 片思いの女性の前で
 脱糞し絶縁されるリスクを冒してまで
 彼らは応援に賭けた。
 これは生半可な男にできることやないで!」
北小岩くんの両手の握りこぶしに力が入る。
小林 「今まで応援団と言えば
 野球をメインに運動部を応援するものと
 考えられてきた。
 だが、時代は確実に変わった。
 これからの応援団は、
 文化系の応援が主体になっていくやろな」

北小岩くんの目が輝いた。
彼は学生時代に果たせなかった夢を、
文化系の応援団となって果たそうと希望に燃えている。
だが常識的に考えて、
そんなことをしても会場からつまみ出されるか、
警察に通報されてしょっ引かれるのが関の山であろう。


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2003-10-19-SUN

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