KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を
一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の百七拾伍・・・渡り


北小岩 「あれは
 オオハクチョウではないですか!」
小林 「テレビでしか見たことなかったが、
 見事なもんや」
物知り
おじさん
「越冬のために、
 シベリアから飛来しているんだね」
北小岩 「わたくしなどは、
 ここでさえ数分で
 冷凍人間になってしまいそうなのに、
 冬を越すためわざわざ来るなんて、
 シベリアは
 信じられないほどの寒さなのでしょうね」
物知り
おじさん
「氷で閉ざされ、
 餌をとれなくなってしまうからね」
二人は北小岩くんの遠い親戚である
北国の物知りおじさんを訪ね、
渡りの習性を持つ生き物を観察するために
旅しているのだ。
小林 「せっかくだから、
 岩場に行ってみまっか」
三人はリヤカーのようなソリに乗り、海へと移動する。
北小岩 「ずは〜。
 骨の髄まで染み渡る寒さでございます。
 それにしてもこの潮溜まり、
 ずいぶんたくさんイソギンチャクが
 おりますね。
 実はわたくし、
 イソギンチャクに指を入れることを
 ライフワークにしております」
ちょっぴり変態な趣味を持つ弟子は、
両手で浣腸の形をつくると、おもむろにつっこんだ。
北小岩 「むむっ!!」
いつもと手ごたえが違う。
締める力があまりに強いのだ。
北小岩 「しまった!
 これは
 イソギンチャクではございません!!」
気付いた時には遅かった。
穴の中から黄土色の物体が
にゅるにゅると出てきてしまった。
物知り
おじさん
「土地の人しか知らないのですが、
 それは『渡りケツの穴』ですね。
 ここには越冬のために
 渡り鳥もたくさん飛んできますが、
 渡りは鳥だけにとどまらないのです。
 極寒の地からは、
 ケツの穴も避寒にやってきます」
北小岩 「なんと!
 わたくし、まったく存じませんでした。
 う〜〜〜、この黄土色の物体は
 うんこだったのですね。
 おまけに下痢をされているようです」
物知り
おじさん
「4000キロもの
 厳しい旅をしてくるわけです。
 泳いでくる途中で大きな氷に挟まれ、
 命を落とすケツの穴もたくさんいます。
 下してしまっても、仕方ありませんね」
ぷ〜〜〜っ!

ケツの穴から妙な音がした。
物知り
おじさん
「おっと、屁をこきました。
 氷点下40度を超すと、
 おならは凍ります。
 この海は
 向こうよりかなりあたたかいので、
 ケツの穴の奥で凍っていたおならが溶け、
 音を立てたのですね。
 よく嗅いでください。
 ぐふっ!かなり強烈です。
 かの地では凍ったおならを、
 子供たちはおろか、
 大人もこっそり友だちのテーブルなどに
 置いておき、
 溶けっ屁をかまして遊んでいるのです」
小林 「おならが凍るというのは、
 俺も初耳やった」
物知り
おじさん
「目を凝らして海底をみてください。
 あのなまこに見えるものは、
 『渡りちんちん』です。
 おちんちんが泳いでくるのは、
 非常に大きなリスクがあります。
 冬は食べ物が不足しているので、
 アザラシなどが
 動きのにぶったおちんちんを
 食べようと思い、
 手ぐすねひいているのです。
 それほどの危険をおかしてまで
 日本にやってくるのは、
 向こうでは凍傷にかかってしまい
 イチモツ生命が
 危機に陥るからなのですね」
北小岩 「そうなのですが。
 男としては大変同情いたします。
 わたくしのイチモツは
 日本に生まれてよかったです」
物知り
おじさん
「まあちんちんも必死ですから、
 食べられそうになると
 恥垢をふりまき相手を撃退したり、
 危急存亡の時には
 白濁したものを相手の目に打ち込み、
 必死に逃げるのです」

生きること。
それはどの生物にとっても、
生易しいことではない。
先生たちが出会った渡りケツの穴や渡りちんちんは、
日本で越冬する生物のほんの一部である。
冬を乗り越え、春に再び国に戻り、
繁殖できるといいですね。
(おならが凍るというのは、
 物知りおじさんのジョークだと思います)

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2008-02-10-SUN

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