北小岩 |
「奥深い山でございましたね」 |
先生と弟子は登山に挑戦したのだが、
二人とも極度のへたれであるために、
山の迫力に気圧されすぐ下山してしまったのだ。 |
小林 |
「あそこを見てみい。
村があるで。
腹も減ったことやし、
掛け合ってきてくれへんか」 |
面倒なことは
すべて弟子に押し付けてしまう先生であったが、
北小岩くんは持ち前の如才なさを発揮。
茅葺き屋根の家主と交渉し、
馳走にあずかることになった。 |
村の兄 |
「食べなはれ」 |
北小岩 |
「ありがとうございます」 |
村の弟 |
「ところで兄やん。
裏に住んどった助の兵衛どんな、
チン輪がそれはもう凄まじかったそうな」 |
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北小岩 |
「チンリン?
聞きなれない言葉でございますが、
それはどういうものでございますか」 |
村の兄 |
「この村ではな、
天に召された男は
この世に未練を残さんように、
チンチンを輪切りにするんじゃ」 |
村の弟 |
「そうするとな、
チンチンの内部に
同心円状の模様が現れる。
それは女性といたした回数だけ
筋を刻んどるわ。
例えてみれば年輪に近いわな」 |
北小岩 |
「なんと!」 |
小林 |
「噂には聞いとったが、
この村であったか!」 |
村の兄 |
「村では極端にチン輪が多い者と、
極端に少ない者が死後崇拝されるんじゃ」 |
村の弟 |
「そこで助の兵衛どんじゃ。
何でも凡夫が体験する四百年分ほどの
チン輪を誇ったそうじゃ」 |
村の兄 |
「なるほどな。
それは永久チン民に
推薦せにゃならんどな」 |
北小岩 |
「大往生されても、
まったくチン輪がない方も
いらっしゃるのですか」 |
村の弟 |
「わいらが崇めている方がおってな。
峻険な山で修行に明け暮れ、
邪心を持たず、
もちろん女性との交わりもない。
そんな行者じゃ。
先頃、洞穴で仏になっとった」 |
村の兄 |
「行者の輪切りを今おこなっとるはずじゃ。
行ってみるじゃか」 |
四人は村の輪切り場に急いだが、すでに終了していた。
兄が村の衆に話しかける。 |
村の兄 |
「どうじゃった。
やはりチン輪は一本もなかったかえ」 |
村の衆 |
「それがな、よく検分するとあったんじゃ。
それも三本じゃ」 |
村の弟 |
「そうはいっても、
行者は山をおりた形跡もなし、
村の女も心当たりなしさ」 |
村の衆 |
「じゃがあった。
そしてそのチン輪は、
人との交わりではあり得んほど
野性が宿っとったじゃ」 |
|
小林 |
「ということは」 |
北小岩 |
「ということは」 |
村の兄 |
「う〜む‥‥。山の獣と‥‥」 |
村の弟 |
「それも三回‥‥」 |
小林 |
「まったく男ってやつぁ」 |
北小岩 |
「男ってやつぁ〜」 |
村の衆
全員 |
「男ってやつぁ〜〜」 |