小林秀雄のあはれといふこと

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。


其の百参拾六・・・冬蛍



北小岩 「急に冷え込んでまいりましたね。
 秋に美しい音色を
 競い合っていた虫たちも、
 すっかり沈黙してしまいました」
小林 「冬は虫たちの休息の時やからな」
北小岩 「一人ぼっちの季節です。
 虫の中でも特にわたくしは、
 夏の夜、儚げな光を放ちながら
 飛び交う蛍を愛して止みません」
小林 「夏もええけど、冬を彩る蛍もええで」
北小岩 「そのような種がいらっしゃるのですか!
 風流です。
 ぜひ、お目にかからせてください!」
鈍行電車に揺られ108分。
ここには清涼な流れが残り、
日が暮れると同時に、
蛍たちが光の競演にいそしむという。
夜空に一番星が光る頃。
北小岩 「あっ、橋のたもとに
 ほのかな明かりが!」
小林 「目ん玉どば〜と見開いて、
 よ〜く見てみい」
北小岩 「ほっ、蛍ではありません。
 人影です。
 それも股間が発光しているようです」
小林 「イチモツを光らせた野郎は
 ゲンチンボタル、
 秘所を輝かせたおなごは
 マンジボタルと呼ばれるんや」
北小岩 「どういうことですか?」
小林 「あの橋はまぐわい橋といってな、
 若い肉体を求めあう男と女が、
 ねんごろになる場所なんや。
 股間を光らせることで、
 異性に己の思いを伝える。
 その部分に特殊な電燈を装着してな。
 男は金色に見える光、
 女は黒ずみのないピンク色の光や。
 男の陰部を見てみい。
 光はモチモノの大きさ、形状に
 合わせなあかんのや」
北小岩 「点滅させている方も
 いらっしゃいますが」
小林 「どんな相手でもいいからすぐに!
 という、即物野郎が点滅させるんや」
北小岩 「お互い駆け引きがあるのか、
 すぐにカップル誕生とは
 いかないようですね」
その時だった。
草むらから艶っぽく
濡れた歌声が漏れてきた。

♪ほっほっ蛍こい
 私の蜜はあ〜まいぞ
 ほっほっ蛍こい

裏筋を舌が這い上がるような。
その歌が終わらないうちに、
数多のゲンチンボタルが殺到した。
各々股間の灯火が、
1.5倍に膨れ上がっているようだ。
合意した時には
男と女が股間の明かりをくっつけあい、
光はさらに妖艶となる。
北小岩 「この世のものとは思えないほど、
 幻想的な光景です。
 ああ、次から次へ。
 草むらの中でゲンチンボタルが
 賞味されているようです」
小林 「あの声は
 かまきり蛍の異名をとる熟女やな。
 熟蛍とも呼ばれておる。
 飛んで火に入る冬の虫というところや。
 ほんじゃ、そろそろ俺も、
 姫蛍たちとしっぽりいくとするかな」


先生は持参した特殊電燈を股間に装備した。
光は実物よりも 3倍の大きさになるよう
設定されている。
北小岩 「あれっ?
 早くも明かりを点滅させました。
 かなりあせっているご様子です。
 あっ、手を羽のように動かし
 強引に近寄っていきます!」
♪ほっほっ蛍こい
 俺っちの棒は太いぞ
 ほっほっ蛍こい

先生のみょ〜に甲高い声が、
いやな感じで一帯に響き渡った。
小林 「お嬢さん、先ほどからあなたの陰光が、
 わたくしを誘惑しているようですが」
先生は股間の明かりを
無理やりくっつけようとした。
「何やってんのよ、この変態蛍!
 あっちいけよ!!」
女の重い回し蹴りが局所をとらえ、
電燈が割れて飛び散った。
己のモノより巨大なものをセットしていたため、
ダメージは大きかった。
小林 「うおおおおおおおおおおお!
 破片が!!」

先生は縮みきった如意棒に
鋭利なガラス片をさしたまま悶絶。
弟子におぶわれ、山を下りた。

まぐわい橋の風物詩、冬蛍。
それは一夜の艶物語。
だが、自然界の水が決して甘くないことは、
各人が股に銘じなければならないであろう。

小林秀雄さんへの激励や感想などは、
メールの表題に「小林秀雄さんへ」と書いて
postman@1101.comに送ってください。

2005-11-10-THU

BACK
戻る