小林 |
「やつはどこかいな」 |
先生は弟子専用部屋である一畳間を隈なく探すが、
ぱっと見ていなければ当然不在である。 |
小林 |
「もしかすると、
机の中におるのかもしれんな」 |
そんなわけはない。
そこにスケベ本を発見したらガメてしまおうという、
師にあるまじき魂胆である。 |
小林 |
「むっ、これは。
エロ本のようでエロ本にあらず」 |
収まっていたものは、一冊のノートだった。
表紙には『わたくしの辞書(未完)』と記されている。 |
小林 |
「北小岩のヤツ、
自分で辞書を編纂しようとしとるんやな。
どりゃどりゃ」 |
なきつらにしゃくはち
【泣き面に尺八】
どんなに不幸な状況であっても、
うれしい刺激をあたえられると、
悲しみとは裏腹に下半身が適宜反応してしまうこと。 |
小林 |
「‥‥」 |
ちぶがみをむすぶ
【恥部が実を結ぶ】
赤ちゃんができますと
「おめでとうございます。おめでたです!」
といいますが、
それではその前に行なわれたエッチな行為が
反映されておりません。
ですのでこれからは懐妊された方に
「おめでとうございます。恥部が実を結びましたね!」
というべきでございましょう。 |
小林 |
「う〜む。
確かに俺も、懐妊はおめでたという
綺麗事だけではすまされない
と思っとった。
行為に最も関係の深い部位を用いるのは、
ええかもしれんな。次は何かいな」 |
こうとうほうけい
【荒唐包茎】
一面、皮に被われたように根拠がなく、
何の現実性もないこと。
用例「その意見はあまりに荒唐包茎ですよ」
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小林 |
「まあ、わからんでもないわな」 |
びじんはみっかであきる。
あきたらわたくしにおゆずりください。
【美人は3日で飽きる。
飽きたらわたくしにお譲りください】
美人は3日で飽きてしまうので、
その際にはぜひわたくしにということ。 |
小林 |
「なんやこれは。
辞書というより単なる願望やないか。
俺を差し置いてモテようとしとるな。
譲ってほしいのは俺のほうや!」 |
おじいさん
【お自慰さん】
孫ができる年齢になっても、自らをよく慰めている方。ちょっと太っていたら、小太り自慰さん。
また、曾孫ができても日々行なっている方は、
ひい自慰さんと呼びたいです。
小林先生は、素敵なお自慰さんになると
わたくし確信しております。
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小林 |
「あほんだらが。
素敵なお自慰さんになど、
なりたくないわ。
俺はモテるということに関しては、
大器晩成や。
まさにこれからの男や。
自分で慰めるなんて
もったいないことができるか。
こう見てきて、辞書としての出来は
稚拙でまったく話にならんが、
自分で何かを作ろうと
動き始めたことだけは確かや。
その部分に関しては
評価してやらにゃあかんな」
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