KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を
一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の百七拾・・・夜這い


「くう〜〜〜しっ、しまったでございます!」

日頃はうたた寝しているヒヨコのように
温厚な北小岩くんが、
歯が砕けんばかりに歯ぎしりしている。

小林 「どうしたんや。
 それほど悔しいことがあるなら、
 べろんちょと開陳せんかい」
北小岩 「わたくしは、生まれてから
 一度もモテたことがございません」
小林 「それはようわかっとる。
 俺のように天が二物も三物も
 巨大なイチモツもあたえたものを思えば、
 親の仇を噛み砕く勢いで
 歯ぎしりしたくなるやろな」
北小岩 「というよりも、
 実は今、
 夜這いに関する研究をしておりまして、
 その時代に
 わたくしも生まれておりましたら
 暗闇に乗じてモテモテだった気がして。
 お見苦しい姿を
 お見せしてしまった次第でございます」
小林 「まあ今の時代にモテなければ、
 いつの時代でもモテないやろ。
 お前が夜這いをかけたところで、
 寝所に忍び込めても
 相手のおなごはイチモツが小さすぎて、
 去勢した男が闖入してきたと
 勘違いすることになるやろな」
北小岩 「そうでございましょうか」
小林 「ああ。
 その点俺のような
 ガリバーのイチモツの持ち主ならば、
 暗闇の中でも家屋に近づいただけで
 空気の密度が変わり、
 うっとりと迎え入れてくれることやろ」
ちんちんちろりん。
ちんちんちん。
その時玄関の引き戸につけた陰嚢型の鈴が、
間抜けな音を立てた。

小林 「おお来たか。待ってたで。どうや?」
謎の
エンジ
ニア
「ついに完成しました!」
北小岩 「何がでございますか?」
小林 「夜這いマシンができたんや」
北小岩 「ほんとうでございますか!
 それさえあれば、
 わたくしの儚い夢はかなうのでは。
 いったいどのようなマシンでしょうか」
謎の
エンジ
ニア
「これです」
北小岩 「これ?
 中学生の時に
 クラスメートの馬鹿男が
 『家で見つけた』といって持ってきた、
 男用大人のおもちゃの電動ふぐに
 似ている気がいたしますが」
小林 「モテる男の家に、
 この『夜這い2号』を夜毎通わせるんや」

謎の
エンジ
ニア
「そうなんです。
 夜這い2号にはイチモツの形状、
 大きさのモノを感知し、
 下着を脱がせて
 自動装着されるような仕掛けが
 ほどこされています。
 そればかりでなく、
 ねずみぐらいの大きさに
 縮んで移動できるので、
 家の壁に穴があれば
 入っていくことができます」
小林 「夜勝手に家に忍び込んで、
 男の精を吸い尽くすというわけや。
 夜毎抜かれ続けていれば、
 どんなモテ男でも
 いざとなっても
 ヤル気が起こらなくなるやろ」
北小岩 「わたくし、夜這いというからには
 もっと艶っぽいものを
 想像しておりましたが」
小林 「甘いな。
 何台も作製しモテるやつらを
 片っ端からつぶしていけば、
 それだけ俺たちのチャンスも
 増えるというこっちゃ」
謎の
エンジ
ニア
「ですな」
小林&
謎の
エンジ
ニア
「わはははははははは」
小林 「ところで、ひとまずこのマシンの性能を
 己自身で確かめねばならんやろな。
 一晩俺が借りてみるわ」
北小岩 「‥‥」

性に対してどこまでも卑しい小林先生であった。
深夜、寝床でいまかいまかと身をかたくして
マシンが夜這いをかけてくるのを待っていたのだが、
結局夜這い2号は動き出すそぶりも見せなかった。
たぶん先生のブツがあまりに小さすぎて、
部屋にイチモツがあることを認識できなかったのであろう。

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2008-01-03-THU

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