小林 |
「どないした!
道にケツの穴でも落としてきたんか!!」
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北小岩 |
「いえ。
今流れたコマーシャルの中で、
ロボットが体操したり、
子供と追いかけっこしたり
していたのです」
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小林 |
「そのことか。
お前は世事に疎いからな。
ヒト型ロボットは日進月歩なんやで」
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北小岩 |
「わたくし、
まだ金属製カマドウマのようなものが、
ぎ〜こぎ〜こ動いている段階かと
思っておりました。
この潮流は、すでに世界的なのですか」
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小林 |
「まだやな。
この分野、日本が最先端と言われとるが、
さらに世界でロボットを
ポピュラーにしていくためには、
グローバルスタンダードの確立が
急務やろな」
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北小岩 |
「状況はいかがですか」
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小林 |
「何度もワールド会議が行われとる。
各国で規格がばらばらやと、
普及するのに時間がかかるからな。
だが、中々難しい問題があってな」
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二人は翌日、
第69回世界ロボットサミットが開催されている
川崎・堀の内の特殊個室ロボット会館に出向いた。
世界各国から集結したロボット工学の権威が、
白熱した議論を戦わせている。 |
北小岩 |
「まさにトップレベルの方々ですね。
わたくし程度の頭脳で、
ついていけるかどうか」
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小林 |
「まあ、よく耳の穴おっぴろげて
聞いてみい」
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ロボットの基本的構造については、
世界標準がオーソライズされているようだ。
しかし、議論が平行線をたどっているのは、
ある一部分に関してであった。 |
A国
代表 |
「納得できませんな。
あなた方の国では、
その程度の対象で
股間をもっこりさせてしまうのですか。
そんな局所レベルの低いロボットなんて、
とてもじゃないけど
スタンダードにはできませんよ」
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B国
代表 |
「失敬な!
我が国の如意棒をコケにする気か!!」
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ある一部分というのは、ぽこちんであった。
ロボットがどのようなスケベに刺激を受け、
屹立させるのか。
基準をどこに設けるのか。
各国代表は、自分が一番興奮した裏本などを持ち寄って
参考資料にし、
スタンダードを確定しようとしているのだ。
だが、各大陸、国家、民族、地域等により
嗜好がまったく異なるため、
着地点を見出すことができない。
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C国
代表 |
「私の国の男子は、
乳輪が直径10センチを超えると、
エイリアンのように見えてしまって
反応できないのですよ」
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D国
代表 |
「それには賛成です。
ところでこれは、
どこの国の本ですか?」
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E国
代表 |
「うちです。
どうです、なかなかのものでしょう」
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D国
代表 |
「とんでもない。
何ですか、このラーゲは!
こんなみだらな格好、
地球が誕生してから今まで、
どんな生物もとったことないですよ。
いくら強い刺激が好みといっても、
恥を知りなさいな。
私の大切なロボットのジュニアが、
変態を基準にされるなんてまっぴらだ」
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E国 |
「そこまで言うのなら
こっちも言わせてもらいますが、
あんたの国のエロはお子ちゃま以下だな。
その程度で角度をつけているなんて、
あんた早漏でしょ」
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D代表 |
「何だと!
お前のなんか
白いツチノコみたいにデカいだけで、
ふにゃふにゃだろ。
ロボットもそうなんだろ」
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議論は脱線。迷走した。
結局その日の会議でも、
ロボットのいちもつグローバルスタンダードを
決定することはできなかった。 |
北小岩 |
「各国代表とも
依怙地になり過ぎている気がいたします」
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小林 |
「まあ、わからんでもないな。
引く事のできない一線。
それが『エレクト・ナショナリズム』
(勃起的国家主義)なんや」
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