KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を
一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の百七拾四・・・整理

「うわ〜〜〜!」

ドドドドドッ。

「ふう、危ないところでございました」

小林先生宅の押入れは、
他人にとってはおぞましいゴミでしかないものが、
チョモランマの絶壁状にそびえている。
弟子の北小岩くんが掃除機を取ろうと思い
襖を開けたとたん、雪崩れを起こしたのだ。

部屋に目を移そう。
先生は整理が大の苦手で、
畳の上には人には見せられないHなものが散乱。
蟻でさえ歩行困難。
結局、生もの以外ほとんど捨てられないのである。

北小岩 「押入れのものは崩れてきて頭を直撃し、
 部屋のものはよけようとして
 足を捻挫しかねません。
 このままでは
 いつの日か大惨事が起こるでしょう。
 先生のお体も
 危険にさらされてしまいます。
 一度、ご意見を賜らねばならないですね」
ガラガラ。
小林 「今もどったで〜〜〜」
師が帰宅した。
隣には無駄のない身なりをした紳士が立っている。
北小岩 「お帰りなさいませ。
 実は先生のお貯めになっているものが」
小林 「そのことか。
 俺も自分の整理能力のなさには
 ほとほと嫌気がさしてな。
 整理の鬼である
 『セイリ氏』を連れてきたところや」
北小岩 「そうでございますか。
 お名前からして、
 生まれながらの整理人でございますね」
セイリ
「まず、冷徹なまなざしで
 検証することですね。
 この部屋を見回してください。
 ほとんど
 今使われていないものばかりでしょう」
小林 「確かに。
 この山積みにしとるもの全部、
 もしも買っていなかったら
 いくら手元に残っているだろうと、
 かなり悔しくなるわな。
 最も拾ってきたエロ本も
 かなりの数あるが」
セイリ
「それからですね。
 己に対しても、
 整理し尽くすと言う強い気持ちで
 臨むことです」
小林 「むっ!
 生理はんは、
 確かタマタマが一つとうかがっとるが、
 それはもしかすると」
セイリ
「そうです。
 片方、整理しました。
 なあに睾丸は一つで十分ですよ。
 体で二つあるものは、
 一つになると
 機能を補うともいわれていますし」
北小岩 「なんと!
 仕事の書類程度の整理で
 満足している輩が多い中で、
 自分の睾丸までを
 整理の対象にしているとは。
 おみそれいたしました!!」
セイリ
「それだけではないですね。
 不必要なものは
 ただ整理すればいい
 というものではありません。
 僕は当面使わないものは
 レンタルしています」
北小岩 「例えばどのようなものでございますか」
セイリ
「僕は攻めに関してはかなり淡白なので、
 ワイフの乳房は一つで満足です。
 ですから、ワイフの同意をとり
 片方の乳房をレンタルしています。
 もちろんワイフが好みの男性を選択し、
 レンタル費は
 すべて彼女の収入になります」
小林&
北小岩
「△×○□‥‥」

そう。
本気の整理は、素人が
生半可な気持ちで入っていける世界ではないのである。
破れかけのエロピンナップ一枚
捨てることができない先生ごときが
まっとうできるはずはない。
先生と不肖の弟子は整理を始めることに恐れを抱き、
生理氏にはお引取り願うことにした。

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2008-02-03-SUN

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