小林秀雄のあはれといふこと

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき
言の葉を一つ一つ採取し、

深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。


其の百伍拾壱・・・泥棒


「なっ、ないでありま〜〜〜〜す!!!!」

熱帯夜明け。
汗の水溜りの中で目覚めた北小岩くんが、
山彦のような声をあげた。

「どうしてしまったのでしょうか」

何度さがしてみても、
あるはずのものがないのである。

「もしかして、落としてしまったのでは?」

枕や布団の下を調べてみるが、見当たらない。
資源ごみにエロ本が出されていないか
チェックしに行っていた先生が、
不審に思い問うてみる。


小林 「お前さっきから
 必至にさがし物しているようやが、
 いった いどうしたんや」
北小岩 「大切なものがなくなっているのです」
小林 「どうせどすけべな店でもらった
 パンティか何かやろ」
北小岩 「いえ、違います。
 昨晩までわたくしの股間には、
 ヤマアラシのような
 陰毛がございました。
 それが今朝起きると、
 跡形もなくなっているのです。
 ブツはけがれておりますが、
 その周りはまるで幼児のようです」
小林 「う〜む。噂には聞いておったが、
 ついに我が家にも現れたか」
北小岩 「と申しますと?」
小林 「町内に陰毛泥棒が出没しとるんや」
北小岩 「なんと!」
小林 「お前、下半身をむきだしにして
 寝とったやろ」
北小岩 「はい。わたくし寝苦しいと、
 無意識のうちにパンツまで
 脱いでしまうらしいのです」
小林 「まったくあほやな。
 泥棒はその瞬間を見逃さんで。
 俺なんて防犯意識が高いから、
 そんなことは」
先生が赤フンドシの中をのぞきこむと。
小林 「ない!
 俺のおけけも
 きれいさっぱり刈り取られとるわ。
 しまった〜。
 昨晩ひとりさみしく
 Hなことをしようとして、
 睡魔に襲われて出したまま
 眠ってしまったんや。
 これはあかんな。
 近所をまわって
 被害状況を確かめてくるわ」
先生は下駄に飛び乗り、
そのまま疾走していった。
上気した顔で戻ると。
小林 「横丁の若奥さんは、
 パンツが片側だけ脱げていたので、
 半分だけとられたらしいわ」
北小岩 「今想像しているところですが、
 それが艶っぽいのか滑稽なのか
 判断できません」
小林 「まあ、どちらかといえば滑稽やな。
 いずれにせよ、生えてくる時には、
 ちくちくして
 こそばゆうてたまらんやろな」
北小岩 「そうなのですか。
 それにしても、何のためでしょうね」
小林 「闇取引されているのかもしれんな。
 俺は裏に巨大な
 陰毛シンジケートの影を感じる」

そんなことはないだろう。
いたずらか、
いやがらせと考えるのが順当だ。
見事な陰毛には、
敬意を表して刈り取られた後の部分に、
タワシが置かれていることもあるという。



また、ミステリーサークルのように
複雑な模様で刈られた人もいたらしい。

町内を震撼させる陰毛泥棒。
これから日本各地へ
被害が拡大する懸念もある。
みなさまも夏だからといって、
下半身を露出して寝ないよう注意されたし。

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2006-08-15-TUE

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