北小岩 |
「急に冷え込んでまいりましたね。
秋に美しい音色を
競い合っていた虫たちも、
すっかり沈黙してしまいました」 |
小林 |
「冬は虫たちの休息の時やからな」
|
北小岩 |
「一人ぼっちの季節です。
虫の中でも特にわたくしは、
夏の夜、儚げな光を放ちながら
飛び交う蛍を愛して止みません」 |
小林 |
「夏もええけど、冬を彩る蛍もええで」 |
北小岩 |
「そのような種がいらっしゃるのですか!
風流です。
ぜひ、お目にかからせてください!」 |
鈍行電車に揺られ108分。
ここには清涼な流れが残り、
日が暮れると同時に、
蛍たちが光の競演にいそしむという。
夜空に一番星が光る頃。 |
北小岩 |
「あっ、橋のたもとに
ほのかな明かりが!」 |
小林 |
「目ん玉どば〜と見開いて、
よ〜く見てみい」 |
北小岩 |
「ほっ、蛍ではありません。
人影です。
それも股間が発光しているようです」 |
小林 |
「イチモツを光らせた野郎は
ゲンチンボタル、
秘所を輝かせたおなごは
マンジボタルと呼ばれるんや」 |
|
北小岩 |
「どういうことですか?」 |
小林 |
「あの橋はまぐわい橋といってな、
若い肉体を求めあう男と女が、
ねんごろになる場所なんや。
股間を光らせることで、
異性に己の思いを伝える。
その部分に特殊な電燈を装着してな。
男は金色に見える光、
女は黒ずみのないピンク色の光や。
男の陰部を見てみい。
光はモチモノの大きさ、形状に
合わせなあかんのや」 |
北小岩 |
「点滅させている方も
いらっしゃいますが」 |
小林 |
「どんな相手でもいいからすぐに!
という、即物野郎が点滅させるんや」 |
北小岩 |
「お互い駆け引きがあるのか、
すぐにカップル誕生とは
いかないようですね」 |
その時だった。
草むらから艶っぽく
濡れた歌声が漏れてきた。
♪ほっほっ蛍こい
私の蜜はあ〜まいぞ
ほっほっ蛍こい
裏筋を舌が這い上がるような。
その歌が終わらないうちに、
数多のゲンチンボタルが殺到した。
各々股間の灯火が、
1.5倍に膨れ上がっているようだ。
合意した時には
男と女が股間の明かりをくっつけあい、
光はさらに妖艶となる。 |
北小岩 |
「この世のものとは思えないほど、
幻想的な光景です。
ああ、次から次へ。
草むらの中でゲンチンボタルが
賞味されているようです」 |
小林 |
「あの声は
かまきり蛍の異名をとる熟女やな。
熟蛍とも呼ばれておる。
飛んで火に入る冬の虫というところや。
ほんじゃ、そろそろ俺も、
姫蛍たちとしっぽりいくとするかな」 |
先生は持参した特殊電燈を股間に装備した。
光は実物よりも 3倍の大きさになるよう
設定されている。 |
北小岩 |
「あれっ?
早くも明かりを点滅させました。
かなりあせっているご様子です。
あっ、手を羽のように動かし
強引に近寄っていきます!」 |
♪ほっほっ蛍こい
俺っちの棒は太いぞ
ほっほっ蛍こい
先生のみょ〜に甲高い声が、
いやな感じで一帯に響き渡った。 |
小林 |
「お嬢さん、先ほどからあなたの陰光が、
わたくしを誘惑しているようですが」 |
先生は股間の明かりを
無理やりくっつけようとした。 |
女 |
「何やってんのよ、この変態蛍!
あっちいけよ!!」 |
女の重い回し蹴りが局所をとらえ、
電燈が割れて飛び散った。
己のモノより巨大なものをセットしていたため、
ダメージは大きかった。 |
小林 |
「うおおおおおおおおおおお!
破片が!!」
|