小林秀雄のあはれといふこと

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の百参拾参・・・専用


北小岩 「ふぅ〜、酔っ払いましたね」
小林 「そやな。このところの暑さで、
 金の玉も
 蒸したてイカシュウマイのように
 なっておる。
 ビアホールにでも繰り出さにゃ、
 やってられんわな」
北小岩 「まったくその通りでございます。
 んっ、あの人だかりは
 なんでございましょうか?」
帰宅のため乗ろうとした電車最後尾車両前が、
胸をはだけたセクシー女性で溢れているのだった。
北小岩 「へんですねえ。
 今の時間は
 女性専用車両のはずなのに、
 男しか乗っていません」
小林 「う〜む、女たちの目がとろんとして、
 視線が通常より
 下方に集中しているようや。
 お嬢さん、これはいったいなんや?」
セクシー
お嬢さん
「0時発の電車だけ、
 女性専用車両が
 『巨根専用車両』になるんだよ」
小林 「なんと!」
ミニスカ
OL
「見て御覧よ、車内のイケチンたちを。
 ズボンの上からでも
 あれほどのシルエットを
 誇っているよ。
 なんか私、
 ジュワッとしてきたみたい」
女たちは出発前に品定めをしておき、
お気に入りのキングサイズが下車した駅で降りて、
そのまま腕を組み、
夜のしじまに消えていくのだという。
小林 「そうだったんか。
 それなら当然、俺もこの車両に
 乗る権利があるわな。
 君は隣りの凡チン車両で
 たってなさい」
北小岩 「おっ、お待ちください!」
小林先生の粗品ぶりを銭湯で
何度も目の当たりにしている愛弟子は、
捨て身で行く手を阻んだ。
小林 「おう、文句あるんか!」
師の形相が悪鬼に変化(へんげ)していた。
こうなったら説得は不可能だ。
悪鬼は胸と股間を張り、
車内にずんと乗り込んでいったが、
体が先っぽだけ入るとすぐに、
一番手前の男に制止されてしまった。
巨根野郎 「ちょっと待てよ。
 確かにここは自己申告制だけど、
 誰もが入って
 いいわけじゃないんだよ。
 矮小なモノが混ざってたら、
 俺たちのステイタスが
 下がっちまうだろ」
小林 「僕のはあなたのと比べても、
 何の遜色もないと思うがね」
巨根野郎は先生のベルトを持ち上げ、
ズボン前方に浮き上がったシルエットを確認した。
巨根野郎 「よくもそんな粗末なもので、
 入ってこれたな。
 あんた、もしかして宦官?
 あははははは!」
先生の頬は、屈辱のあまり
紅潮を通り越しドドメ色になった。

『リリリリリ!!!』

発車のベルが鳴る。
先生は憎悪の馬力を出して抵抗したが、
あえなく押し出されてしまった。
だが、降ろされる間際に巨根野郎の
ふんぞりかえった股間を引っ張った。
野郎の体がイチモツを突き出す形でぐらついた時、
ドアがギロチンのように閉まった。
巨根野郎 「うおぉぉぉぉ〜〜〜!!!!!」


野郎の黄金バットはワールドクラスであったため、
その部分だけがドアに挟まり外に出た。

「キャー!」

ホームに残っていた女性から悲鳴があがる。
先生はドアに近づき、
挟まれているイチモツを必死に押し込んだ。
北小岩 「さすが先生です。
 耐えがたき辱めを受けながらも、
 武士の情けで‥‥」
北小岩くんの瞼は熱きもので洪水となっている。
しかし、それが真実なのだろうか。
異常を感じた車掌がドアを開けると、
巨根野郎は泡を吹いて倒れていた。
実は先生は如意棒を押し込むフリをして、
そこに何度も鋭利な手刀と突きを
打ち込んでいたのだった。

食べ物の恨みは恐ろしいという。
だが、イチモツの恨みの方がさらに恐ろしい。
あはれなチン宝の所有者を、
生半可な気持ちで揶揄することは、
どんな場合でも避けたほうが己自身のためであろう。

小林秀雄さんへの激励や感想などは、
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2005-08-12-FRI

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