小林 |
「いやな、久しぶりに
レンタルビデオ屋で
AV以外のビデオを借りてみたんや。
そしたら、思いのほか感動巨編でな。
恥ずかしながら、
目頭が熱くなってしもうたんや」 |
北小岩くんがタイトルをチェックすると、
そこには『怪獣の思春期』と書かれていた。
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北小岩 |
「わたくしも拝見して
よろしいでしょうか?」 |
小林 |
「そやな。
俺ももう一度観ときたいしな」 |
そのビデオは、火山での怪獣の出産シーンから始まった。
以前の怪獣は産卵していたが、
どうやら哺乳類に進化したらしく、
母怪獣は赤ちゃんを産んだ。
怪獣はすくすく成長し東京に現れた。
新宿副都心の高層ビルを片っ端から壊して歩く。
科学警備隊が戦闘機を出動させミサイルを発射するが、
まったく効果はない。
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北小岩 |
「哺乳類になっても、
見かけは今までの怪獣と
変わりませんね。
それにやっぱり大きくなると、
建物を破壊してしまうのですね」 |
小林 |
「まあそう言わんと、
これからの展開に注目や」 |
東京の危機を目の当たりにした
中学生のモロダシ・ダンくんがついに変身する。
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街の人々 |
「あっ、ウルトラチンだ!」
「お願いだ。
早く怪獣を倒してくれ!!」 |
ちんちんがでかいから
ウルトラチンと呼ばれているのではない。
彼はまだ童貞なため、マンの味を知らない。
だからウルトラマンになりきれずに、
ウルトラチンと呼ばれているのだ。
怪獣との戦闘経験も少ないので技もいまいちだ。
パンチを繰り出そうとして高速道路につまずき、
怪獣の胸をむんずと掴んでしまった。
怪獣は恥ずかしそうに胸を押さえた。
どうやら女の子らしい。
パンチが効いたと勘違いした
ウルトラチンがキックするが、
つま先で怪獣の秘所を蹴ってしまった。
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街の人々 |
「あっ、股間から血が流れた!」 |
それはキックによる出血ではなかった。
哺乳類に進化したので、
お年頃になり初潮が始まったのだ。
まだケツの青いウルトラチンも
さすがにそのことに気づいたようだ。
だが、毛が生えたばかりの
童貞野郎になすすべはない。
怪獣は恥ずかしがって泣き出してしまった。
その時だった、東京中の女子中学生たちが
立ち上がったのだ。
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女子中学生A |
「あの怪獣は
私たちの町を破壊したわ。
でも、私たちは同年代だから
今の彼女の悲しみがよくわかる」 |
女子中学生B |
「みんな、それぞれの学校に行って
マットを体育館から
運んでくるのよ!」 |
彼女たちはマットを抱えて代々木公園に集合。
それをタコ糸と針金でつなぎ、
一枚の大きな布にした。
片側の表面を切り綿を露出させる。
巨大なナプキンの出来上がりだ。
しかし、怪獣は泣いたまま。
人間の力では
それを陰部にあてがうことはできない。
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女子中学生A |
「あんた、でかい図体して
何さっきから突っ立てるのよ」 |
女子中学生B |
「そうよ。
ちょっとは手伝ったらどうなの。
いくら童貞だからって、
これをどうすればいいかぐらい
わかるでしょ」 |
ウルトラチン |
「でっ、でも・・・」
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女子中学生A |
「そんな根性無しで
正義の味方面するなよ。
女の子一人救えないぐらいなら
やめちまいな」 |
そこまで言われたら、
ウルトラチンも引き下がれない。
彼は巨大ナプキンを持つと、
それを怪獣の股間にあてた。
そのままもう片方の手で彼女の体を支え、
すかさず飛び立つ。
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ウルトラチン |
「ジョワッチョ!」 |
ウルトラチンは女のそこに触れるのは
初めてだったので、
股間がもっこりしてしまい
飛んだ瞬間に精通した。
だが、それを笑うものは誰もいなかった。
そのまま彼女をお母さんのもとに送り届けた。
感謝したお母さん怪獣は、
これからはもう何も破壊しないと約束した。
その後、怪獣の女の子と彼は恋に落ちた。
女を知ったウルトラチンは
その蔑称を返上し、
誰もが認めるたくましきウルトラマンとなった。
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北小岩 |
「くうぅ・・・。
すばらしいお話でございます!」 |
小林 |
「そうやろ。
この世知辛い世の中に、
こんなに心のあたたまる話が
残っていたとはな」
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