小林 |
「町内名簿を持ってきてくれんか。
町の先っぽに住んどる
亀頭はんの電話番号を忘れてしまってな」 |
弟子の北小岩くんは、
床の間に山積したエロ本の狭間から、
名簿を取り出した。 |
北小岩 |
「ええと。
亀頭さん、亀頭さん‥‥。
先生、住所のところには
雁高1丁目と記されており、
電話番号にいたっては696969と
適当な数字が羅列されております。
それにこの名簿、
虫に食われたように空欄だらけです」 |
小林 |
「そうか。
時代の波は町内にまで打ち寄せとったか。
個人情報を漏洩させないために、
非公表にしとるんやな」 |
ドドン!ドドンドン!
その時、何者かが朽ちかけた玄関の戸を強く叩いた。 |
小林 |
「誰かと思えば
気障持手男(きざもてお)やないか。
何か用か」 |
先生は気障くんがモテるというだけで、
つい親の仇のような態度をとってしまう。 |
気障 |
「今日は豊富な女性経験を持ち、
どこへいっても
モテモテな小林先生に
お伺いしたいことがありまして」 |
小林 |
「殊勝な心がけやな。
それほどまで言うなら、
聞かんでもないな」 |
先生は単純なおだてに豹変する。 |
気障 |
「実は個人情報に関することなのですが」 |
北小岩 |
「町内でも情報漏れを警戒して、
名簿ですら
機能を果たさなくなっております。
そのようなことでしょうか?」 |
気障 |
「もっと深刻です。
僕はこのように容姿端麗ですから、
女性からのアプローチが
引きも切りません。
しかし、
女性の一番の個人情報ということで、
アソコを見せてくれないのです。
僕は意外と奥手で、
実は生まれてから
一度も女性の秘所を見たことがなくて」 |
小林 |
「ほほう。ほう」 |
気障 |
「事に及ぼうとした時、
女性はそこに箱を装着してしまいます。
穴から手が入れられるように
なっているのですが、
触った感触だけでは、
どうにも想像できないのです。
僕はモテ男としての
プライドもありますから、
Hなお店にも行ったことがないし、
ノーカットのエロ本も裏ビデオも
見たことがありません。
そこがどうなっているのか、
のどからチンポが出るほど知りたくて。
それさえわかれば余裕ができて、
これから女性と一線を超え、
ウハウハしまくれる思うのです。
先生、ご教示ください!」 |
先生は弟子と視線を交わすと、
すべてを理解した北小岩くんが深くうなずいた。 |
北小岩 |
「わたくしがかわりに説明いたします。
女性の秘園こそ、まさにこの世の楽園。
どこまでも透き通る泉。
色とりどりの花の競演。
耳を澄ませば小鳥のさえずり。
奥にはかわいらしい天使が
住んでおります」 |
小林 |
「そうやな。
四季折々の華麗な眺望。
夜ともなれば、一番星が瞬くわな」 |
気障 |
「ロマンチックですね」 |
小林 |
「まあ、オマンチックと言ったほうが
正解やろな」 |
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気障 |
「ありがとうございます!
これで僕が初めて秘所を目にしても、
取り乱すこともなく、
天まで昇っていくことができると
思います」 |
気障くんは脳の銀幕に憧れの泉を映写し、
嬉々として帰っていった。 |
北小岩 |
「説明したモノとは
かなり異なっているので、
目の当たりにした瞬間ショックで、
EDになってしまうかもしれませんね」 |
小林 |
「それもいいでぃわないか」 |
小林
&北小岩 |
「あはははは」
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