小林秀雄のあはれといふこと

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。


其の百四拾七・・・発火


「少々お待ちください。
 今一度、火の元を点検してまいります」

北小岩くんが出がけに
ガス台やストーブをチェックしに行くのは5回目である。
以前から神経質ではあったのだが、
その度は確実に進行している。

小林 「慎重なのはええ。
 お前が出火を怖れる気持ちもよくわかる。
 だが、ある程度で切り上げんと、
 一生出かけられん」
北小岩 「ミスによる火災が
 恐ろしいのでございます」
小林 「そうはいっても、
 人為的でなくても起こることがあるで」
北小岩 「と申しますと」
小林 「自然発火や。
 今日はエロ本の即売会に
 出張る予定やったが、
 どうやら山に進路をとったほうが
 よさそうやな」
先生と弟子は慢性金欠なので、
リサイクルショップで
2千円で買ったママちゃりにまたがり、
50キロ先へひたすらこいだ。
北小岩 「さすがに膝が笑ってまいりました。
 このあたりでの出火といいますと、
 やはり山火事ですか?」
小林 「話を聞いた時は耳を疑った。
 まあ、土地の人に問うてみるがええ」
北小岩 「ちょうど道端に
 おじいさんがいらっしゃいました。
 お忙しいところ大変申し訳ございません。
 ここで自然発火が起きていると
 うかがいましたが、
 ほんとうですか?」
道端の
おじいさん
「ああ、この山は
 とんでもなく空気が乾燥しておってな」
その時だった。
北小岩くんの瞳に奇怪なるものがうつった。
北小岩 「あれは何でございましょうか。
 火のついた動物が
 山からころがってまいります。
 カチカチ山のタヌキでしょうか」
小林 「違う。人間の男や。
 それも股間から出火しとる」
北小岩 「このままでは、
 あの方は
 男性の機能を失ってしまいます!」
おじいさんは首にかけていた
巨大な千成ひょうたんの栓を抜き、
シーサーの形相で駆け寄ってきた
男のチン周辺に水をかけ鎮火させた。

股間
火事男
「ふう。
 危ないところをありがとうございました」
道端の
おじいさん
「うむ。恐るべきことに、
 この地域で自然発火するのは木ではなく、
 男の陰毛なんじゃよ」
北小岩 「なんと!」
股間
火事男
「そうなんですよ。
 きのことりをしていて、
 尿意を催したのでイチモツを取り出し、
 放尿後手持ちぶさたでこすりあげていたら
 いきなり陰毛が燃え出したんです」
小林 「見たところ、
 この男はかなりアブラぎっとる。
 想像したくもないが、
 たぶん如意棒も油っぽいはずや。
 その油が陰毛に染みつき、
 摩擦熱で燃え出したんやろ」
北小岩 「そういえば、
 オーストラリアでは
 油分の多いユーカリの木が
 自然発火するという話を
 聞いたことがあります。
 なんでも、火事の熱が
 固い殻に入った種が発芽する
 助けになっているとか。
 人間の子種も木の下の草を燃やし、
 熱を利用しようと
 しているのかもしれません」
小林 「それは大いにあり得ることや。
 となれば、陰毛の火災も
 人類にとっては
 有効な作用をもたらすかもしれんな」

決してそんなことはない。
精子は熱に弱く温めることさえ厳禁だ。
まして、陰毛が自然発火し高熱にさらされたら、
種の発芽どころか
己自身も一生たちあがれなくなってしまうだろう。
世にも恐ろしい陰毛の自然発火。
アブラぎった息子の摩擦はもちろん、
落雷などでも起こりうるので、
これからの季節には特に気をつけたいものである。

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2006-04-30-SUN

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