小林秀雄のあはれといふこと

しみじみした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。


其の百弐拾七・・・粉



北小岩 「ああ、目がくしゅしゅして
 まいりました。
 鼻水も止まりません。
 これ以上先へは進めません」
北小岩くん
の彼女
「またなの!
 このところ毎回じゃないのよ。
 もういいわ!!!」
北小岩 「待ってください!
 もう一回チャンスを‥‥」
バタン!
北小岩 「行ってしまいました‥‥」
翌朝弟子の北小岩くんは、
先生の書斎前で、失禁したサラリーマンのように
ぼーっと立っていた。
小林 「どうした北小岩、
 尻子玉抜かれた顔して。
 何かあったんか」
北小岩 「実はわたくし、
 昨夜彼女と
 コトに及ぼうといたしまして」
先生の額に青筋が踊った。
生まれてから一度もモテたことがない先生は、
誰かが女性と気持ちいい思いをしたと聞くと、
つい臨戦モードに入ってしまうのだ。
小林 「お前、俺にケンカ売ろうっていうんか」
北小岩 「めっそうもございません。
 その先を聞いてください。
 パンティに手をかけようとして
 顔を近づけると‥‥」
先生の口は裂け、般若の形相になっている。

北小岩 「くしゃみがでたり、涙目になったり。
 自分でも制御不能になって、
 それ以上できないのです。
 実はわたくしだけでなく、
 知り合いのプレイボーイ氏も
 同じ症状が出てしまい、
 ナンパに成功しても
 パンティでジ・エンドと
 嘆いております」
先生の表情に変化が起きた。
天使の微笑をたたえ、
口調もやさしいお母さんのようになった。
小林 「そうか。そうか。
 ついに完成させたんやな」
北小岩 「原因をご存知なのですか?」
小林 「まあな。ほな、行ってみるか」
二人は鈍行停車を乗り継ぎ、
四方を山に囲まれた無人駅で下りた。
そこからさらに徒歩で2時間山道を登る。
北小岩 「ここはもしかすると、
 杉花粉の産地として有名な場所では
 ございませんか?」
小林 「ほほう、なかなか鋭くなったな。
 おっ、やつの家が見えた」
茅葺き屋根には大きな穴が開き、
障子はほとんどが破れている。
そばには枯れ井戸があった。
小林 「いるか!」
力強く開けると、戸はそのまま音を立てて倒れた。
小林 「山に入っているようやな。
 実はな、俺の親友で
 俺以上にモテない男がおる。
 こいつがついに
 『パ粉』の開発に成功したんや」
北小岩 「パ粉?」
小林 「パンティを細かく細か〜〜〜〜〜〜〜く
 粒子にしたもんや。
 それをスギ花粉の粒子にくっつけ、
 花粉といっしょに飛ばす。
 全国津々浦々にや。
 吸い込んだヤツの体中には、
 パンティに対する抗体ができてしまう。
 そのため顔を近づけただけで
 過敏反応が起こる。
 いうなれば、パンティアレルギーや。
 一度かかってしまったが最後、
 それ以上いい思いができなくなる。
 パ粉は使用済みパンティの粉を使い、
 男だけがアレルギーになるように
 工夫されている」


先生&親友は、
身につけたパンティを拝む機会が皆無なため、
何の影響もない。
親友 「あれ、小林じゃないか」
小林 「おお、元気やったか。
 お前、でかしたぞ!
 よくやった。よくやった」

親友が山道を転がってきた。
二人は熱く抱擁し、
落涙しながら何度もうなずきあう。
何のことはない。
それによって自分がモテるようになるわけでもなく、
モテるヤツに対する極度の嫌がらせなのだ。

それにしてもそんなことのために、
20年間も山にこもり研究を重ねて来た男とは。
また、その悪行ともいえる偉業を
心の底から喜んでいる男とは。
日本政府は早急に花粉症を撲滅するとともに、
パ粉全国制覇を企てるこのバカどもも滅ぼさねば、
少子化にますます拍車がかかってしまうことであろう。

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2005-05-01-THU

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