小林秀雄のあはれといふこと

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき
言の葉を一つ一つ採取し、

深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。


其の百伍拾九・・・辞書


「おらんのか」
隣町で行なわれるエロ本の交換会に、
弟子に代理で出張ってもらおうと思った先生であったが、
北小岩くんの姿が見当たらない。

小林 「やつはどこかいな」
先生は弟子専用部屋である一畳間を隈なく探すが、
ぱっと見ていなければ当然不在である。
小林 「もしかすると、
 机の中におるのかもしれんな」
そんなわけはない。
そこにスケベ本を発見したらガメてしまおうという、
師にあるまじき魂胆である。
小林 「むっ、これは。
 エロ本のようでエロ本にあらず」
収まっていたものは、一冊のノートだった。
表紙には『わたくしの辞書(未完)』と記されている。
小林 「北小岩のヤツ、
 自分で辞書を編纂しようとしとるんやな。
 どりゃどりゃ」
なきつらにしゃくはち
【泣き面に尺八】
どんなに不幸な状況であっても、
うれしい刺激をあたえられると、
悲しみとは裏腹に下半身が適宜反応してしまうこと。
小林 「‥‥」
ちぶがみをむすぶ
【恥部が実を結ぶ】
赤ちゃんができますと
「おめでとうございます。おめでたです!」
といいますが、
それではその前に行なわれたエッチな行為が
反映されておりません。
ですのでこれからは懐妊された方に
「おめでとうございます。恥部が実を結びましたね!」
というべきでございましょう。
小林 「う〜む。
 確かに俺も、懐妊はおめでたという
 綺麗事だけではすまされない
 と思っとった。
 行為に最も関係の深い部位を用いるのは、
 ええかもしれんな。次は何かいな」
こうとうほうけい
【荒唐包茎】
一面、皮に被われたように根拠がなく、
何の現実性もないこと。
用例「その意見はあまりに荒唐包茎ですよ」

小林 「まあ、わからんでもないわな」
びじんはみっかであきる。
あきたらわたくしにおゆずりください。
【美人は3日で飽きる。
 飽きたらわたくしにお譲りください】
美人は3日で飽きてしまうので、
その際にはぜひわたくしにということ。
小林 「なんやこれは。
 辞書というより単なる願望やないか。
 俺を差し置いてモテようとしとるな。
 譲ってほしいのは俺のほうや!」
おじいさん
【お自慰さん】
孫ができる年齢になっても、自らをよく慰めている方。ちょっと太っていたら、小太り自慰さん。
また、曾孫ができても日々行なっている方は、
ひい自慰さんと呼びたいです。
小林先生は、素敵なお自慰さんになると
わたくし確信しております。

小林 「あほんだらが。
 素敵なお自慰さんになど、
 なりたくないわ。
 俺はモテるということに関しては、
 大器晩成や。
 まさにこれからの男や。
 自分で慰めるなんて
 もったいないことができるか。
 こう見てきて、辞書としての出来は
 稚拙でまったく話にならんが、
 自分で何かを作ろうと
 動き始めたことだけは確かや。
 その部分に関しては
 評価してやらにゃあかんな」

評価など無用のことだろう。
この師にして、この弟子あり。
二人が作ったものが何かの役に立ったり、
人の心にここちよいさざ波を立てたりということは、
万に一つもあり得ないであろう。

2007-02-20-TUE
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