小林 |
「ついにお前にも来たか。
まあ、やっと一人前の男として
認められたというこっちゃ。心配するな」 |
封書の表には、ぱっくりと口を開けた
いやらしい貝の透かしが入っている。 |
北小岩 |
「おっしゃる意味がよく分からないのですが?」 |
小林 |
「差出人を見てみい」 |
北小岩 |
「日本国性税務署と書かれております」 |
小林 |
「つまりやな、
それは性に関する申告の督促なんやな。
一般に『桃色申告』と呼ばれているものや。
男の場合、小便をする以外に
用いられるちんちんは、
奢侈品とみなされ使用頻度に応じて
税金が課されるんや。
お前は今まで回数が少なすぎたから
大目に見られてきたが、
今年からきちんと申告せんと
痛い目にあうで」 |
北小岩 |
「わたくし、青色申告と白色申告は
聞いたことがありますが、
『桃色申告』と言うのは初耳でした」 |
小林 |
「甘いな。
俺なんかはちんちんが
一本では賄いきれないほど
おなご衆に人気やろ。
だから毎年多額の性金(せいきん)を払っとる。
まあ、いわゆるチン高額納税者やな」 |
生まれてから一度も女にモテたことのない小林先生が、
チンの高額納税者であろうはずはない。
実際は毎年納税免除になっているのである。 |
北小岩 |
「どのように申告すればよろしいのですか?」 |
小林 |
「コトに及ぶ時は、
1回1回のピストン回数や所要時間、
発射の回数、そして相手が
お前のプレイに対してどう感じたかまで、
詳細に記録しておかねばならん。
それを基にちんちんの貸借対照表や
損益計算書をつくり、決算報告書にまとめて
性税務署に提出するんやな。
女性がどう感じたかはかなり重要やで。
満足させていれば控除の対象となるんや」 |
北小岩 |
「でも、それは限りなく自己申告に
近いものですから、
インチキができてしまうのではないですか?」 |
小林 |
「性の税務署の方々は
下半身にかけてはプロ中のプロや。
ウソの申告などすぐに見破ってしまう。
そうなったらマル査ならぬペニ査を派遣され、
ちんちんの減り具合まで
とことん調べ尽くされてしまうや」 |
素人目には分からないが、ちんちんは1回ごとに
ほんの少しずつ磨り減っているらしい。
睾丸がどの程度の衝撃を受けたかも、
プロが見れば一目瞭然である。
それでも非を認めない場合には、
ちんちんにウソ発見器を装着されてしまう。
ウソをつくたびにちんちんが汗をかき脈が乱れるので、
それを見逃さずに発見器は容赦なく
ギリギリと締め付けてくる。
早目に真実を述べないと、一生後悔することとなる。 |
小林 |
「重大な申告漏れをしている場合は、
税務署に金玉使用の権利をとられ、
以後は税務署から借りて
使用しなければならなくなる。
これを借金という。
さらに悪質な脱税をしている場合、
追徴金として金玉を抜かれて
持って行かれてしまう。
これを物納と呼ぶ」 |
北小岩 |
「ひぇ〜〜〜。恐ろしいことでございます。
ところでもしもコトに及んで
発射に至らなかったら、
それはどう見なされるのですか?」 |
小林 |
「そこまでの過程で快感を得ているので
益と見なされ、みなし課税がかかるやろな。
避妊具やゼリーなどの補助用具は
必要経費として認められるから、
きちんと申告しといたほうがええで。
俺が税理士にかわってチェックしてやるから、
ちょいと今年の使用回数を書き出してみい」 |
北小岩くんは必死になって今年の性体験の記憶を遡った。
正直に綴っていると、先生の目がカッと見開かれた。
先生の申告する回数より5倍も多かったのである。
このところ、北小岩くんの純朴さが
年上女性の母性本能をくすぐり、
なかなかいい思いをしているようなのだ。 |
小林 |
「このまま行くと来年はお前の下半身には
多額の税が課されてしまうわな。
下半身の税金は累チン課税制度となっているので、
ある回数を超えると
急激に税額が膨らんでしまうんや。
そうならないように、
お前に言い寄る女がいたら、
遠慮なく俺に相談しなさい。
俺の方は課税の曲線が厳しくなるまで
まだまだ余裕があるから、
相手をしてやらんでもないで。
それが賢い税金対策というもんやろっ!
なっ!!」 |
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