小林 |
「例の件ですが、
よろしかったら僕にも
紹介していただけませんか?」 |
毘酢頓 |
「いいよ」 |
北小岩 |
「どなたを紹介していただくのですか?」
先生が相好をくずしたのを見て、
ほうじ茶と都こんぶをお盆に載せて
入ってきた弟子の北小岩くんが訊ねた。 |
小林 |
「ペースメーカーやな」 |
北小岩 |
「毘酢頓さんは実業団で活躍され、
今も市民マラソンのスーパースターと
うかがっております。
ですのでレースの際に
ペースメーカーは必要でしょう。
ということは、
先生もマラソン大会に出場されるのですか?」 |
小林 |
「早とちりしてもらっちゃ困るで。
俺がお願いしたのは、
マラソンのペースメーカーやなくて、
SEXのペースメーカーや」 |
北小岩 |
「なんと!」 |
毘酢頓 |
「そうなんだよ。
マラソンの場合は
みんなが勝負にこだわるあまり
相手を警戒して、
ペースが上がらないから
ペースメーカーを導入するけれど、
SEXではみんな早くイッてしまい
相手から罵られることを警戒して、
序盤にピストン運動のペースを
上げきれないんだ」 |
小林 |
「だからSEXも適正な速度で
引っ張ってくれる選手が必要なんやな。
そもそもSEXというのは
誰かに学ぶことがないから、
どのくらいのペース配分で
ピストン運動するのが
ええんか基準がようわからん。
AVビデオにあわせようとしても
男優らは凡人の域を
はるかに超えたイチモツ者なんで、
あまり参考にはならん」 |
北小岩 |
「なるほど。
確かにそうですね。
ところで毘酢頓さんの
お知り合いのペースメーカーは、
どのような方なのですか?」 |
毘酢頓 |
「日本色情競技連盟が紹介してくれた
ロシア人なんだよ」 |
北小岩 |
「日本陸上競技連盟というのは
聞いたことがありますが、
そのような団体があったとは存じませんでした。
その方はどのようにサポートするのですか?」 |
毘酢頓 |
「コトに及ぼうとするだろ。
するとその選手は全裸になり
背中にゼッケン69を貼る。
それから俺たちの横1メートル
やや前方で四つんばいになり、
ゆっくりゆっくり腰を動かし始めるんだな。
その動きにあわせて俺もピストン運動を開始する」 |
|
小林 |
「ペースメーカーと同じ速度で
行きつ戻りつすればええから、
ひと突きひと突きに集中できるんや」 |
毘酢頓 |
「思ったよりもハイペースで
先導されたりするんだけど、
自分ひとりで完走するより
確実にハイレベルのプレイを展開できるね。
給水が必要な時には途中で彼が
スポーツドリンクを手渡してくれる」 |
北小岩 |
「至れり尽くせりですね」 |
毘酢頓 |
「最終的にゴールするのは俺一人なんだけど、
回を重ねるごとに持続時間が伸びている。
以前だったらペースオーバーで
短時間でレースを終えてしまったり、
ゆっくり走りすぎて
リタイアしてしまうことも多かったけどね。
終わったあとにはお互いの健闘を称えあい、
睾丸をグーにしてハイタッチするんだ。
もっともグーにしなくても、
睾丸はグーのような形だけど。
彼はロシア人なのに
英語で『グッド・ジョブ!』といってくれるよ。
妻もいい腰の走りをしていたと褒めてくれるし、
第三者が介在することで
マンネリを打破できると喜んでいる」 |
|
小林 |
「だから俺もペースメーカーを入れて、
キレイどころと
快楽のピストンマラソンを楽しもうと、
まあそういうこっちゃな」 |