小林 |
「キンキンに冷えよるなぁ」 |
北小岩 |
「やはり冬の銭湯に、
浴衣に下駄は合いませんでしたね」 |
ひと風呂浴びた後のコーヒー牛乳を
何よりも楽しみにしている先生とその弟子は、
寒風の中、銭湯へ繰り出した。
だが意味のない軽装。
厳しい冷え込みに負けて、
体の芯から冷えきってしまったのだ。 |
小林 |
「しゃあない。
日本酒を一杯ひっかけてくか」 |
北小岩 |
「そうですね。
はふはふ言いながら、
おでんも味わいたいですね」 |
二人は町角にある
『居酒屋へそ下三寸』の暖簾をくぐった。 |
小林 |
「おやじ、熱燗一本。
それから、がんもにすじにげそ。
たまたまも頼むで」 |
北小岩 |
「先生、あそこのイケメン4人衆のお話、
何やら気にかかるのですが」 |
小林 |
「けっ!」 |
先生はイケメンと聞くと、すぐに気色ばむ。
自分がおそまつな面をしているので、
憎悪の対象にしてしまうのだ。 |
イケ
メンA |
「俺もとうとうスポンサーを獲得したんだ」 |
イケ
メンB |
「お前もか。
実は俺もなんだよ。
どこに決まった?」 |
イケ
メンA |
「すっぱ干し梅本舗だよ。
俺の金玉袋、
普段尋常じゃなく縮んでいて、
干し梅みたいなんだ。
だからそこに社名をつけておけば、
女の子が目にした時に、
パブロフの犬みたいに
唾液がとめどなく流れてきて、
コトの後に
思わずすっぱ干し梅を食べたくなるって
寸法さ」 |
|
イケ
メンB |
「なるほどな。
スポンサー収入を得た上に、
女の子の唾液も活用できて、
まさに一石二鳥だな」 |
先生は態度を改め、
目を少女のようにキラキラさせながら、
耳を大きくしている。 |
イケ
メンC |
「君はどうなんだ?」 |
イケ
メンD |
「僕は意外なところから
オファーが来たよ。
外資系の団体からなんだ」 |
イケ
メンB |
「へえ、たいしたもんだな」 |
イケ
メンD |
「トーテムポール普及協会からさ。
自分のポールに装飾を施し、
開チンすることが
義務づけられているんだ。
そうすれば、女の子たちも
部屋にマイトーテムポールが
欲しくなるだろ」 |
小林先生の目が、キラキラからギラギラに変わった。 |
小林 |
「先ほどから
君たちのおいしそうな話が
聞こえてしまっていたのだがね。
それで、いくらぐらいの契約を
結んでいるのだね」 |
イケ
メンA |
「金玉袋は年間30万円だよ。
だけど他にもいろいろ話が来ているから、
最終的に200万ぐらいになるかな」 |
イケ
メンC |
「僕のトーテムポールは
手間がかかるので80万だ」 |
小林 |
「そっ、そんなにか!
君たち、そのスポンサーを
僕にも紹介してくれんかね!!」 |
イケ
メンA |
「あんたじゃ無理だと思うよ。
だいたい、女の子に
そんなとこを見せるチャンスは皆無だろ。
まあどうしてもっていうなら、
教えてやらないこともないけど」 |