小林 |
「はい、小林です。
ほほう、少々お待ちくださいな。
北小岩、電話やで!」 |
北小岩 |
「どなたからでしょうか」 |
小林 |
「若い女からや」 |
先生宅に妙齢の女性から電話が掛かることなどない。
会話に耳を澄ましてみよう。 |
北小岩 |
「先日はあのような場所で、
とんだ粗相をいたしまして‥‥。
いえいえ、大変申し訳ございません。
お互い様? それは違います。
わたくしは単に見苦しく、
あなたは神々しい限り。
荘厳でさえありました。
えっ、そっ、そんな。
照れてしまいます。
ではまたその時に、ゆっくりと」 |
ふにゃ〜。
北小岩くんの鼻の下は伸びきり、
そこに受話器を掛けておけそうなほどである。
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小林 |
「向こうで女が
『チュッ!』とキスした音、
聞き逃さなかったで。
なぜ俺より格下のおまえばかりが、
ええ思いをするんや。
ズバッと白状してみんかい!!」 |
北小岩 |
「はい。3日ほど前のことなのです。
古本の掘り出し物を見つけるため、
朝一番で市へと向かいました。
途中で尿意をもよおしたため、
公衆トイレを探したのです。
不思議なことに、
記憶にはない場所に
トイレの看板がかかっておりました。
三百円払って、
通路を奥に進むようになっています。
高いとは思いましたが、
膀胱に腹は変えられぬ状態でしたので」 |
それが女性とどう関係するのだろうか。 |
北小岩 |
「ところがそこから
大変複雑な迷路になっていまして、
行けども行けども
肝心のトイレには着かないのです。
諦めて出ようとしたのですが、
道がわからなくなりました。
まるで樹海です。
出るに出られず
気がつくと同じ所を
ぐるぐる回っておりました」 |
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小林 |
「そこで女と出会ったわけやな」 |
北小岩 |
「そうなのです。
数十人が同時に
迷っていたようなのですが、
その女性とは何度も何度も会いました。
妙な共同意識が芽生えるものですね。
その日が初対面だったのですが、
何度目かの出会いで
『あなたの後を
着いていってもいいかしら?』
と言われたのです」 |
小林 |
「ほほう」 |
北小岩 |
「2時間ほどたった頃でしょうか。
彼女の歩き方が極端な内股になり、
顔が上気してまいりました。
小声で『もうだめ!』と。
わたくしの膀胱および括約筋は
いささか余裕を残していたのですが、
先に失禁させて
恥をかかせるわけには参りません。
彼女がお漏らしする前に、
ズボンをはいたまま
大量放水いたしました。
そして言ったのです。
『すみません。
粗相してしまいました。
もう何も恥ずかしがることは
ありませんよ。
我慢するとカラダに毒ですからね』
と。
彼女はこくりとうなずき、
わたくしに身をあずけると、
目を閉じて失禁いたしました。
なぜかわからないのですが、
粗相をしたら
トイレまでの道が開けました。
そこには着替え用の紙製の下着が
置いてあって」 |
小林 |
「なるほどな。
極限状態を共有すると、
男女は一時的に
深い恋愛状態に陥ってしまうんや。
ええこと聞いたわ。
さあ、今からそこに
案内してもらおうやないか」 |
己の魅力で
女性をゲットできない小林先生は、
卑劣にもその状況を利用しようとした。
入口で三百円払い、目をぎらつかせながら入場。
だが3時間以上たっても、誰からも声をかけられない。
業を煮やし、自から行動に出た。 |
小林 |
「すんまへん。
なかなかたどり着けなくて、
とても不安なんやけど‥‥。
一緒に行ってもかまへんか?」 |
女性は乗り気ではなさそうだったが、
一人で探すよりはマシと思ったのであろう。
しぶしぶ承知した。
それから30分後、
彼女のがんばりも終焉の時を迎えようとしていた。
先生はしめた! との思いをひた隠した。 |
小林 |
「女性に恥をかかせるわけにはいきまへん。
まずは僕が」 |
先生は尿用の括約筋を開こうとしたのだが、
思わず肛門筋が緩み、脱糞してしまった。 |
女性 |
「くっ、くさ〜〜〜い。
あんたどういうつもりなのよ!」 |
小林 |
「あなたに恥をかかせないように」 |
女性 |
「何わけのわからないこと、
言ってるのよ。
汚らわしい。あっち行け!」
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