小林秀雄のあはれといふこと

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。


其の百拾七・・・少年


「随分げっそりしとるやないか。大丈夫か」

目の下の隈が痛々しい弟子を、小林先生が思いやった。

北小岩 「わたくし、
 暑い日にはキュウリしか
 食べられなくなってしまうのです。
 今夏は部屋の扇風機が壊れてしまい、
 暑さでほとんど読書もできませんでした。
 このところだいぶ涼しく
 なってまいりましたので、
 何とか持ち直しました。
 秋に向けて勉学に勤しみたいと思います。
 何かよい本をお教え願えますか」
小林 「そうやな。
 どれほどの滋養になるかはわからんが、
 先日読んだ本には尻毛を抜かれたな」
北小岩 「どのようなジャンルでございますか」
小林 「ノンフィクションやな。
 お前は狼少女の話は知っとるか」
北小岩 「はい。1920年に
 インドの山中で見つかった
 2人の少女ですね。
 狼に育てられ
 たため野性的になっておりました。
 牧師夫妻のところで育てられたのでしたね」
小林 「うむ。
 その話を読んだ時もかなりの衝撃を受けた。
 だが、先日読了した事実は
 それを軽く超えるものやった」
北小岩 「と申しますと」
小林 「狼少女から遡る20年ほど前、
 インドの下ツキ洞窟でちんちんに
 育てられた男児が発見された。
 いうなれば『おちんちん少年』や!」

北小岩 「なんと! インドの山中には
 巨大化した陰茎が住んでいたと
 人づてに聞いたことがありますが、
 まさかイチモツに育てられた
 子供がいたとは・・・」
小林 「狼少女はアマラとカマラと
 名付けられたが、『おちんちん少年』は
 マラと呼ばれた。
 インドのマンジーという僧侶に
 養育されたそうや」
北小岩 「う〜む。思わずうなってしまいます。
 少年は人間に育てられた子供と
 どのような違いがみられたのですか」
小林 「直立歩行は困難になっていたそうや。
 動きは前後のピストンだけ。
 頭から前に進んだと思っても、
 すぐに後ろに戻ってしまうんやな。
 佳境に至るとかなりの速度で
 行きつ戻りつしていたらしい」
北小岩 「やはり一度おちんちんとしての
 習性が身につくと、
 なかなか戻ることはできないのですね」
小林 「一番顕著なのが、
 興奮するとカラダ全体が大きくなり
 角度をつけてしまうことやな。
 おちんちん少年は
 かなり長生きしたらしいから、
 さすがに40代後半からは
 膨らむ回数も減り、
 10代では90度近くを誇った角度が
 地面と水平のところまで
 落ちこんどったようやが」
北小岩 「お若い時分は朝も
 大変だったのではないでしょうか。
 言語はいかがでしたか。
 カマラは4年たっても
 数語しか習得できなかったそうですが」
小林 「マラの方が優秀やな。
 彼は1年目にはすでに有意義な言葉を
 口にしたからな。
 切ない表情で
 『先っぽだけでいいから』と
 女性に懇願しとったらしいで」

北小岩 「なかなか侮れませんね」
小林 「穴があればとにかく入ろうとする。
 その姿勢は俺たちも見習わなあかんな」

アマラは発見後1年で亡くなり、
カマラは9年後まで生きたという。
マラは69歳でその生涯を閉じた。
山の中でおちんちんとして
一生を過ごすのがよかったのか、
人間の教育を受け社会的に生きるのがよかったのか、
学者の間でも意見が分かれている。

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2004-08-29-SUN

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