北小岩 |
「はい、小林家です。
えっ?
そっ、それは大変でございます。
先生〜〜〜!!」 |
小林 |
「なんと!」 |
二人は全力疾走した。
視界は涙でぼやけている。 |
北小岩 |
「ここです!」 |
先生が無言でうなずく。
隣町にある小さな病院。
階段を駆け上がり、69号室に飛び込んだ。 |
小林 |
「大大師匠は!!」 |
医師 |
「あと1時間がヤマでしょう」 |
大大師匠というのは、
小林先生の師匠のまた師匠のそのまた師匠である。
名は股割好左ェ門(またわれすきざえもん)。
今年、108歳を迎える。
この世に生を受けると同時に、
産婆助手の若い女子(おなご)の秘所を
まさぐろうとしたという伝説を持つ助平人だ。
その後、睾丸の美少年として活躍。
年を経るごとに助平味にダシをきかせ、
今では女子衆に
何をしても笑ってすまされる域にまで達している。
小林先生も
いつかはこのような老助平人になりたいと思っている。
その愛すべき股割翁が、死の淵に立たされているのだ。 |
小林 |
「院長先生、お願いや。
大大師匠ほど
愛らしいエッチ人はおらんのや」 |
院長先生 |
「あらゆる手はつくしました」 |
小林 |
「いや、まだや。
大大師匠の鼻の下が伸びとる。
ここが勝負の分かれ目や。
今、師は三途の川を渡ろうとしておる。
向こう岸には、
裸の女たちが手招きしとるはずや」 |
院長先生 |
「そうでしょうか?」 |
|
小林 |
「間違いないで。
大大師匠の手を見てみい。
震えながらも
ゆっくり股間をまさぐっとる。
彼岸には今まで師が愛した女性が
勢ぞろいやな。
蜜なる思い出に誘われているに
違いない。
危険や。
向こう岸に渡らせたら一巻の終わり。
それを阻止するためには、
この世におれば
もっと気持ちのええもんがあると
分からせる以外にない。
あんた方の出番やで」 |
先生があんた方と呼んだのは、
心配そうに覗き込んでいた
股割氏のガールフレンドたちである。
一様にパンツの見えそうな
ミニスカートをはいている。
股割氏は108歳になった今も、
若いガールフレンドたちを
いじくったりしているらしい。
小林先生が女の子に耳打ちする。
女の子は顔を赤らめたが、こくんとうなずいた。 |
小林 |
「院長先生、
これからは来世のエロと現世のエロの
真剣勝負や!」 |
女の子の一人が股割氏の手をとり、
服の上から胸を握らせた。
翁の目尻の皺が揺れる。 |
小林 |
「甘いな。
あの世のエロをなめたらあかんで。
思い出のエロは、
ひたすらやさしく心地ええんや。
ゆりかごみたいなエロや。
それでは勝てん」 |
先生に促され、もう一人の女の子は
翁の手をスカートの中へ導いた。 |
小林 |
「ここから先は女の子たちだけにして、
みなさんにも
席をはずしていただきまひょ。
僕はもちろん、
陣頭指揮をとるため残りますが」 |
ガールフレンドたちは
全裸で肉布団となり、翁をあたためた。
自分の持てる技をみだらなまでに駆使し、
三途の川をさ迷っている大大師匠を
こちらにたぐり寄せる。
1時間が経過した頃。 |
股割 |
「うっ、う〜ん」 |
小林 |
「大大師匠!!」 |
股割 |
「ああ、おまえか。
実は川の向こうに
裸体の女子がぎょうさんおってな。
も少しで渡りきるところやったが、
途中でやわらかくて
トロっとした感触がしてな。
こっちの方が
ウハウハナな思いができそうだから、
途中で引き返してきたんじゃ」
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