小林秀雄のあはれといふこと

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき
言の葉を一つ一つ採取し、

深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。


其の百六拾弐・・・ナビゲーション


「宅配便です!」

「ごくろうさまでございます。
 ところでこの箱は何でございましょうか?」

北小岩くんが謎の物体をチェックしていると、
小林先生が初夏の高原のような爽やかな顔で登場した。

小林 「ついに来たか。
 いやな、お前も毎日がんばっとるから、
 たまには何かプレゼントしようと思ってな」
北小岩 「めっそうもございません。
 お気持ちだけでも、
 わたくしなどには
 もったいないことでございます‥‥」
そのまま汚れのない瞳に涙をため、
しゃくりあげ始めた不肖の弟子。
小林 「まあそう謙虚になるな。
 お前は隣町に行くのでさえ
 逆方向に進んでしまうほどの
 方向音痴やろ。
 だからな、
 ちょうどいいナビゲーションシステムを
 注文しといたんや」
北小岩 「はて?
 先生もご存知の通り、
 わたくしのマイカーといえば
 ハンドルが曲がってしまった
 ママちゃりと、
 サドルがかくかく動く
 一輪車でございます。
 それは一輪車用ですか?」
小林 「一輪車というよりも、
 一本車といったほうが近いやろな。
 これはな、試作品を
 特別料金で買いあげた
 『ちんちん用ナビゲーションシステム』
 なんや」
北小岩 「なんと!」
小林 「略して『ちんナビ』。
 ちらしを熟読したんやが、
 これほど便利で有効なものはないで。
 このマシンに
 イチモツを載せ住所を打ち込むと、
 方位磁石のように
 行きたい方向を指してくれる」
北小岩 「なるほど。
 おちんちんが
 毅然と示した方角へ向かうのは、
 とても勇壮で気持ちがいいでしょうね」
小林 「それだけやないで。
 ちんちんには危険も多い。
 突然野犬に襲われ食いちぎられたら
 おしまいや。
 衛星からの情報によって、
 うろついている野犬を発見したら
 そこから1キロ以内に
 近づかなくてすむよう
 警告ランプが点灯しブザーが鳴る。
 その技術を応用して、
 小股の切れ上がったいい女たちが
 たくさんいるところもキャッチし、
 導いてくれるというわけや」
北小岩 「まるで女群探知機ですね。
 思わず大漁節を歌いたくなります」
小林 「音楽の方も充実しとるで。
 酒や味噌などに
 モーツァルトを聴かせると、
 味がまろやかになったり、
 品質が向上したりすると言われとるやろ。
 もちろんちんちんだって例外やない。
 歩きながらモーツァルトを
 直に聴かせることで、
 そこがまろやかになることは間違いない。
 女性たちもウハウハや」
北小岩 「そのようにうれしい副産物も
 あるのですね」
小林 「うむ。
 それにカメラも内蔵されているので、
 うつしたちんちんを
 モニターで人に見せることができる。
 お前のように
 粗品しかもっとらんものには朗報や。
 なにせ映像は実物よりも
 かなり大きく見せることができるからな。
 ブツの上にモニターがついとったら、
 そちらを見て脳裏に焼き付けてしまうのが
 人の性や」
北小岩 「完璧でございますね。
 さっそく使用させていただきます」
隣の部屋へ行きパンツを脱いで装着。
スイッチを入れると。

「あら、お元気そうね。
 さっそく次の角を右折してね。
 それから2キロ先を左折よ。
 そこにはミニスカートの女の子たちが
 5人ぐらい、
 パンチラしながらベンチに座っているわ」

可愛らしい女性の声でガイドを始めた。
北小岩くんは指示にしたがい歩き始めたが、
どうも胡散臭い。
ナビの会社が性風俗店と提携していて、
そちらに誘導しているとしか思えない。
とはいえ現代、
男性のちんちんは弱っていく一方なのである。
今後どういう形であれ、
ちんちんをサポートするための
ナビゲーションシステムが必要であることは、
疑いないであろう。

2007-05-06-SUN
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