北小岩 |
「町はずれの空き地の地下に、
何かが造られているようなのです」 |
小林 |
「う〜む、それは聞き捨てならんな」 |
腕を組んでカッコをつける先生であるが、
顔がにやけている。
彼は独特の嗅覚で、
地下にエロの匂いを嗅いだのだろう。 |
小林 |
「行ってみないわけにはいかないやろな」 |
歩いて10分ほどである。
空き地の一隅に、土が掘られた形跡がある。 |
小林 |
「俺の目は誤魔化せん。ここや!」 |
先生が土を除けると、
タテ1.5メートル、横1メートルほどの
鉄板が顔を出した。
二人で持ち上げると、地下に続く階段が現れた。
北小岩くんを先頭にして、下りてゆく。
その時、前方の暗闇から若々しい声がした。 |
謎の
青年 |
「きちゃだめですよ」 |
上はスーツ、下は白いブリーフ。
頭を七三に分けた謎の青年がスイッチを入れると、
巨大な地下室が浮かび上がった。 |
小林 |
「何や、これは!」 |
北小岩 |
「どこかで見たような像が
たくさんございます!!」 |
謎の
青年 |
「ここは世界中の広場などに
陳列されていて、
事情に合わなくなったため
撤去された物の保管室なのです」 |
北小岩 |
「そうなのですか。
しかし、わたくしたちが
よく目にする像とは、
いささか異なる気がいたします。
あそこの像は、
小便小僧さんに似ておりますが」 |
謎の
青年 |
「もとは小便小僧だったのですが、
成長してしまい‥‥」 |
小林 |
「なるほどな。
小さいうちは愛敬があるが、
あの体勢で成長していくとまずいわな」 |
謎の
青年 |
「そうなのです。
小便小僧が思春期を迎え、
そこをいじくるクセがついているため、
小便小僧ならぬ『射精小僧』に
なってしまったのです」 |
北小岩 |
「なんと!」 |
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謎の
青年 |
「地元の人や観光客からも
愛されていたのですが、
そうなってしまっては
とても名物にはできません。
撤去されてここに
しまわれたというわけです。
あそこで寝ている像は、
『夢精小僧』といいます」 |
北小岩 |
「ううう。
あの岩の陰でしゃがんでいる
おじさんの像は、何でございますか?」 |
謎の
青年 |
「『大便親父』ですね。
隣の市で小便小僧が
人気者になったのをみて、
ライバル心を燃やして
我が市にもと創ってはみたものの、
コンセプトを間違えてしまったのです」 |
小林 |
「ブリュッセルの小便小僧自体、
世界三大がっかりと呼ばれることも
あるそうやから、
あの像ではなおさらやな。
ところであのでっかいヤツは、
シンガポールのマーライオンやないか」 |
北小岩 |
「でも、ちょっと様子が変です。
口から出しているものが
水ではございません」 |
謎の
青年 |
「そうなんですよ。
あれは酔っ払っては吐いてしまう
『ゲーライオン』なんです」 |
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小林 |
「しょうもないもんばっかりあるな。
あそこに見える『招き猫』は、
どうせあげている左手のわきから
腋臭でも漂わせてしまっているんやろ」 |
謎の
青年 |
「よくお解かりになりましたね。
まさしく腋臭がきつすぎて
何もいいことがない
『招かない猫』なんです」 |
小林 |
「名前も芸がないわな。
見たところ、
ここにエロ関係のものはなさそうやが」 |
謎の
青年 |
「一体『エロのビーナス』と
呼ばれる像がありますが」 |
小林 |
「興味ないわ。北小岩、帰るぞ」 |
世界中には、
いったい何体の像が飾られていることだろう。
だが、実際にはこの保管場所にあるような、
撤去されて当然というしろものが
かなりの数存在する。
人間とは好むと好まざるとにかかわらず、
ついお茶目なものを創ってしまう。
それがまたいいところなのかもしれませんね。 |