北小岩 |
「先生、お庭で何をなさっているのですか」 |
日頃手入れは弟子にまかせっきり。
庭には何の興味も示さない小林先生が、
どういう風の吹き回しであろうか。 |
小林 |
「いやな、昨日地質学の教授から
有益な話を伝授されてな」 |
北小岩 |
「難解な講義を受け、
返す刀で研究にうつる。
まったく先生の向学心には
頭が上がりません。
さっそく、わたくしにも
その有益なるお話をお聞かせ願えませんか」 |
小林 |
「まあそう急ぐな。
ところで北小岩よ、
この世で一番好色でテクニシャンなものは
なんだと思う?」 |
北小岩 |
「そうでございますね。
イチモツを2本持つ
ヘビさんでございましょうか。
それとも可愛らしいうさぎさん?
下の方もぴょんぴょんらしいですが」 |
小林 |
「お前の発想には奥行きがないな」 |
北小岩 |
「もしかして、
三十頭以上のメスを
したがえることもある、
ミナミゾウアザラシさんでしょうか」 |
小林 |
「しゃあない、教えたるわ。
好色&テクニックナンバーワン、
それは『土』や」 |
北小岩 |
「なんと!」 |
小林 |
「俺も前々から
土には妖しいものを感じとった。
土を逆さに読んでみい」 |
北小岩 |
「はっ。『ちつ』でございます!」 |
小林 |
「そうやろ。
その部位で、
どのようなものが名器といわれとる?」 |
北小岩 |
「みみず千‥‥」 |
小林 |
「そうや。
土の中にはみみずがどれほどおるか」 |
北小岩 |
「みみず万匹。
いやそれ以上。
みみず無限でございます!!」 |
|
小林 |
「母なる大地‥‥。
生きとし生けるものにとって、
それほど尊いものはない。
だがな、大地は母である以前に、
成熟した体をもった女なんや」 |
北小岩 |
「なっ、なんだかわたくし、
突然興奮してまいりました!」 |
小林 |
「想像してみい。
みみず千匹でもえらいこっちゃなのに、
無限だったらどうなる」 |
北小岩 |
「あまりの気持ちよさに天に召され、
土に還ることになるでしょう。
なるほど。
ところで土というのは、
やはり女なのですか」 |
小林 |
「いや、男もおる。
草や花が風に揺れているように
見えることがあるやろ。
たぶらかされてはあかん。
あれは風のせいやない。
男の土が植物に養分を与えるふりをして、
茎から内部に入り込み、
中で愛撫しとるんや。
だからあれは、
草が悶えとるというこっちゃ。
それに早朝、
土がもっこりしている時がある。
まさに男の証明や」 |
|
北小岩 |
「わたくし、今までそのように
土をとらえたことはございませんでした。
さすがに地質学のオーソリティ、
透徹した眼力で色好みや性技までをも
見破っておられたのですね。
その教授、ぜひ今度ご紹介ください」 |
小林 |
「うむ」 |