小林秀雄のあはれといふこと

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。


其の百四拾八・・・前方後円墳


「そこだ、スペシュームでございます!」

SE 「ピ――――。
 ギュヤオ―――――――――」
「やりました。さすがでございます」

「何を観とるんかい?」

テレビ前で正座し、腕を十字に組み興奮している弟子。
小林先生が、鼻くそをほじりながら声をかけた。
北小岩 「ウルトラマンのビデオでございます。
 わたくしも、
 あれぐらいの大きさがあれば、
 侵略者たちを懲らしめることができるのに
 と思いまして。
 でも、人間では無理ですね」
小林 「そうとも言えんで。
 ウルトラマンの強さは認める。
 だがな、彼にしても身長は
 たかだか40メートルというところや。
 公にされていないことやが、
 日本にも信じられないぐらい
 大きな男がおるんやで」
北小岩 「と申しますと」
小林 「まあ、仁徳天皇陵に詳しい人に
 話を聞きにいくこっちゃ」
仁徳天皇陵に詳しい人は、
大阪は堺市大仙町に在住していた。
北小岩くんは新幹線に乗るお金がなく、
各駅停車を乗り継いだため、
早朝に出発したが
とっぷり日が暮れての到着となった。
北小岩 「夜分申し訳ございません。
 こちら仁徳天皇陵に
 詳しい方のお宅ですか」
仁徳
天皇陵に
詳しい人
「そうですにん。
 あんたのことは、
 先生からうかがってますにん」
北小岩 「そうでありましたか。
 ではさっそく
 質問させていただきたいのですが、
 日本にいらっしゃる
 信じられないぐらい大きな男というのは
 どんな方なのですか」
仁徳
天皇陵に
詳しい人
「それには、まず仁徳天皇陵の形状を
 思い浮かべてくださいにん」
北小岩 「前方後円墳という、
 鍵穴のような形ですね」
仁徳
天皇陵に
詳しい人
「鍵穴のような形ではなく、
 あれはほんとの鍵穴ですにん。
 あそこに鍵をさしてまわすと、
 巨大なドアが開いて、
 中に信じられないぐらい
 大きな男が住んでますにん」
北小岩 「なんと!
 鍵穴といっても、
 確か仁徳天皇陵の墳長は
 486メートルぐらいあるのでは
 ないですか。
 それが鍵穴だったら、
 中に住んでいる方の身長は、
 どうなってしまうのですか」
仁徳
天皇陵に
詳しい人
「通常の鍵穴が1センチとして、
 この鍵穴は48600センチですにん。
 日本の男性の平均身長を
 170センチとして計算すると、
 1:170=48600:X」
北小岩 「え〜と、8262000センチメートル
 ということは、
 82620メートルということは‥‥」
仁徳
天皇陵に
詳しい人
「身長は82.62キロメートルほどに
 なりますにん」
北小岩 「ふう〜。
 そんなに大きな人が日本にいたとは。
 中から出てくることはあるのですか」
仁徳
天皇陵に
詳しい人
「たまに出てきて、
 甲子園球場に行きますにん」
北小岩 「阪神ファンなのですか」
仁徳
天皇陵に
詳しい人
「そういうわけでもないのですが、
 球場で売っている
 オムソバを食べてる人を、
 巨大な虫眼鏡で
 うらやましそうに見てますにん」
北小岩 「オムソバは、おいしいですからねえ」

あのウルトラマンでさえ
蟻んこに見えてしまうほど、
大きな男がひそんでいる日本。
まだまだ未知なることの多い、
奥深き国なのである。

ちなみに鍵を持っている人は、
同じぐらい大きな男といい、普段は大阪湾に潜伏。
信じられないぐらい大きな男が、
「開けてちょ」というと海から出てきて開錠する。
屁をする時には鳴門に移動。
連発された屁が急流を起こし、
鳴門の渦潮になるらしい。
幸いにして、彼は善玉菌を体内に蓄えているため、
屁は臭くない。よかったよかった。

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2006-06-09-FRI

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