小林 |
「だいぶ涼しくなってきたな。
散歩にはもってこいや」 |
先生と愛弟子は、
鼻緒の切れかかった下駄を引っ張り出し、
足に任せて町内を歩き回った。 |
小林 |
「おっ、あの看板はなんや!
ほんまかいな。
だが俺も最近視力が落ちて字がかすむ。
いまいち自信がない。
ちょっとお前、読んでみれくれへんか」 |
北小岩 |
「はい。え〜と。んっ!
『おめこ券大バーゲン』と
書かれております!」 |
小林 |
「やはりそうか!
全力疾走して買い占めてくるんや!!」 |
北小岩 |
「かしこまりました!」 |
先生が目をギラギラさせて近づくと、
弟子の北小岩くんが
肩を落とし師の到着を待っていた。
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北小岩 |
「わたくしの読み間違いでした。
実は小生も
このところエロ本を凝視しすぎ、
視力が下降線をたどっております。
『おめこ券』に
淡い期待を抱いてしまいましたが、
『おこめ券』でございました」 |
あまりにべたな読み間違いをしている二人。
師弟のアホさは横に置いておくにしても、
かなり度が進んでいるのは確かなようである。 |
小林 |
「目は大事にせんとな。
歯、目、マラという
古代よりの言い伝えもある。
目で食い止めておかんと、
その先が寂しいことになる。
視力の矯正に通う他打つ手なしやろな」 |
先生と弟子はその足で、町外れにある
視力矯正クリニック『羊の目』に駆け込んだ。 |
北小岩 |
「わたくしたちこのところ視力が落ちて、
お先真っ暗な状態なのです。
お医者様のところで、
矯正することはできますでしょうか?」 |
羊の
目医者 |
「お任せください。
うちは手術などはいっさい行なわず、
自然に、そして
ヒューマ二ティあふるる方法で
視力を上げてご覧に見せます」 |
北小岩 |
「自然ということは、
夜に星を眺めたりするのですか」 |
羊の
目医者 |
「いえ、それでは
なかなか能率があがりません。
人にはもっと見たいものがあるはずです」 |
北小岩 |
「と申しますと?」 |
羊の
目医者 |
「うちでは遠くの星を見るかわりに、
遠くいる裸の美女を毎日見続けるのです」 |
北小岩 |
「なんと!」 |
羊の
目医者 |
「まず近めにいる女性から始めます。
近くは露出度が低く、
離れて行くにつれて過激になり、
一番遠くはもちろんオールヌードです。
女性のレベルも上がっていきます。
近くの女性は三等性、それから二等性、
一番離れて一番輝いている
ヌードの美女は、
一等性と呼ばれています」 |
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小林 |
「なるほどな。
星だと飽きてしまうし、
雨の日には見ることができない。
その点エロには飽きも雨もない」 |
羊の
目医者 |
「毎日違う美女を配置しますので、
新鮮な気持ちで矯正できます。
かなりの上玉をご用意してますよ」 |
小林 |
「なあ北小岩、ここに決めんか」 |
北小岩 |
「のぞむところでございます!」 |