北小岩 |
「先生、町はずれの空地を
ご覧になりましたか?」 |
小林 |
「ああ。あのファクトリー状の建物やろ」 |
北小岩 |
「屋根の上にいちもつ型のオブジェがあり、
1日に数度手のようなものが
現れてそれを起こし、
先端から黄色っぽい水を
噴出するということです。
中に入ってみたいのですが」 |
小林 |
「何をしているのか
見なくともわかる気がするが、
まっ、行ってみるか」 |
建物に近づくと、
そこには滴る文字で
『ピス・ラボラトリー』と大書されていた。
二人が油断していると、
突然オブジェから放水が始まった。 |
小林 |
「北小岩、よけろ! これは小便や!!」 |
湯気の立ち上った大量の聖水が、
二人を的確にとらえた。 |
小林 |
「こらっ!
そこのでかちん裏に隠れているヤツ、
出てこんかい!」 |
ピス所長 |
「ばれましたか。
このマシンは近寄ってきた不審者に
尿(ピス)をかけるマシンで、
『ピストル』といいます」 |
北小岩 |
「くだらないこというのは、
お止めください。
いったい何のために
ここはあるのですか!」 |
ピス所長 |
「その前にこちらからうかがいましょう。
あなたは一生で
何度ぐらいおしっこをするのですか?」 |
北小岩 |
「え〜とえ〜と。
大体1日に7回するとして、
年に2,555回。
78歳まで生きるとすると、
19万9千2百90回です!」 |
ピス所長 |
「あなたはそれほどの尿をする予定なのに、
心行くまで放水を楽しんでいますか?
ただ惰性で行なっているのでは
ないでしょうか?」 |
小林 |
「なるほど、確かに一理ある。
ここでは放尿を
エンターテインメント化する研究を
しとるんやな」 |
ピス所長 |
「にょうです。
いやいや、そうです。
まあお入りください。
そこの気が弱そうなあなた、
膀胱が大きそうですね。
手始めにここで立ちションしてください」 |
北小岩 |
「ここでですか?」 |
小林 |
「せっかくの好意や。受けんかい」 |
北小岩 |
「‥‥。(シャ〜ッ)あっ〜〜〜〜〜!
おしっこが、虹になりました!!」 |
ピス所長 |
「そうですね。
特殊な光を当てることで、
尿を7色に輝かせます。
この現象は『レインニョー』と
呼ばれるものです」 |
|
北小岩 |
「何だか、ふにゃちんのように
脱力する名前ですね。
あちらでお小水をされている方、
5メートルも先に飛ばしているのに、
見事にラブレターを書いております!」 |
ピス所長 |
「我が社のマシンで括約筋を鍛えると、
お便りもできるようになるのです。
まるで海を越えてやってくるような
ロマンチックなおしっこのお手紙。
『シー・メール』ですね。
括約筋だけでなく、
身体全体を鍛えれば
尿をしながら鉄棒で回る尿車輪も
可能です」 |
その時防寒具に身をかためた男女が
冷凍室から這い出てきた。 |
ピス所長 |
「あの中で放尿すれば、
出した瞬間に凍ります。
凍った尿は、男は金槌で女は」 |
小林 |
「釘抜きですっぽ〜んやろ。
中学生時代に
冗談として言い合っていた世界が
展開されるんやな。
とにかくこれから俺たちも
まだ数万回はたしなむわけやから、
楽しむということは
重要な要素になってくるやろな。
ピス研究所はこれから発展するで」 |